「デザインならマツダ」で入社した若手デザイナーが、最初に託された大役

 マツダの新色「ジンクグリーンメタリック」、ロードスターとCX-30に採用された注目カラーの開発秘話や苦労した点について、自身もロードスターに乗る担当デザイナーの瀬能海翔さんに話を伺いました。

 お話を伺ったのは、マツダデザイン本部デザインクリエイションスタジオCMFデザイナーの瀬能海翔さん。普段からNAロードスターと軽トラ、そしてお父さまから譲り受けたハーレーダビッドソンのバイクを駆る生粋のエンスージアストです。

新色「ジンクグリーンメタリック」の開発を担当した、マツダデザイン本部デザインクリエイションスタジオCMFデザイナーの瀬能海翔さん

 大学時代はグラフィックデザイナーを目指していたそうですが、プロダクトデザインをやってみると、「意外と楽しいと感じました。プロダクトの中で唯一人より大きいのはクルマだけで、いろんな素材を使っているのもクルマだけ。そこでカーデザイナーを目指しました」といいます。

 また、「ちょうど魁 CONCEPT(マツダ カイ コンセプト)やRX VISIONが出た頃で、デザインだったらマツダだよなと思い、2023年に入社しました」とその動機を語ってくれました。

 そして研修期間を経て、最初に担当したのがこのカラーだったそうです。マツダは車種ごとに全体のポートフォリオに合わせて「このタイミングでこういうカラーにしよう」という戦略を考えています。同時に、作ったカラーがほかの車種に展開できるかも検討します。

「ジンクグリーンメタリック」をまとったロードスター最新改良モデル

 このジンクグリーンメタリックは2027年に車種を横断して投入するカラーとしてその数年前から開発されていました。そのタイミングでロードスターの担当として瀬能さんが就任したのです。

スポーツカーとSUVで異なる「色の見え方」と調色のこだわり

 このカラーのベースとなったカラーはアメリカでの市場調査の際にもたらされたものでした。基本的にはSUV系に採用するカラーとして考えられていましたが、「マツダスピリットレーシングで使っている足まわりを流用した、ちょっとスポーティなクルマを造りたいということから、どの色が一番良いかを検討した結果選ばれました」といいます。

 実は他の案もあったそうですが、「たまたまこのカラーで描いたスケッチを見せたら、こちらの方がいいじゃないとなりました。結果としてロードスターが一番乗りで発表となり、CX-30が続くことになりました」。

屋内の照明下でも、見る角度や光の当たり方によってさまざまな表情を見せてくれる

 しかし調色は難しかったそうです。「空は基本的に青いか、黄色いかなんです。緑は青と黄色の間の色なので、実際に塗って外で見ると、その時間や天気で見え方が大きく変わるんですね。例えば冬の朝はとても青く見えたりしますが、夏の夕方は薄く見えたり。そのあたりを加味してチューニングしています」とのこと。

 そのチューニングとは、「マイカが若干入っていて、少し青みに振ることで常にクールな感じに見えるようにしています」と教えてくれました。

 色決めをする際は、ロードスターとCX-30を同時に見ながらチューニングをしていったそうです。「CX-30はちょうどいい感じでも、ロードスターだと甘すぎる印象になり苦労しました。車高が低いので、色が見える範囲が広いですし、ボリューム感も違いますので見え方も変わってしまうんです。そこで最後に若干明度を下げて、FF(フリップフロップ 見る角度や光の当たる角度によって、色合いや明るさが違って見える現象や性質)のハイライトとシェードの明度差をちょっと強めにしています」と説明してくれました。

足元から内装まで「引き算」で魅せるトータルコーディネート

 また、最初に塗った試作車のホイールはガンメタだったそうです。そうすると「(ボディカラーが)抹茶ラテに見えるといわれてしまいました。そこでどうしようと考えた結果、最終的にレイズのホイールをブラックにして履かせたところ、全体に締まって見えたのでOKとなったんです」と瀬能さん。

 しかしこのブラックも難しかったそうです。「ブラックは、工場のラインで組み付けるときにセンサーが読み取りにくくなって、トーの調整がしにくいんです。しかし生産の方が頑張ってくれて調整できるようになったので、レイズのブラックメタリックが採用できました」と話しました。

レイズ製の鍛造ホイールを採用。ボディ全体を引き締めるブラックの色みもこだわりの末に実現した

 ちなみに“ジンク”とは亜鉛のこと。塗装分野では単なる塗料ではなく、鉄をサビから守る防食剤(下地塗料)として使われます。瀬能さんが愛車のプロシードに乗っていた頃、お世話になっていたショップでこのカラーを見せたところ、「アメリカのボーイング(航空機メーカー)の下地塗装に近い色だ」と教えてもらったそうです。まさにアメリカからもたらされたカラーといえます。

 このカラーをベースに内装も試行錯誤したそうです。「内装をテラコッタにして、ベゼルに色を差して、少しブリティッシュな感じも作ってみました。しかし、古典的にも見えてしまうので、もう一度解釈し直しました」と瀬能さん。

ブラックを基調とし、シックに抑えられたインテリア。エアコンアウトレットのシルバーがアクセントだ

 結果としてロードスターは引き算の上に成り立っていることもあることから、余計な色は入れずに、ブラック内装でエアコンのアウトレットにシルバーの差し色を入れるにとどめたそうです。

 最後に瀬能さんは「Vスペシャルのネオグリーンにしてほしいという声は多くいただきましたが、これが今一番NDに似合う緑ですとマツダとして胸を張っていえるカラーになりました」と仕上がりに自信を見せました。

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