レガシィ開発がスバルにもたらしたものとは
変わったのはメカニズムだけでなく開発手法もです。
これまでの「縦割り&技術主導」から「プロジェクトチーム制」に変更され、関わるエンジニア全てが同じ志、同じ目標に向かって“ワンチーム”で開発が進められました。
そして、走りの味付けは1人の実験担当者に委ねられました。その担当者とは辰己英治氏です。
氏はベンチマークとしてメルセデス・ベンツ「190E」を徹底的に解析。更にプライベートで参戦していたダートトライアルでの経験を活かし、舗装路でも通用する「曲がる4WD」を作り上げました。
このようにして生まれた初代レガシィの走りは高く評価、スバルのイメージは「積雪地域で乗るクルマ」から「走りにこだわりのあるメーカー」と大きく変わりました。
その後、1993年に2代目、1998年に3代目、2003年に4代目、2008年に5代目と進化。
ただし、2014年に登場の6代目はツーリングワゴンがモデル落ち、7代目の日本向けはセダンがモデル落ちしアウトバックのみの設定に。ただ、スバルのフラッグシップとしてのポジションは変わりませんでした。
そんなレガシィシリーズの歴史を紐解いていくと、「グランドツーリング(GT)性能」の進化である事が解ります。では、スバルの考えるGT性能とは何なのでしょうか。
その解釈は人それぞれですが、筆者は「より速く」、「より遠くに」、「より安全に」、「より快適的に」、そして「より愉しく」だと考えています。
要するに一つの性能に特化せず、“総合性能”が大事だと。その実現のために歴代モデルは、その時代におけるスバルが持つ最先端の技術が惜しげもなく投入されてきました。
水平対向エンジンの進化はパフォーマンスと燃費/環境性能の両立だろう。
EJ型の弛まぬ改良はもちろん、FA/FB型、更にはCB型への刷新により大きくステップアップ。これまで「水平対向は燃費が悪い」と言われ続けてきましたが、現在はライバルに勝るとはいきませんが、それに近い燃費性能を実現しています。
シャシの進化は「走り」と「快適性」、そして「安全」のバランスを高いレベルに引き上げられてきました。
そのためにプラットフォームや車体の進化、サスペンションの改良(4輪ストラット→リア:マルチリンク→リア:ダブルウィッシュボーン)、ビルシュタイン製ダンパー(2~5代目)、クレードルマウント(5~6代目)、フルインナーフレーム構造(7代目)など様々な手法・手段が用いられてきました。
また、現在では当たり前となった先進安全支援システムは1999年にADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)の名で3代目がベースのレガシィ・アウトバックに初搭載。
その後SIクルーズやアイサイト(バージョンI)を経て、2010年に5代目(B型)に搭載されたアイサイト・バージョンIIで一気に花開くことになります。
技術や信頼性、ノウハウの蓄積、戦略的な価格設定などは、長年に渡る地道な開発の賜物です。
また、スバル車ではおなじみとなっている「年次改良」や「ビックマイナーチェンジ」は、実はレガシィから生まれた取り組みの一つです。
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