操れるクルマの究極的な形とは
先述の概要を踏まえ、スバルテクニカインターナショナル開発副本部長の高津益夫さんに、もう少し詳しくお話をうかがってみました。
まずは、「ニュルブルクリンクレースカー直系のスバル2ペダルスポーツセダン」というコンセプトの意味についてです。

「STIは、とにかくクルマを意のままに操れる操縦性を実現しようということに、徹底的にこだわっています。
なかでも、厳しいコンディションの中で競い合っているニュルブルクリンクのレースカーこそが、その意のままに操れるクルマの究極的な形だと考えました。その良いところを市販車に引き継いで実現させたいということなのです」
その良いところとは、「ステアリングを操作した際の切り始めからクルマの応答の遅れの少なさや、長距離を走っても疲れないことですね。耐久レースですから、高いパフォーマンスを保ちながら安心して疲れずに走る必要があり、それが(レースカーの)優れているところです。そこはぜひ市販車にも引き継がせたいと考えました」と高津さん。
そこで、まずはエンジン出力を275psから300psに引き上げました。
しかし高津さんは、「単に馬力をアップするのではなく、いかにコントロールしやすいエンジンにするかがポイントです。そこで、アクセルに対するトルクのレスポンスをとにかくリニアに応答させるエンジンセッティングにしています」と語ります。
同時に、そのためにはハードウェアの変更も必要となるため、「吸排気系は新たに開発し、通気抵抗の少ないものを取り入れ、それをベースに作り込んでいったのです」とのこと。
そうなると、今度はトランスミッションも気になってきます。
「エンジンのトルクレスポンスが向上したことで、トランスミッションも理想の姿に近づけたいと考え、スバルのトランスミッション開発チームが協力してくれました。その結果、とても気持ちのいい変速特性を実現できました」と述べ、最終的には「ダイレクト感が増し、一方でゆったり乗りたい時にはよりスムーズに乗れるようになりました」と、非常に満足な仕上がりになったようです。
高津さんは、「少し走行負荷がかかっている状態でパーシャル加速をしようと、じわっとアクセルを踏んだ時に、トルクの付きが遅いと、どうしてもキックダウンしてワーンと吹け上がってしまいます。
しかし、S210ではそういったシーンでもキックダウンせず、スーッと引っ張ってくれます。これも、エンジンのトルクレスポンスが向上した恩恵でしょう。
同時に、アグレッシブに走る時にはより気持ちよく、よりダイレクトなフィーリングを実現しました。ですから、日常の走行でもより快適に走れる、そんなパワーユニットの特性を実現できました」と語りました。
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