4つのグレードを廃止したいっぽうで、新グレードや特別仕様車を追加

 2024年末にCX-60が商品改良を受けて進化しました。

 その内容は「バネ、ダンパー変更を中心に、サスペンションのセッティングを見直し、操縦安定性と乗り心地を向上」、「電動パワーステアリングやAWD等の制御を最適化」、「走行中のさまざまな騒音・振動への対策を織り込み、静粛性を向上」といった動的性能面におけるブラッシュアップのほか「『XD L Package』、『XD Exclusive Mode』のサイドシグネチャ―ガーニッシュを材着(ブラック)からクロームメッキ(テクノロジーバッジ付)に変更」と一部グレードではスタイルもアップグレードされました。

「CX-60」の特別仕様車「XD SP」

 そして注目はグレード構成の変更です。「XD」「XD S Package」「PHEV Exclusive Sports」そして「PHEV Exclusive Modern」を廃止するいっぽうで、「PHEV L Package」や「XD SP」を追加。また特別仕様車として「XD-HYBRID Trekker」が登場しています。

 本記事では、追加された新グレードと特別仕様車にフォーカスしてみましょう。

 まずは追加グレード。「PHEV L Package」はL Package”相当の装備としたPHEVモデルなのでわかりやすいですが、「XD SP」は全くの新規グレードなので興味深いところですね。

 この「XD SP」をひとことでいえば、終了した「XD S Package」(通称“Sパケ”)の発展版と考えればイメージしやすいでしょう。

 Sパケとの違いはスタイリングがメインです。フロントグリルがピアノブラックのハニカムタイプとなり、ブラッククロームのシグネチャーウイング、ブラッククロームのテクノロジーバッジを添えたサイドシグネチャーガーニッシュ(フロントフェンダーの飾り)、そしてグロスブラックのドアミラーをコーディネートしています。

 加えて足元はSパケでは18インチだったタイヤを、XD SP専用となるブラックメタリック塗装を施したホイールを組み合わせた20インチにアップグレードし、独自仕立てのスタイリングとしています。

 Sパケに対する違いは、スポーティなスタイルを身に着けたということでしょう。Sパケは「ベーシックグレードに少し装備を追加したシンプル仕様」といった立ち位置でしたが、「XD SP」はXDシリーズ(モーターを組み合わせないディーゼルエンジン搭載車)のなかで、もっともスポーティなスタイリングとしています。

 一方で装備面は、メーター液晶が7インチ、センターディスプレイが10.25インチと上位グレードに比べると小さめで、150WのAC電源やステアリングの電動調整機能、電動開閉式のテールゲートなど上位グレードに標準装備されるアイテムは省いてシンプル化。しかし、ガソリン車の“Sパケ”と比べると運転席のシート調整が電動化され、運転席と助手席にシートヒーターが組み込まれるなど装備水準は上がっています。

 この「XD SP」は、今回の商品改良後のXDシリーズのなかではもっとも価格設定が安いモデルで、2WDモデルの価格は412万5000円(4WDモデルは435万500円・消費税込み、以下同)。リーズナブルにディーゼルエンジン搭載車が欲しい人やスポーティなスタイルを求める人とのマッチングがいいでしょう。

アウトドアをイメージさせるアースカラーを採用した特別仕様車「XD-HYBRID Trekker」

 一方の特別仕様車「XD-HYBRID Trekker」を見てみましょう。ベースを「XD-HYBRID Exclusive Sports」としたこのグレードの、最大のトピックはなんといってもボディカラーです。CX-60の通常モデルには設定のない「ジルコンサンドメタリック」という色が特別に用意されたのですから(他のボディカラーも選択可能)。

 ジルコンサンドメタリックはアウトドアをイメージさせるアースカラーで、都会的な雰囲気や上質感を印象付けるCX-60としては異例の色。これまでのCX-60とは方向性を変えたアクティブな雰囲気とし、CX-60の世界観を広げる狙いがあるからと考えられます。

マツダ「CX-60 XD-HYBRID Trekker」(特別仕様車)

「XD-HYBRID Trekker」は専用のボディカラーを用意するだけでなく、パノラマサンルーフやパーティションネットも標準装備しています。パーティションネットとは荷室と居住空間を区切るネットのことで、荷室に積み上げた荷物が居住空間側へ荷崩れするのを防ぐアイテム。荷室をフル活用する、たとえばキャンプに行く人などはメリットを実感できる実用アイテムです。

 このネット(前席後ろ用と2列目後ろ用の2つがセット)の標準装備化に合わせ、天井左右には他グレードにはないネット固定用の専用フックが組み込まれるのも見逃せません。

 そんな「XD-HYBRID Trekker」のポジションは、CX-5の「フィールドジャーニー」やCX-8に設定されていた「グランドジャーニー」のようなアクティブ仕様。CX-60にとっては新しい個性といえそうです。

 パワートレインはマイルドハイブリッド付きのディーゼルで、駆動方式は4WDのみ。価格は552万7500円となっています。

 ところで興味深いのは、「XD-HYBRID Trekker」の燃費が他のXD-HYBRIDモデルと違うこと。ベースとなっている「XD-HYBRID Exclusive Sports」のWLTCモード燃費値が20.9km/L(サンルーフ装着車)なのに対し、「XD-HYBRID Trekker」は21.4km/Lと向上しているのです。

 これは、マイルドハイブリッドディーゼル車においてもっとも優れた燃費となっているのだから驚きです。いったい何が他のグレードと違うのでしょうか?

 実は、モーター走行範囲を拡大することで、燃費を向上しています。モーター走行からのエンジン始動時にモーターではなくスターターを活用することで、通常モデルではエンジン始動のために確保しているモーターのトルクを「XD-HYBRID Trekker」では駆動に使い切れるように変更。その結果、燃費が良くなっているというわけです。

「XD-HYBRID Trekker」はスターターでエンジンを始動させることと、その際にショックなく駆動伝達するための協調制御を作り込んだのがメカニズムにおけるトピックであり、他グレードとの違いとなっているのです。

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