登場35年の「ロードスター」 何が魅力なの?
マツダ「ロードスター」は初代が1989年に登場後、長年にわたって愛され続けています。
どういった特徴があり、どのような魅力があるのでしょうか。
ロードスターは1989年に「ユーノス ロードスター」として登場した、小型2ドアオープンスポーツカーです。
30年以上・4世代にわたってラインナップされ、オープンエアーの軽量ボディでスポーティに走行できることから、歴代のどのモデルでも根強いファンを持ち、マツダを代表するモデルのひとつです。
キーワードは「人馬一体」。クルマを意のままに操る楽しさを徹底的に追い求めたパッケージングを採用。
ボディは風やエグゾーストサウンドを感じられる2ドアのオープンスタイルで、これにハンドリングに優れたFR駆動と高回転型の4気筒DOHCエンジン、クイックなマニュアルトランスミッション(AT仕様もあり)を搭載しています。
このうち、4代目の現行型(ND型)は2015年5月に登場しました。
従来通り、軽量コンパクトなFRオープンという特徴は踏襲しつつも、マツダ最新デザイン「魂動(こどう)」デザインを採用したほか、マツダ独自の低燃費技術「SKYACTIV-G」を採用した直噴エンジンを搭載するなど、環境性能も向上。
さらに、アルミや高張力鋼板などを用いることで、先代(NC型)よりも大幅な軽量を図りました。
ラインナップでは、通常のオープンモデルに加え、2016年11月には電動格納ハードトップを搭載する「ロードスターRF」も設定されています。
これまでに幾度かの年次改良が実施されてきましたが、2023年10月には4代目としては最大のマイナーチェンジが行われました。
デザインの変更や走行性能の強化、マルチメディアシステムの刷新に加え、「マツダレーダークルーズコントロール(MRCC)」と「スマートブレーキサポート(後退時検知機能SBS-RC)」を採用し、先進・安全機能を向上させています。
そんなロードスターですが、通算販売台数は120万台以上(2023年12月現在)で、「2人乗り小型オープンスポーツカー」として生産累計台数世界一のギネス記録を更新し続けているほどの人気モデルとなっています。
こうした多くのファンを持つことになった理由としては、比較的手頃な価格で購入でき、かつ今では貴重なオープンスポーツカーであるという点が挙げられます。
通常、スポーツカーやスペシャリティモデルは需要が少なく、比較的高い利幅を取らなければ採算が合わないうえ、クルマ自体も高性能なものが求められるため、開発費用がかさむ傾向にあり、車両価格は高額になりがちです。
しかし、ロードスターは初代登場当初から現行モデルに至るまで、一般的なエントリーカーほどではないにしろ、頑張れば手を出しやすい価格でラインナップ。
現行モデルであっても、最もベーシックな「S」では289万8500円と、電動化などクルマ自体の高性能化や原材料費の高騰によって新車価格が著しく高まるなか、300万円を切る価格は大きな魅力と言えます。
そうしたことから、結果として若年層やセカンドカーとしての需要も高く、「誰もが乗れる、乗りやすい」スポーツモデルとして支持されているのです。
また、ロードスターシリーズとしてキープコンセプトのまま長くラインナップされていることも、ロードスターを愛するファンを掴んで離さないことの理由として考えられます。
スポーツモデルではモデルチェンジを迎えるたびに常に進化が求められ、先代モデルやライバル車との差別化も必要とされます。
特にスポーツモデルやスペシャリティモデルはメーカーの「顔」ともいうべきモデルであり、性能や機能、デザインすべてを高度に求めなければならず、時にクルマ自体の大幅なパッケージングの変更(とそれらに伴う価格上昇)も行われていきます。
対してロードスターは一貫して、軽量かつクルマ本来の楽しさを追求。歴代モデルも強く踏襲したクルマに仕上げたことで、どの世代のモデルであってもいちど気に入れば親しみやすい印象です。
カタログスペックや絶対的な速さだけを追い求めるのではなく、操縦する楽しさや風や音を感じられるよう進化を重ねてきました。
こうした特徴を長年にわたって踏襲してきたことから、ロードスター独自のコミュニティの発展にもつながり、オーナー同士の強いつながりだけでなく、アフターマーケットではカスタムパーツも多く展開されることになり、自分好みのカスタムで仕上げることも可能。
ロードスター自体の魅力が、ロードスターの車種単体だけにとどまらない、さらに大きなコミュニティを形成することになっているのです。この部分もロードスター独自の大きな特徴とも言えます。
現在、新車で販売される多くのモデルが、背が高く居住性の高いSUVやミニバンがほとんどを占め、電動化や先進運転機能の標準化が図られるなど、移動手段としての快適性や機能性が高められたモデルが人気になりました。
そうしたなか、居住スペースは最小限でかつ2人乗り、純ガソリンエンジンのみを搭載し、移動手段ではなく趣味の手段としてのロードスターは、昨今のクルマの方向性とはますます異なった位置に存在するモデルになっています。
ある意味で、こうしたクルマの在り方が変化していくことも、歴代モデルを含めたロードスター全シリーズの輝きを増した要因であり、今後も唯一無二のクルマとして支持されていくことでしょう。