進化した「ロードスター(ND型)」登場!

 2024年1月にマツダ「ロードスター(ND型)」の大幅改良モデルが発売されました。
 
 この新型ロードスターに試乗して、筆者(工藤貴宏)がなによりも進化を感じたのはステアリングフィールでした。

大幅改良を受けたマツダ「ロードスター」

 といっても、従来のロードスターでもステアフィールが悪かったわけではありませんが、電動パワーステアリングを刷新した新型のステアリングフィールは乗り比べると従来モデルとの差が歴然。

 フリクションが減り、引っ掛かりがなくスムーズにハンドルを回せるようになった感覚はまさに正常進化で、「人馬一体感」がさらに深まったことを実感しました。

 ちなみに新型ロードスターの電動パワーステアリングでは、ステアリングギヤの構造変更によるフリクション低減(周辺の部品が新設計された)に加え、モーター制御を改めてより自然な感触を生み出すようにし、またステアリングトルクセンサの容量アップなどが施されています。

 ステアリングトルクセンサの容量アップは開発者によると「ノーマルタイヤでの通常走行レベルならこれまでも不足はありませんでしたが、サーキット走行や幅の広いタイヤの装着時などにトルク検知上限に達してパワーステアリングのフィーリングが乱れることがあった」とのこと。

 その対策という意味合いが強いのですが、通常の使用を外れた部分にも関わらずフォロー
してくれたのが嬉しいところです。

 新型ロードスターの動的性能面の進化は、そんなパワーステアリングに加えて、エンジンパフォーマンスの進化(1.5リッターエンジン)、新設計したLSDの採用(ソフトトップの「S」を除くMT車)、「DSC-TRACK」と呼ぶサーキット走行用の新制御があります。果たして、それらは体感できるのでしょうか。

 エンジンパフォーマンスに関しては、まず最高出力が従来の132馬力から136馬力へアップしました。

 これまで、日本向けも海外仕様と同様の制御で海外のハイオクガソリン(オクタン価が日本より低い96RON)に合わせたセッティングだったものが、新型は日本向け専用の制御として日本で流通しているハイオクガソリンのオクタン価(99RON)にあわせてセッティング。点火時期を遅らせてパワーアップを図ったのです。

 また駆動力制御のロジックも進化させ、アクセルオンに加えてアクセルオフ時もレスポンスを改善。アクセルを緩めて減速する際の応答性を高めたといいます。

 筆者の運転センシング能力では旧型と乗り比べてもパワーアップは感じられなかったものの、アクセル操作に対する反応の良さは確かに実感。

 特に、峠道で旋回中にアクセルの細かいオン/オフで姿勢をコントロールしている際に感じられました。パワーステアリングの進化による操縦性に加えてアクセル操作でも、人馬一体感が増しているといって良いでしょう。

 一方で、それ自体の変化を感じられなかったのは「アシンメトリックLSD(リミテッド・スリップ・デフ)」と名付けられた新しいLSD。

 減速時と加速時で効き方が異なり、減速側は差動制限力を強めて「ヨー減衰効果を付加し後輪接地荷重の減少による不安定挙動を改善」しつつ、加速側は作動を弱めて(といってもあくまで減速時に対して弱いだけであり効き自体は従来のLSDと同様)「アクセルオンでの挙動が乱れにくい自然な加速を実現」という特性が特徴です。

 効きの考え方は、アフターマーケット品にある「1.5ウェイLSD」の逆と考えればわかりやすいかもしれません。

 そんな新型LSDの効果を筆者が感じられなかった理由としては、今回はワインディングロードを走っての印象なので、もしかするとサーキットでの限界領域ではもっと違いが判るのかもしれません。

 ただ、新型は従来モデルに比べるとターンインから直線に向けてハンドルを戻しながらの加速までシームレス感が増していることが実感できたので、LSD単独の違いは感じられなかったものの、コーナリング全体の挙動が良くなっているピースのひとつとしてLSDの進化が含まれているとも考えられます。

 ピンポイントで見るのではなく、トータルで考えると新型ロードスターの旋回性能は従来よりもさらに素直で爽快になっているのは間違いありません。

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