SUBARU「レヴォーグ」がサイクリストに愛されるのはなぜなのか?
スポーツサイクルはクルマと組み合わせることで、よりバラエティに富んだ遊び方が可能になります。たとえば、バイク(自転車)をクルマに積んで自然豊かな場所へ遠征してライドを楽しんだり、ヒルクライムやエンデューロ(林道や山道などを含む長距離の未舗装路を周回し速さを競う耐久レース)といったレースイベントに参加したりといった具合です。
したがって自転車愛好家は、クルマの好みや思い入れも強くなるのが常といえるでしょう。クルマは生活に欠かせない道具であると同時に、趣味の相棒でもあるからです。
かれこれ10年以上も雑誌やWEBメディアで自転車の記事を書いている筆者(佐藤旅宇)も、クルマにちょっと「うるさい」サイクリストのひとりです。
そのような筆者が、かねてから気になっていた一台がSUBARU「レヴォーグ」。ステーションワゴンというボディ形状が自転車遊びに適しているのはもちろん、自転車に対するフレンドリーなイメージがあるのも魅力です。というのもレヴォーグは、自転車ロードレースの世界ではサポートカーとしてお馴染みのクルマであるため、サイクリストなら一目置く存在だからです。
先日、幸運なことにそんなレヴォーグを試乗する機会に恵まれました。栃木県宇都宮市で開催される「SUBARU LEVORG presents 2022ジャパンカップサイクルロードレース」(以下「ジャパンカップ」)を取材するため、レヴォーグで会場へと向かうことになったのです。そのような訳で、今回はサイクリスト目線で見るレヴォーグの印象と、日本最高峰のワンデイロードレースであるジャパンカップの模様をお届けしようと思います。
レヴォーグはサイクリストに重宝されそうな便利な機能が盛りだくさん
今回試乗したレヴォーグは、SUBARUの先進運転支援システム「アイサイトX」を標準装備したグレード「GT-H EX」です。パワーユニットは1.8リッターの直噴ターボボクサーエンジンを搭載します。
実車を目の前にすると、写真で見るよりもスタイリングが一層アグレッシブに見えました。決して大きくないボディサイズにも関わらず、特にフロントフェイスやリアフェンダーまわりの立体的な造型が抜群の存在感を発揮しています。
続いてラゲッジスペースをチェックします。今回のレヴォーグは、キーを携帯した状態で車体背面のSUBARUエンブレムに肘などを近付けると、リアゲートが自動で開く「ハンズフリーオープンパワーリヤゲート」が装備されていました。
この機能に触れてまず思ったのが、荷物を積み込む時に両手が塞がっていてもリヤゲートが開けられて便利だということ。そういったシーンは日常で多くあるので、この機能はとても重宝しそうです。
ラゲッジを開くとフラットで広いスペースが現れますが、さらにセカンドシートを倒せば、前輪を外したロードバイクを楽々積載できるスペースが現れました。この点はさすがにステーションワゴンといったところです。ちなみにセカンドシートはラゲッジのレバーによってワンアクションで畳めるところも嬉しいポイントでしょう。
加えてフロア下には大容量のサブトランクが備えられているのもサイクリストには高ポイントでしょう。ロードバイクをはじめとするスポーツサイクルは、変速機などのデリケートなメカが剥き出しの構造なので、極力ほかの荷物と接触しないよう積載するのがセオリーなのですが、これだけサブトランクの容量があれば、シューズやヘルメットはもちろん、予備のパーツなどの荷物もしっかりと分別して収納できそうです。
乗った瞬間に分かる視界の広さで安全なドライブができそうな印象を受けた
ドアを開けてドライビングシートに座ってみると、良好な視界が最初の印象でした。さっそく運転を始めてみると、全方位に死角が少ないことに加えて、ボディサイズが日本の道路にちょうど良いので、狭い道でも不安なく取り回すことができます。
とくに進行方向の死角の少なさは特筆もので、これはAピラーの後ろに配された三角窓(画像の赤枠部分)の恩恵が大きいのでしょう。通常はミラーで見えにくい横断歩道の歩行者も、しっかりと視認することができました。
また、縦型の大型センターディスプレイやフル液晶メーターなどのインターフェースもすこぶる見やすく、直感的な操作ができます。レヴォーグは先進運転支援システムの有無に関わらず、クルマとしての根本部分から安全性を追求しているのだなと、しみじみ感じます。
高い直進安定性とフラットな乗り味はロングドライブにも最適
高速道路に乗ると、今度は高い直進安定性と快適性に舌を巻きます。速度が上がってもハンドルはビシッと安定しているし、車体はフラットさを保ったままです。車線変更もドライバーのイメージ通りにキチっと決まります。ステアリングの操作に対して動きがリニアなのに過剰に反応しすぎることはなく、しかも快適という絶妙なフィーリングです。
こうした特性は、出来の良いロードバイクに乗った時のフィーリングと同じで、サイクリストの筆者としてはシンパシーを感じる部分です。
よく誤解されるのですが、ロードバイクはただ「スピードの出る」自転車とは違います。自転車ロードレースはきついアップダウンやコーナー、ときには石畳といった「生きた」道を長時間走行する競技です。そのためロードバイクは、高い運動性能と優れた乗り心地、さらにサイクリストが思った通りに操れる安全性などをあわせ持っており、総合的な「速さ」が求められるのです。
話をレヴォーグに戻しましょう。同車はそのような基本性能の高さに加えて、「アイサイト」という先進の運転支援機能まで備わっています。「アイサイト・ツーリングアシスト」をONにすれば、前走車との距離を保ったまま、アクセルとブレーキだけではなく、ステアリング操作もサポートしてくれます。
アイサイトXはドライバーの疲労やミスを限りなく低減してくれる
さらに今回試乗したレヴォーグには、アイサイトをさらに進化させた「アイサイトX」が搭載されています。
