今やクルマの性能も購入後にアップデートできる時代

 SUBARU車はこれまで年次改良でさまざまな部位のアップデートを行ってきました。従来モデルと乗り比べると進化は間違いなくしていますが、すでにそのクルマを購入しているユーザーは指をくわえて見ているだけ……。

2021年7月に発表された「SUBARU BRZ」は2024年7月に改良モデルD型を発表した

 厳密に言うと部品交換を行えばアップデートできる箇所もありますが、目に見えない部分……つまりクルマのさまざまな制御をつかさどるソフトウェアをアップデートするサービスはこれまでありせんでした。

D型のアップデートは基本的に電子的なもので、MT車であれば「SPORTモード」の搭載、AT車であれば「マニュアルダウンシフト制御」だった

 現在、PCやスマホの世界では当たり前となっているソフトウェアアップデート。

 これまでクルマではナビゲーションの地図更新などライトなものが主でしたが、最近では走りや運転支援に関係するモノも増え始めています。

 こういったアップデート可能なクルマのことを「SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)」と言いますが、SUBARUが提案するソフトウェアアップデートが「e-Tune」です。

 SUBARUに詳しい人であればe-Tuneと言うと、3代目レガシィに設定されていたグレード「GT-B E-Tune」を思い出す人もいるでしょう。この時の「E」は“Europe”の意味でしたが、今回の「e」はズバリ“Electronic”になります。

e-Tuneは第1弾としてSUBARU「レヴォーグ」の足回りセッティングを変更するものとして存在していた

 e-Tuneは第1弾として「レヴォーグ」のSTIスポーツ、STIスポーツRに搭載されるZF製の連続減衰制御ダンパー(CDC)の電子制御設定を変更することで「乗り味」を変えるプログラム「SUBARU Active Damper e-Tune」が展開中です。

 今回、ご紹介するのはe-Tuneの第2弾となる現行BRZ(アプライド:A~C型)に対応するソフトウェアアップデート「SUBARU Sport Drive e-Tune」です。

SUBARU BRZ D型がまとった進化をA〜C型のBRZにも

 2024年7月、BRZは年次改良を受けてD型へと進化しました。その変更内容は走りのブラッシュアップが主ですが、その中のパワートレインのアップデートは電子制御系の進化、つまりソフトウェアの進化です。

e-Tuneは、電子制御系の進化で性能が高められたD型のBRZの性能を、それ以前のモデルでも享受できるものだ

 この制御を既販モデルへと応用したアイテムが、今回のBRZ用e-Tuneになります。具体的な変更内容はMT/ATで異なりますが、どのような変化があるのでしょうか? 

用意されたBRZのMT車はD型に新たに搭載された「SPORTモード」をe-Tuneによって搭載している

 実際に栃木県佐野市にあるスバル研究実験センターのワインディング路で試してみました。

 まずMT車はエンジン制御のアップデートでD型に新たに搭載された「SPORTモード」に変更されています。

 SPORTモードはスーパー耐久シリーズで開発車両が参戦できるST-Qクラスで戦ってきた61号車(BRZ CNF Concept)で得られた知見・ノウハウを量産車に応用した制御で、D型で採用されたモノを水平展開しています。

レースで培った知見を市販車に適用させたe-Tune

 ノーマル制御はアクセルを踏んだ分だけリニアに加速が立ち上がる素直な特性ですが、SPORTモードはその良い特性を崩すことなく「より高応答」な特性になっています。

 実際にノーマル制御と乗り比べると、エンジンがシャキッと目覚めたかのようなピュアさと元気さ、過渡領域ではFA24が、存在しないエンジンではありますが「FA26」(排気量が上がった)になったかのような蹴り出し感を実感できました。

 ただ、誤解なきように言うと絶対的な出力がアップしたのではなく、従来よりアクセル操作に忠実に反応するという印象です。

e-Tuneによってシャキッとした走りに変化したBRZ。電子制御アップデートの未来を感じる

 ただ、その差は小さいようで大きいと感じました。

 例えば、トルクバンドを微妙に外してしまうコーナーに進入するようなシーンの場合、ノーマル制御だと間違いなくシフトダウンを選択しますが、SPORTモードならばギアホールドでOKだと思えるくらいの違いです。

 筆者(山本シンヤ)はドライ路面ではスライド走行時のコントロールのしやすさ、ウエット路面ではグリップ走行時のコントロールに大きく役立つと感じました。

 ただ、「万能か?」と言われるとそうではなく、操作に対してとにかくダイレクトな特性なので、ドライバーがラフなアクセル操作をするとクルマは間違いなくギクシャクします。恐らく、通常走行がメインの人はノーマル制御のほうが扱いやすいと感じるはずです。

D型ではスイッチによる切り替え式となっているMT車の「SPORTモード」だが、e-Tuneでは常時「SPORTモード」が適用される

 そのため、D型ではスイッチによる切り替え式となっていますが、e-Tuneはノーマル制御からSPORTモードに完全に書き換えるため、施工するかどうかの判断は、まずはD型の試乗車に乗って確認したほうがいいです。

 つまり、BRZのMT用e-Tuneはサーキット/ワインディングなどで走る機会が多い、ノーマル制御では物足りなさを感じるなど、よりスポーツ性に“特化”した味付けを求めるユーザー用のアップデートというわけです。

e-Tuneについて詳しく見てみる?

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