SUBARUの「聖地」で身をもって知るスバル車の安全性
「先進安全装備」として、他社に先駆けいち早く「衝突被害軽減ブレーキ」を含む運転支援システム「アイサイト」を普及させ、これにより追突事故の発生率を下げつつ、世界トップクラスの安全ボディで万が一の事故の際にも乗員を守る――SUBARUの安全に対する取り組みは、数ある自動車メーカーの中でもトップ水準と考えていいでしょう。
2023年2月、そのようなSUBARUの取り組みについて、メディアに体感してもらうことを目的としたイベント「SUBARUテックツアー〜SUBARUの事故低減に向けた取り組み(走行安全編)〜」が開催されました。これは「走りを極めれば安全になる」という、SUBARUが長年、培ってきた理念「走行安全」について紹介し、実車の試乗で体感してもらう趣旨のもの、といいます。
開催場所は、広大な敷地に高速周回路をはじめとするテストコースを備えた、スバル車開発の聖地ともいえる、栃木県のスバル研究実験センターでした。そこで開発された「ソルテラ」や「クロストレック」などに試乗しながら、安全を実現するための走行性能について理解してもらおうというわけです。
プログラムの中には実車の運転をともなうものも含まれており、自動車ライターである筆者(工藤貴宏)が体感してもいいのですが、今回はより一般のユーザーに近い視点を持つ人に体感してもらおうと、くるまのニュース編集部に配属されたばかりの丹羽(にわ)さんに体験してもらうこととしました。SUBARUの安全についての理解を深めてもらい、彼が感じた率直な印象をレポートしていきましょう。
SUBARUが考える「安全なクルマ」とは何なのか?
「どんな状況下でも、誰もがコントロールしやすく意のままに操れることを目指してSUBARUは車両を開発しています」。個別のメニューに先立って、SUBARU 技術本部 技術開発部 担当部長の小暮 勝氏がプレゼンテーションに立ちました。
衝突しそうになるとブレーキを掛ける「運転支援システム」や、衝突時にしっかりと乗員を守る車体はもちろん重要ですが、その前にまず根本的なこととして、事故を起こしにくいクルマを造らなければいけません。そのためには、「走る」「曲がる」「止まる」といったクルマの基本的な性能からドライバーの思い通りにしっかりと動く操縦性が重要です。
そのうえで、運転に集中できる環境作りのために、雨や雪など滑りやすい路面も含めた様々な状況においても素直な操縦特性を持ち、ドライバーが疲れにくいクルマとすることも欠かせません。また、操縦性が高いクルマは万が一のアクシデントの際も、車両をコントロールできる幅が広がって事故を防げる可能性が高まります。だからSUBARUは、走行安全を極めることも事故を防ぐ重要なことだと考えているとのことです。
SUBARU BRZとWRX STIによるウェルカム・ランが披露された
今回の体験者である丹羽さんの最初の驚きは、そのようなオリエンテーションの直後に訪れました。
高速周回路にて、開発、評価者を育成するSUBARU独自の取り組み「SDA(SUBARU Driving Academy)」のインストラクターにより、数台の車両(SUBARU BRZとWRX STI)が200km/h以上のハイスピードかつ超接近しての一糸乱れぬフォーメーションでデモンストレーション走行が披露されたのです。
その迫力と美しさは、まるで高速周回路に舞台を移し演技で魅せるブルーインパルス(航空自衛隊のアクロバットチーム)のようでした。
目の前すぐ近くを、車間ツメツメのハイスピードで駆け抜ける姿に、丹羽さんも興奮を抑えきれない様子です。
「ソルテラ」で体験する「X-MODE」を使った悪路走行の実力
さて、そのようなド迫力のデモ走行の後、丹羽さんが実際にハンドルを握る最初のプログラムは、ソルテラによる急こう配の登坂と下りでした。ソルテラはSUBARU初となる量産電気自動車であり、今回の車両は前後それぞれにモーターを組み合わせたAWDモデルです。
そこには、これまでSUBARUが培ってきたAWD制御技術が惜しみなく投入され、これまでガソリン車に搭載されていた悪路走行のための制御支援システムである「X-MODE」も搭載されました。坂は上りが未舗装で斜度30%、下りは舗装してあるもののより急な43%です。「急な」と表現しましたが、実際はそのようなひと言で済まされない、ずっとずっと急な坂だということは、まずお伝えしておきましょう。
しかし……といってはなんですが、そのような険しいコースにも関わらず、本来はドライバーがおこなう速度のコントロールを、クルマが安全に走れるようサポートしてくれるのが、最新のSUBARU AWDの凄いところでしょう。
X-MODEをオンにすると、グリップコントロール機能が利用可能になります。これは、脇のコントロールスイッチを操作し速度を2km/hから10km/hの間で設定することにより、アクセルやブレーキを操作しなくとも駆動力を適切に制御し悪路を一定の速度で進んでいってくれるという機能です。つまりドライバーが悪路の低速走行において速度操作から解放され、ハンドル操作に専念できるようになるから、安全に貢献するというわけです。
坂の途中には、左右のタイヤの接地面で滑りやすさの異なる状況もありましたが、ハンドルを操作し進路を定めるだけでスルスル登っていく様子に、運転席の丹羽さんは驚きの表情を隠せませんでした。クルマが速度を維持するこの機能は、知らない人がいきなり体験したら驚くなというほうが無理でしょう。
そうして登坂した帰り道は、シートからでは腰を浮かせて覗き込まないと路面が一切見えない、まるでジェットコースターのような状況でしたが、こちらもヒルディセントコントロール(急な下り坂でブレーキを制御し一定の速度で安全に下れる機能)のおかげで、何事もなく安全に下りることに成功しました。
「成功」というよりは、まるで当たり前かのようにスムーズで、クルマのサポートのおかげで急坂でも不安がありませんでした。
初のオフロード体験が、運転支援機能のおかげでスムーズに走行出来たことに丹羽さんは驚きつつも、安全の為にはこのスムーズな感覚が大切だと気が付き始めたようです。
綿密なブレーキ制御により最大で2輪が浮いても走行可能
急坂を上り下りしたあとには、人工的なコブを作った路面でモーグル走行のデモランです。そこでは前後それぞれの片輪が同時に地面から離れる、いわゆる対角線スタック状態が起きました。しかし、一瞬の空転の後にしっかりと前へ進む様子に、丹羽さんからは感嘆の声が上がります。
これは電子制御により、空転したタイヤにのみブレーキをかけ、接地しているタイヤへしっかりとトルクを送ることで前へ進んでいくという機能です。一般的なユーザーは、デモランのようなコブ路面に遭遇することはあまりないかもしれません。しかし、滑りやすい雪道などでは、この機能の恩恵を受けられることでしょう。
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