そこで、アイサイトXの機能のひとつである「アクティブレーンチェンジアシスト」を試してみました。これは、クルマに備えられたセンサーやステレオカメラが周りの状況を判断して、ドライバーがウインカー操作をするだけでレーンチェンジのハンドル操作をサポートしてくれるというものです。特筆したいのは、その動作がとてもスムーズで安定していて、上手なドライバーがレーンチェンジしたような感覚だったことです。
今回は試す機会に恵まれませんでしたが、アイサイトXには渋滞時にハンドル、アクセル、ブレーキを総合的に操作して運転をサポートしてくれる「渋滞時ハンズオフアシスト」という機能も備わっています。こうした機能があればロングドライブでも安心してクルマに乗れるし、肉体的にも精神的にもストレスが激減することでしょう。
「2022ジャパンカップサイクルロードレース」で見たレヴォーグの活躍
約150kmのドライブで「レヴォーグ」の素性の良さをしっかりと体験し、宇都宮に到着しました。
今回取材する「ジャパンカップ」は「ツール・ド・フランス」をはじめ、自転車ロードレースの第一線で活躍する選手たちの本気の走りを日本で唯一、観戦できるビッグイベントで、開催期間中は日本全国から10万人以上ものロードレースファンが集まり、宇都宮市街は自転車競技の本場、ヨーロッパを思わせるようなお祭りムードとなります。
レースは宇都宮森林公園に設定された1周10.3kmのコースを14周(総距離144.2km)して競われます。全周にわたってアップダウンの多い厳しいコースですが、なかでも約1kmの間につづら折りの急坂が連続する古賀志林道が最大の難所です。ここは激走する選手の姿を間近で見られることから、人気の観戦スポットでもあります。
ジャパンカップでは、レース運営や選手のサポートをするため、多くのレヴォーグがコースを走ることになります。とりわけ目立つのがイエローにラッピングされた3台のレヴォーグで、これはフランスの自転車用品メーカー、MAVIC(マヴィック)が展開する「ニュートラル・サービス」を行うための「ニュートラル・カー」と呼ばれるものです。
実は、自転車ロードレースは個人戦ではなくチーム競技です。ジャパンカップでは、1チームは最大6名の選手で構成されており、各チームはエースを先頭でゴールさせることを最大の目標としてレースの作戦を立てています。
そして各チームはレース中に発生したパンクなどのトラブルに対処するため、チームカー(こちらもレヴォーグ)を伴走させることができますが、状況によっては1台だけではアシストしきれないこともあります。そこで活躍するのがMAVICのニュートラル・カーというわけです。ニュートラル・カーはチームや国籍に関係なく、すべての競技者に対して中立的に技術や機材のサポートを行うことが使命です。
ロードレースのサポートに必要なクルマの性能とは何なのか?
今回は、日本国内でのMAVICニュートラル・サービスを統括する、村上嘉之氏にお話をうかがうことができました。
「MAVICは、1996年より日本の自転車ロードレースでニュートラル・サービスを開始しました。発足当初から現在に至るまで、ニュートラル・カーはすべてSUBARUのステーションワゴンを使わせていただいています。ニュートラル・カーにはスペアのバイクや車輪などを載せるための広い荷室と、高い走行性能が必要になるからです」
ニュートラル・カーは基本的に、高速で走行する集団と集団の間に入ってサポートを行います。目まぐるしく変化するレース展開に対応するには、パワフルでレスポンスに優れたエンジンや俊敏なフットワークがなければいけません。さらにジャパンカップでは、カーブのある下り坂を時速90km近いスピードで駆け降りるようなケースも度々あるので、こうした状況下において、レヴォーグの優れたスタビリティ(安定性)は実に頼りになるといいます。
「ロードレースは雨でも行われるので、そうしたなかでも路面変化に強いSUBARUのAWDには全幅の信頼を寄せています。また、我々は日本全国で開催される自転車ロードレースで同様のサービスを行っており、高速道路で長距離移動をする機会も多いんです。新型のレヴォーグには『アイサイトX』がありますから、長距離移動の時にスタッフはかなり助けられていますね。レヴォーグは、自転車競技のニュートラル・カーに必要な性能をすべて備えた1台だと思います」
なぜロードレースにはレヴォーグなのか。聞いて体感して納得の答えだった
世界的な選手たちが熱い戦いを繰り広げている最中、筆者もスバルブースで実施されている「レヴォーグ同乗試乗」でコースを走ることになりました。実際にレースサポートも行う熟練のドライバーの隣に座ってコースをひと回りしましたが、それはもう凄まじい体験でした。
助手席に乗り込むと、あとは急加速、急制動、急旋回の三次元の動きが連続します。そうでもしなければ、高速で移動する選手の動きに対応できないからです。こうした運転をレースのスタートからゴールまで約4時間も続けるのですから、高い走行性能を持ったクルマでなければ務まらないのは当然かもしれません。
レースは激闘の末、UCIワールドチーム「EFエデュケーション・イージーポスト」(アメリカ)のワン・ツーフィニッシュで幕を閉じました。いくつかの見せ場は作りつつも、日本のチーム、選手の優勝は叶いませんでしたが、3年ぶりのジャパンカップ開催ということもあって会場は大いに盛り上がりを見せていました。
選手のパフォーマンスや頑張りはもちろん、円滑な運営があってこそ自転車ロードレースは上質なスポーツエンターテインメントとして成立します。その影の功労者は紛れもなくレヴォーグだったのだと、筆者は帰路に何となく誇らしい気持ちでレヴォーグのステアリングを握っていたのでした。
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