新型「WRX S4」はより本質重視の高性能セダンへ進化!

 SUBARU 新型「WRX S4」をいよいよ公道で走らせる機会に恵まれました。筆者は事実上、このクルマの兄弟車であるレヴォーグを愛車としているため、非常にその仕上がりが気になっていた一人です。

 セダンボディに改められ、しかも2.4L BOXER 直噴ターボ “DIT”を搭載したというWRX S4は、その成り立ちからしてもかなり羨ましく思えます。

新型WRX S4はボディ全体の骨格連続性を高める「フルインナーフレーム構造」と、微小な変形を抑える「構造用接着剤」などを採用

 新生WRX S4はレヴォーグから導入されたスバルグローバルプラットフォーム+フルインナーフレーム構造を採用した新世代のスバル車です。開口部の広いワゴンボディではなく、リアバルク構造を採用することを可能としたセダンボディは、ボディ取り付け部の構造がさらに強固になっているというので期待が高まります。

 オーバーフェンダーが与えられ、いつもよりたくましくワイドなボディに期待が高まるWRX S4。今回試乗するSTI Sport R EXには245/40R18サイズの専用ハイグリップタイヤが与えられており、ドッシリと安定したルックスを手に入れているところも普段とは全く違う雰囲気です。いかにも走りそうな気配が漂ってきます。

「ハイスペックなのに乗りやすい」を体現した新時代のスポーツセダン

従来モデルから排気量を400CCアップさせながらも燃費効率を8%向上させた新しい水平対向エンジンを採用

 エンジンは2.4L化され、最高出力は202kW(275PS)/5600rpm、最大トルクは375Nm(38.2kgf・m)/2000~4800rpmというスペックです。出力は旧型と同等を維持しつつも燃費は約8%の向上を果たしています。では、肝心の走りがどうなっているのかは興味深いところです。

 駆動系については、バリエーターとギアセットでローギヤード化されたCVT。そして、耐久性とレスポンスを向上させた油圧コントロールバルブを採用した「スバルパフォーマンストランスミッション」が新採用され、素早いマニュアルシフトのアップダウンを愉しめます。

 また、VTD-AWD(不等&可変トルク配分電子制御AWD)を採用することで、イニシャルトルクはフロント45%、リア55%の前後駆動配分を実現しました。アクセルオンでのニュートラルな挙動が期待できそうです。

  • "アグレッシブなエナジー"をテーマに表現されたエクステリア
  • 従来よりも全長・全幅は大きくなったが、全高が低くなっている
  • 迫力のあるオーバーフェンダーに収まる245/40R18サイズのタイヤと18インチアルミホイール

人とクルマがシンクロするドライビング空間に特別装備が盛り沢山

インパネは車両姿勢の変化を把握しやすいよう水平基調にデザインされている

 ドライバーズシートに収まると、ボルドーのインテリアに上質で走りへの期待感を感じます。筆者が普段乗っているレヴォーグのインテリアもかなり質が高いと思っていますが、一方で似て非なるものといった感覚が伝わってくるところもありました。それはWRX S4専用に新設計されたレカロシート(ウルトラスエード)の存在です。
 
 身体を包み込むような上質で快適な座り心地でありながら、シッカリと身体をサポートしてくれる…。その両方が高次元で両立されているのです。

新たにブースト計が採用された12.3インチのフル液晶メーター(レッドリング、STIロゴ入り)

 WRX S4専用のレカロシートはかなりスポーティな仕立てですが、電動で好みのポジションを設定でき、体育会系になりすぎていない扱いやすさも好感触です。

 ステアリングの奥に目をやると、12.3インチフル液晶メーター(レッドリング、STIロゴ入り)が入ってきます。筆者が所有するレヴォーグとデザインは一緒なのですが、よく見ればブースト計が与えられているところが違うと気づきます。

 このようにインテリアを見渡すだけでもジワジワとやる気を見せてくるこのクルマ。いざエンジンをかけてみるとエキゾーストノートもやや野太い音質となってり、やる気が感じられます。果たして走りはどうでしょうか?

ドライブアプリ「SUBAROAD」のおすすめルートでWRX S4の走りをチェックする

走りがいのある道と、新しい発見を提供する、SUBARUオーナーのためのドライブアプリ「SUBAROAD(スバロード)」

 今回はせっかくなので、2021年12月にリリースされたSUBARUのスマートフォンドライブアプリ、「SUBAROAD(スバロード)」のルートを使って走りを確かめることにしてみました。

「SUBAROAD」は到着時間や距離を優先して目的地へ移動する従来のカーナビゲーションではなく、最短ルートでは通らないワインディングロードや、山や海の景色を楽しめる道、そして地域の観光名所などを優先してドライブコースを提案してくれるものです。

