「お手軽CX-60」300万円台で味わうマツダの本気
都市の洗練された風景にも、雄大な自然にも映える伸びやかなフォルムを持ち、ドアを開ければ、上質な素材と緻密な造形が織りなす空間が広がる。
2022年の登場以来、マツダのフラッグシップSUVとして羨望(せんぼう)のまなざしを集めるのがCX-60です。
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その存在感から、多くの人が「600万円超えも珍しくない高級車」というイメージを抱いているのではないでしょうか。
確かにCX-60には600万円を超える車両価格のPHEV(プラグインハイブリッドモデル)も存在します。
しかし、その華やかな印象の陰で、CX-60の本質的な価値を驚くほど身近な価格で提供するモデルが存在することをご存じでしょうか。
それが、2.5リッターの4気筒ガソリンエンジンを搭載したエントリーモデルです。
今回は、CX-60が持つ「高級車」のイメージを一度リセットし、「戦略的な価格」「妥協なき本質」「素顔の走り」という三つの視点から、この隠れた実力者の真価を解き明かします。
なぜマツダはFRベースのSUVに挑んだのか
CX-60を語る上で欠かせないのが、マツダの新世代ラージ商品群第一弾として、満を持して投入されたFR(後輪駆動)プラットフォームです。
効率性が重視される現代において、なぜマツダはエンジンを縦に置き、後輪で駆動するという、走りの理想を追求する伝統的なレイアウトにあえて挑んだのか。

その根底には、同社が一貫して追求してきた「人馬一体」という哲学を、新たな次元へと昇華させたいという強い意志があります。
エクステリアは、生命感を形にする「魂動(こどう)デザイン」に深みをもたせ、光の移ろいまで計算された抑揚のある面構成が、止まっていても動きを感じさせるほどの存在感を放ちます。インテリアもまた、水平基調の骨格のしっかりした造形をベースに、乗る人が心からくつろげる空間を追求しています。
話題の中心は、力強い直列6気筒ディーゼルハイブリッドモデルやPHEVモデルになりがちですが、この理想的なパッケージングの魅力を最もピュアな形で体感できるのが、シンプルな「SKYACTIV-G 2.5」ガソリンモデルなのです。
競合を射程に捉える戦略的な価格設定
CX-60の価格設定は非常に幅広いですが、中でも注目したいのが379万5000円(消費税込み、以下同)から設定されている「25S L Package」です。
PHEVの最上級グレードが600万円を超える中で、この「25S L Package」は、エントリーグレードの「25S S Package」(326万7000円から)と比較して、価格上昇を抑えつつ、上質な内外装と快適な装備を備えた点が大きな魅力となっています。
例えば、より上質なシート素材や加飾、運転席パワーシートなどが標準で備わっており、「価格を抑えつつも、ワンランク上の内外装と快適性を備えたCX-60を手に入れたい」と考える人にとって、まさに最適な選択肢と言えるでしょう。
また、この価格は人気のトヨタ「ハリアー」(Gグレード・ガソリン2WD:371万300円~)や日産「エクストレイル」(Sグレード・e-POWER:360万1400円~)といった、FF(前輪駆動)ベースの国産ミドルSUVと十分に渡り合える価格帯です。

プレミアムなFRベースのプラットフォームを持つCX-60が、この価格で手に入る。これは単なる廉価版ではなく、「より多くの顧客にマツダが示す新しい価値を届けたい」という、明確な戦略に基づいています。
高価なパワートレインや豪華な装備を望まなければ、CX-60が持つ骨格の良さやデザインの美しさは、そのままに享受できる。価格を理由に諦めていた層にとって、これはまさに「発見」と言えるでしょう。
価格は抑えても譲れない「質感」という本質
「エントリーモデルは、内装が質素なのでは?」という懸念はもっともです。確かに、25S L Packageには上位グレードに採用される本杢(ほんもく)パネルやナッパレザーといった加飾はありません。しかし、CX-60の本質的な質感は少しも損なわれていません。

インパネの骨格を成す力強い造形、手に触れるステアリングやシフトノブの感触、そして「カチッ」という節度感のあるスイッチ類の操作フィール。これらドライバーが常に触れる部分のクオリティーは、全グレードで高い水準を保っています。
装備面で付け加えるのならば、25S L Packageには上級グレードと同じ12.3インチフル液晶メーターや、同サイズのセンターディスプレイが備わります。
さらには運転席シートも上級グレードと同様に、10wayパワーシート&ドライビングポジションメモリー機能を搭載。シート表皮はレザーを採用し、体をしっかりと支える快適な座り心地を提供します。
スマートフォンなどのワイヤレス充電機能や、Apple CarPlayに対応するワイヤレス接続が可能な点も特筆すべきところでしょう。
ドアを開けた瞬間に感じる凜とした空気感、シンプルながら使いやすく美しいコックピットデザインは、毎日の運転を特別な時間に変えてくれるはずです。これは、マツダがクルマを単なる移動の道具ではなく、「所有する喜び」を感じる存在として作り込んでいる証しにほかなりません。
「素顔のCX-60」だからこそ際立つ軽快な走り
重厚な見た目とは裏腹に、ガソリンモデルの走りは驚くほど軽快です。
その最大の理由は、フロント部分の軽さ。直列6気筒ディーゼルハイブリッドモデル(XD-HYBRID Exclusive Sports:車両重量1930kg)に対し、ガソリンモデル(25S L Package:同1730kg)は200kgも軽量です。この差が、走りに大きな違いを生み出します。

ステアリングを切ると、ノーズがすっと軽やかに向きを変え、全長4.7m超のサイズを感じさせません。自然吸気の2.5リッターエンジンは、アクセル操作に対してどこまでもリニアに反応し、188馬力というスペック以上に意のままに操れる感覚が楽しめます。
さらに、マツダ独自開発のトルクコンバーターレス8速ATが、ダイレクトで小気味よい変速を実現しています。
FRならではの後輪が大地を蹴り出す力強い加速感と相まって、高速道路の合流からワインディングまで、あらゆる場面で「人馬一体」の片りんを味わえます。これはまさに、余分なものをそぎ落としたからこそ見える「素顔の走り」と言えるでしょう。
25S L Packageは上級グレードと同様に、20インチホイールを採用しています。大きなホイールは足元にボリューム感と迫力が増し、車両全体のバランスが洗練された印象になります。
また、燃費や空気抵抗の改善に役立つグリルシャッターを採用しているのも特徴でしょう。
最も賢くピュアに「人馬一体」を味わう選択
いかがでしたでしょうか。マツダCX-60の25S L Packageは、「高根の花」という先入観を鮮やかに覆す選択肢です。

それは単なる「安いグレード」ではなく、CX-60の本質である「美しいデザイン」「上質な空間」「FRならではの素直な走り」を、最もピュアな形で味わえるモデルと言えます。
上質なSUVに乗りたい、でも価格は抑えたい。そして何より、運転を楽しみたい。
そんな少し欲張りなあなたの期待に、このクルマはきっと応えてくれるはずです。ぜひ一度、そのステアリングを握り、価格以上の価値がそこにあることを体感してみてください。