スバルのカーボンをマツダが使う。S耐の共挑が産んだメーカーを超えたコラボレーション
レーシングカーで多用されるカーボン素材。リサイクルカーボンを使ったレーシングパーツを作り始めたスバル。
そのリサイクル素材をマツダが使うことになったそうです。どういう化学反応が起きたのでしょうか。
スーパー耐久を走っているレーシングカーはそのスタイルこそ市販車と同じような形をしていますが、軽量化できるところは徹底的に軽量化されます。
その素材として、軽量で強度が高く加工もしやすい。ということで炭素繊維強化プラスチックCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)が使われます。一般的にいうならばカーボン素材です。
クルマ好きならカーボンというだけで好きという人も多いでしょう。
軽量で強度が高い素材はさまざまな場所で使われており、飛行機のボディにも使われています。
そんな飛行機の中央翼と呼ばれる部分を作っているのがスバルです。
スバルの航空宇宙カンパニーでは、ボーイング787、777、777Xの中央翼と呼ばれる主翼と胴体と繋ぐ部分を製造しています。
大量なカーボンを使って中央翼を使っていることもあり、そこでは年間に多くの廃棄されるカーボンが発生してしまいます。
スーパー耐久に参戦している、スバルSDAエンジニアリングチームの代表である本井氏はそのカーボンに着目して、リサイクルしてレーシングカーのパーツが作れないかと構想を練り、スバル社内や協力会社と一緒に2021年から再生カーボンの開発に取り組みを始め、その後再生カーボンの製造プロセスを確率させます。
2022年にはスーパー耐久に参戦していた、BRZ CNFコンセプトのボンネットやアンダーカバーなどに採用を始め、実証実験を行ってきました。
そんなリサイクルカーボン素材を使っていることを、スーパー耐久のST-Qクラスに参戦する、自動車メーカーの開発者などが情報交換や交流をおこなっている「共挑 S耐ワイガヤクラブ」で話しをした際、マツダがすごく興味をもったそうです。
そこでスバルの航空宇宙カンパニーを訪れた、マツダスピリットレーシング代表の前田氏は「ぜひとも使わせて欲しい。喉から手が出るほど魅力的な素材を捨てている現場を見て、即決で使うと決めた」と言います。
スバルでは廃棄されるカーボンを熱処理して溶剤をいったん溶かし、VaRTM成形という方法で成形しています。
マツダではオートクレーブ成形で加熱加圧をして成形する方法で、強度や成形性を検証すると言います。
この再生された素材を使い、現在マツダからST-Qクラスに参戦している55号車マツダスピリットレーシングのマツダ3のボンネットを今シーズンの最終戦の富士に投入する予定だと明かされました。
その後、2025年シーズンには前後バンパーやフロントフェンダーへの採用を検討していきたいと言います。
さらにマツダは将来の可能性として、「ハイグレードの用品化」や繊維強化している樹脂製品の軽量化など様々なことを見据えているようです。
一方のスバルでもST-Qクラスに参戦しているハイパフォーマンスXフューチャーコンセプト(通称ハイパフォX)に、この再生カーボンを使用していく予定です。
手始めに今回の鈴鹿戦から再生カーボンを使ったリアウイングを装着してきました。
航空宇宙カンパニーがもつ飛行機の翼の空力的知見を活かしたデザインやサイズなどになっています。
翼が生み出す飛行機を空に持ち上げる揚力を逆さまにしたようなものがレーシングカーのウイングになり、下に押し付けるダウンフォースを生み出します。
サイズや大きさなどは適切な物が必要になり、今回のウイングは最適なものになっているそうです。
そして一般的なカーボン地とはぱっと見様子が違います。
カーボン地は格子のように繊維を十時に編み込みんでいきますが、このリアウイングでは短い端材を集めて、糸のように紡ぎ上げた素材を一方方向に使うことで、より強度を持たせるような作り方をしているため、よく見るカーボン地の編み込みとは違う面を見せているのが特徴です。
スーパー耐久のST-Qクラスは自動車メーカーが競争しながらも将来の自動車開発に向けて協調できる部分に関しては協力していこう。という理念があります。
そのためのワイガヤクラブという交流機会があり、そこで生まれたカーボンニュートラル燃料の知見の共有とは違う、製品の協調という新たな局面を迎えました。
すぐに市販車へこの研究が活かせるというわけではありませんが、各社の試験や検証を経ることで研究が進化していきます。
スーパー耐久という場を経て、市販車の研究が次に向かってまた新たな一歩が進み始めました。
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