 今回はこの「SUBAROAD」に新しく用意された、「房総(関東エリア)」ルートをWRX S4と共に走ってみたいと思います。

>>SUBAROAD(スバロード)の詳細はこちら

運転席に座るだけで走る意欲が高まってくるような印象を覚えた
「SUBAROAD(スバロード)」は通常のカーナビでは通ることのない楽しい道を提案してくれる

 高速道路のパーキングからゆっくりと走り出すと、シャシーはかなり引き締められた感覚が伝わってきました。
 
 ボディ剛性アップと同時に、スプリングやショックアブソーバーもかなりのセッティング変更が行われたのでしょう。わずかなステア操作で俊敏に応答すること、さらに、若干硬質になった乗り味も走れるクルマであることを感じさせるには十分すぎる仕上がりです。セダンならではの剛性感もたまりません。

 いきなりの高速クルーズということもあって、もう少し乗り心地が欲しいと感じたところで、走行モードをノーマルからコンフォートに変更してみました。

WRX S4の電子制御ダンパーはキャラ変の振り幅が大きくて愉しい!

ドライブモード切り替えで様々な走り心地を体験できる

 すると、足元はスッと力を逃がすかのようにしなやかに動き始める点が印象的でした。電子制御ダンパーを装備するSTI Sport R EXは、このキャラ変が愉しめるところがやはりメリットでしょう。極端に言えばスキーブーツからスニーカーへ履き替えた時のように、開放感抜群でロングドライブでも疲れ知らずといった感覚です。

WRX S4のドライブモードセレクトを使えば、高級セダンから本格スポーツカーのような乗り味までイージーに味わえる

 聞くところによると電子制御ダンパーの調整幅はレヴォーグよりも広く、それすなわちキャラ変具合がさらに大きいということになります。強固なボディで入力を受け止め、足がシッカリと動く感覚がたまりません。

 色々な道をバランス良く走るならノーマルモードが好感触ですが、ゆっくり流すならコンフォートモードがオススメです。コンフォートモードにすると2ピニオン式のステアリングも軽くなりますが、それでも路面状況を程よく伝えてくるインフォメーション性能はなかなかのものです。スポーツ走行ばかりに振っていない、これもWRX S4の良さのひとつでしょう。

 この乗り心地なら同乗する家族も快適なドライブが体感できますし、これは後に走った一般道でも同様の感覚を覚えました。走りを完全に犠牲にすることなく、かなり上質に走れるようになったこと、それが新型WRX S4の特徴のひとつといってもいいでしょう。

  • 木更津の道の駅、うまくたの里で小休憩
  • 「SUBAROAD(スバロード)」でルートを確認する筆者

どの回転域からでも瞬時に立ち上がるエンジンレスポンスを実感

 一般道に入って加減速を繰り返しながら感じることは、アクセルの反応がとにかくリニアだったということです。どの回転域にいても即座にレスポンスし、応答遅れを感じるようなことがありません。

高いドライバビリティだが、乗り心地含めてこれなら日常でも一切の不満が出ないだろうと感じた

 排気量アップに加え、ウエストゲートバルブ、吸気圧力をコントロールするエアバイパスバルブを電子制御に変更したことで、緻密な過給圧制御が可能になったことが効いているのでしょう。

 ドライバビリティに優れ、ストレスなく日常をこなせるところもまた、新型の特徴のひとつです。実のある速さがありつつも、手足のように馴染む感覚は嬉しいところです。

 前述したように、走行モードの選択によって高級セダンのような乗り味にも変化するので、気軽なドライブに出かけたくなるクルマだと感じました。

ワインディング走行でさらに実感できた「WRX S4」の走り味

まるでFR車のような抜群の回頭性とAWDの安定性を両立した驚きの走りを披露したWRX S4

 ワインディングに差し掛かったところで、走行モードのスポーツ+モードを選択しました。走行モードは11.6インチのセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステムから選択できますが、ステアリングの右にある「MODE」スイッチで変えることもできるので、気分によって瞬時に切り替えることが可能です。

 さて、いよいよ本領発揮させてみましょう。電子制御ダンパーが一気に引き締まり、2ピニオンの電動パワーステアリングは手応えが大きくなります。そしてエンジンレスポンスが最も優れるこのモードですが、果たしてワインディングではどう走るのでしょう?

 まず感じたことは、キビキビとした身のこなしが際立ったということです。微小操舵域から鼻先をクイッと曲げて行くWRX S4。車体の重さもボディの大きさも感じることなく、かなりスポーティに駆け抜けていきます。

しっかりしたホールド性と快適な座り心地を実現する新開発のRECAROフロントシート(※)

 WRX S4はセダンになってリア周りの剛性が高くなったことで、リアの追従性が高くなったことも大きく関係していると思います。いつものワゴンボディとはひと味もふた味も違う軽快さがたまりません。

 シート表皮に肌触りの良いウルトラスエードを採用したレカロシート(※)は確実に身体をホールドしてくれるうえ座り心地も快適です。

 さらに、WRX S4のVTD-AWDシステムはアクセルオンでリアからの蹴り出しが感じられ、フロントタイヤの依存も少なく、少ない操舵角でコーナーを駆け抜けていく感覚に溢れています。

 それは、まるでFR車のような抜群の回頭性とAWDの安定性を両立している。と言って過言ではないでしょう。こんな一体感を得られるクルマはなかなか無く、このクルマがWRXたる所以を感じました。

※メーカー装着オプション

「WRX S4」なら最高の旅を存分に楽しめる!

