交差点でもわかる「よりスムーズかつ素直に曲がる」
シャシ側はどうでしょう。ボディやサスペンション(ZF製の電子制御ダンパー)、タイヤ(ヨコハマ ブルーアースGT)などは、基本的にはSTIスポーツと同じだといいます。
レヴォーグの企画当初から、2.4リッターターボの搭載を想定した設計であることは、いうまでもないでしょう。
大きく異なるのはAWDシステムで、パワートレインの変更に伴い「アクティブ・トルクスプリットAWD(ACT-4)」から「VTD-AWD」へと変更されています。
VTD-AWDは、スバルでは高出力モデルに用いられるAWDシステムで、先代レヴォーグのFA20搭載モデルにも採用されているものです。
簡単に説明すると、センターデフに複合遊星歯車を使用することで前後駆動力配分が45:55と、リア寄りの設定です。差動制限は電子制御多板クラッチ式LSDでおこないますが、STIスポーツRではドライブモード「スポーツ+」に、アクセルONのあいだ旋回性能重視(LSD効果を下げて差動制限を抑制)となる「四駆スポーツモード」が追加されています。
STIスポーツRのフットワークは、正直に言えばSTIスポーツと比較して劇的な違いはありません。
穏やかなのに芯のあるステア系、操作に対する応答性の高さ、クルマの動きの連続性の高さ、無駄なロールを抑えながらしなやかさを持つサスペンションなどが連続的に融合することによるハンドリングと快適性の高いレベルでの両立などは共通。
その一方で、ステアリングを切り始めたときの「ノーズの入りの良さ」と前後バランスが変わったかのような「4輪で曲がる」感覚、さらに足の動きに「シットリ感」と「ストローク感」が増したことなどなど、クルマとしての質がより高まっています。
さらにドライブモードの各モードの差が、よりわかりやすくなっているような気がしました。
この辺りはACT-4(前後駆動力配分60:40で安定性重視)とVTD-AWD(前後駆動力配分45:55で旋回性重視)の特性の差はもちろん、車両重量の違い(STIスポーツに対して+50kg増)なども効いているのでしょう。
ちなみに四駆スポーツモードは、サーキットなどのハイスピード&高G領域用と思われがちですが、交差点を曲がるようなシーンでもよりスムーズかつ素直に曲がってくれます。おそらく、差動制限の抑制によりフロントタイヤが「曲がる方向」に専念しやすくなっているからでしょう。
その反面、厳密にいうと安定感/トラクションは若干、下がる方向になりますが、そもそも新型レヴォーグの基本素性が相当高いレベルにあるため、日常域ではまったく問題ありません。
この四駆スポーツモード、ドライブモード「スポーツ+」だけでなく「インディビジュアル」で個別設定も可能なので、個人的には日常でも積極的に活用したいモードです。
ただ、タイヤがシャシに対して柔らかな印象があり、それに起因するわずかなヨレ/ラグが、「頼りなさ」に感じてしまう部分がないわけではありません。
欲をいえばもう少し良い銘柄に変更できると、クルマとしての総合的なバランスは高まると思われ、個人的には、ノーマルタイヤと同じヨコハマならアドバンスポーツV107、他銘柄ならミシュラン パイロットスポーツ5がお勧めです。
※ ※ ※
スバルが考えるGT思想「より安全に/より快適に/より遠くに/より速く/より愉しく」のバランスが、より“真円”に近い仕上がりだと思います。
高速道路で高度な運転支援をおこなう「アイサイトX」を装備した最上級グレード「STIスポーツR EX」の価格は477万4000円(消費税込)。スバル車としてはお高めですが、輸入車のプレミアムセグメントのステーションワゴンたちと比べると、むしろお買い得といえるでしょう。
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