ロードスター開発陣と女性オーナー3人のトークショーを開催
2025年2月6日、マツダは東京・青山にブランド体感施設の「MAZDA TRANS AOYAMA」をオープンしました。
マツダの車両やブランドに触れる機会がなかった人に「マツダブランド」を体感してもらい、新たな発見をしたり前向きな気持ちになったりしてもらえれば、との願いを込めて造られた施設です。

1Fにはマツダのボディカラーやロータリーエンジンをイメージしたスイーツ、地元広島産のコーヒーなどが味わえるカフェを併設しているほか、建物内にはマツダ車の実車(現市販車、コンセプトカー、歴代マツダ車)が常設展示され、メーカーの歴史を振り返ることができるエンブレムやミニカーも展示されており、マツダ車のファンはもちろんのこと、それ以外の人たちも気軽に立ち寄れてくつろぐことができる場所となっています。
また、幅広いテーマでの期間限定展示や体験イベント、ワークショップの開催なども予定されています。今回はオープン後、初の週末、2月9日に開催された「ロードスターとカラーで楽しむ私のスタイル」トークショーを取材しました。
初代ユーノスロードスターの誕生経緯は…?
トークショーには、現行型のNDロードスターの開発主査である齋藤茂樹さん、デザイン本部の岩内義人さんに加えて、実際にロードスターを所有していて、かつボディカラーにこだわりのある3人の女性オーナーが登壇し、マツダ開発陣とデザイナー、ロードスターのオーナーが一緒になってトークを繰り広げました。

イベントは、NDロードスター主査の齋藤さんによるプレゼンテーションからスタート。ライトウエイトスポーツカーの世界的な繁栄と衰退の歴史から、初代ユーノスロードスター(NA)誕生までの背景について解説しました。
1980年当時の時代背景から「オフライン55」と呼ばれるマツダ社内のプロジェクトなど本格的に開発着手にいたるまでの経緯、また開発拠点の通称「リバーサイドホテル」での出来事など、マツダ社内外のさまざまな人物とのエピソードも含めて話が展開されました。
また、市販最終デザインの「凍結」に至るまでのブラッシュアップの過程や、開発当時のこだわりが時間とともに「ロードスター憲法」5カ条として社内で共有されるようになった経緯なども紹介されました。さらに、初代NA型の開発メンバーであり、2代目NB型や3代目NC型の開発主査を務めた貴島さんによる「人馬一体」コンセプトにつながる要素項目の直筆メモなど、ロードスターの歴史が始まるまでの背景や、その後35年間にわたる歩みが貴重な資料とともに発表され、抽選で選ばれた会場内の参加者の注目を集めていました。
歴代ロードスターのボディカラー戦略には法則性がある…!?
続いてデザイン本部の岩内さんから、ロードスターのボディカラーをテーマにしたトークが始まりました。

現行型NDロードスターが登場した2015年以降、設定ボディカラーの変更や特別仕様車の追加など、ほぼ毎年「お色直し」が実施されていることが説明されました。加えて岩内さんは、それらを「エレガンス系」「ライフスタイル系」「スポーツ系」の3種類に分類でき、それぞれが規則的なループを伴って展開されるという「法則性」があると説明しました。
ヴィンテージを意識したエレガンス系の「35周年記念車」、2025年のオートサロンで公開されたスポーツ系の「マツダスピリットレーシングロードスター」という流れからくると、次にくるカラー戦略の方向性が分かるかもしれない、という今後の展開を予感させるコメントもあり、会場の聴衆からも期待が感じられました。
また、実際にボディカラーが車種に対してどのような経緯で設定採用されるのかというエピソードについても、ジルコンサンドメタリックの例を用いて紹介されました。もともとこのカラーは、鋳物型に用いられるケイ酸ジルコニウムの砂粒からのイメージで開発されたカラーであり、アースカラーとしてCX-50やCX-5などのSUVに採用されていました。
当初カラーの開発時にはロードスターへの採用予定はなかったそうですが、社内で「これをロードスターにも塗ったら結構似合うのでは…?」という声があり、デザインモデルを製作して(製品化するための社内審査である)承認イベントへ進むことになったそうです。
実際の外板色の承認イベントでは、車体の右側はフルノーマル状態、左側は「ジルコンサンドはこのように楽しんでほしい」という理想バージョンとして、手作りデカールやホワイトレター入りのタイヤ加工などをおこなって承認を得られたというエピソードも紹介されました(ジルコンサンドメタリックは、2024年末の改良タイミングで残念ながらロードスターへの設定は廃止)。
「M」つながりの3人の女性オーナーがMyロードスター&カラー愛を語る!
続いて、2021年の改良時に設定された青幌(ほろ)の「NAVY TOP」×プラチナクオーツメタリックのオーナーであるMegさん、2020年の改良時に追加されたホワイトレザー内装の「White Selection」×ディープクリスタルブルーマイカのオーナーであるmanaさん、そしてジルコンサンドメタリックのオーナーであり、マツダの社員でもあるmikiさんの3人によるトークセッションがスタートしました。それぞれがこだわりを持つロードスターオーナーであり、各カラーリングに対する思い入れについて語りました。

3人は、それぞれ自身の所有するロードスターのボディカラーの造形モデルを前に、愛車とカラーリングに対するこだわりに関して熱く語り、それに対してデザイナー目線で岩内さんが応えるという流れでトークショーは展開していきました。
3人とも、ボディや内装、幌のカラーに合わせたトータルコーディネートを意識し、ファッションアイテムとの組み合わせにもこだわっているそうです。さらに、ロードスターはオープンカーであるため、外からの見え方も考慮し、季節や気温に応じた服装を選ぶだけでなく、幌の開閉に合わせたカラーコーディネートや、小物の差し色のアクセントにも工夫を凝らしているそうです。女性ならではの視点で話が展開される中、岩内さんも、各オーナーが意識するコーディネートの傾向が、デザイナー側のカラーコンセプトや狙いと一致していることに驚き、感心する場面がありました。登壇者も観客も終始笑顔にあふれ、温かい雰囲気に包まれていました。
また3人はそれぞれのボディカラーをテーマとしたミーティングを主催したり、そのメンバーに所属したりしており、多くのミーティングやオフ会が実施されているロードスターのなかでも、ボディカラー区切りで多くのチームが存在していることも説明されました。
トークショーの最後は、現状のロードスターのボディカラーごとの販売構成比率や、35周年記念車の販売状況についての最新状況がマツダ側から説明されました。35周年記念車は受注状況が好調で、通常モデルと比較するとよりヴィンテージを意識した仕様ということで、RF(電動ハードトップモデル)の人気が高くなっているとのことです。
「MAZDA TRANS AOYAMA」では、今後もクルマに関するテーマに限らず、幅広いジャンルのイベントを週末に定期開催していく予定とのことです。イベントの詳細や参加募集については、随時ホームページで更新・告知される形となっています。