千葉県君津市にある亀山ダム付近の橋

「SUBAROAD」のオススメルートによって、普段では走ることがないような様々な楽しい道、綺麗な景色を1日楽しむことができました。

 一般的に走りを重視したクルマの場合は、後席における居住性の悪さや、ラゲッジの狭さといったウイークポイントがあるものですが、このWRX S4にはレヴォーグ譲りのユーティリティも備わっています。

千葉県君津市にある奥米隧道

 後席の足元は旧型よりも27mm拡大されており、フロントシートまでの空間が広くゆったりとしたポジションでくつろげることに加え、ラゲッジには6:4分割可倒式トランクスルー機構もあるので、釣竿やスノーボードなどの長尺モノを積む時もでも問題ないというわけです。

 トランクの容量も大きく奥行きがあり、大型のスーツケースが2つ同時に積めてしまう容量があります(※)。これなら、趣味のものをたくさん積んだり、家族と旅行にいく時でも困ることはないでしょう。

※スーツケースの大きさによっては積める数が異なります

  • 旧型よりも27mm拡大された後席の足元と大容量トランクスペース
  • 大型のスーツケースが2つ同時に積めてしまう容量がある、大容量のトランクスペース

「アイサイトX」で安心・快適な長距離ドライブも可能

GPSや準天頂衛星「みちびき」などからの情報と3D高精度地図データを組み合わせ自車位置を測定するアイサイトX

 そして忘れてはいけないのが、WRX S4のグレード名に「EX」の文字が付くクルマに装備された先進の運転支援システム「アイサイトX」の搭載です。

 アイサイトXは一定の条件を満たした自動車専用道路において、GPSや準天頂衛星「みちびき」がクルマの位置を正確に捉え、更に3D高精度地図データを使って、安全運転をサポートする最先端の安全テクノロジー。

「EX」がつくグレードにはアイサイトXが装備される。あると無いとではロングドライブの疲労が大違いだ

 前走車を自然に追従するアイサイトツーリングアシストを起動すれば、アクセルやブレーキ、そしてステアリングまで操作をサポートしてくれるので、ロングドライブの「安心」「安全」が一気に向上します。さらにアイサイトXでは、カーブや料金所などの前で、ごく自然に適切な車速に調整してくれる機能まで付いています。

 またアイサイトX起動時に70〜120km/hの車速域で車線変更をする場合、ウィンカーを出すだけでクルマが周辺の環境を読み込みながらレーンチェンジのハンドル操作をサポートしてくれますし、0〜50km/hの渋滞時の車速域では、ステアリングから手を離して走行することも可能なので、ロングドライブの帰りにありがちな渋滞でも心強い味方になってくれるから、WRX S4の走りを愉しんだ後はイージーに安全に高速道路を帰ってくる…ということも可能。

 下の写真のように、12.3インチのメーターにはアイサイトXの起動状況をメインとする画面のほか、地図画面をメインとする表示にできることも先進性があり、一格上のスポーツセダンに感じられるのでポイントが高い部分です。

  • SUBARUデジタルコクピット
  • SUBARUデジタルコクピットのアイサイト画面
  • SUBARUデジタルコクピットの地図画面

WRX S4はすべてにおいて高次元! オーナーになれる人が羨ましい!

オレンジの夕焼けにも映える「WRX S4」
SUBARU 新型「WRX S4」と筆者

 今日1日取材をしながら、約300キロの道のりを走ってきましたが、まるで疲れていない自分がいることに驚きました。

 終着地点の野島崎灯台に着く頃には日は落ちており、缶コーヒーを飲みながら沈む夕日に照らされるWRX S4を見ていると、素直にカッコイイクルマだなぁと思います。

 余談ですが、野島崎灯台の駐車場で撮影をしていると、一般の方が近づいてきて「これ、新しいWRXかい?かっこいいねぇ!」と言ってくれたことも印象的でした。

 走りはもちろん、快適性や安全性を高い次元で実現し、見る人の目を惹きつけるスタイリングも併せ持つWRX S4。

 これぞ安心と愉しさのSUBARU。走り好きのレヴォーグオーナーの筆者からすれば、このクルマのオーナーになる人がかなり羨ましい…と思える1台でした。

PHOTO GALLERY上質セダンへフルモデルチェンジしたSUBARU「WRX S4」の内外装をもっと見る(81枚)

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