SPORTモードとノーマルモードの違いは?
このようにいうと、「結局安定方向なのね」、「FRの旨味が減ってしまった?」と思う人がいるかもしれませんが、むしろその逆。
リアの接地性が上がったため、ドリフトをするためには従来モデル以上に前荷重を意識した走行が求められますが、それさえできれば今まで以上に自由自在です。
ちなみに従来モデルは限界を超えて流れ出す時に若干唐突な所がありましたが、新型はそればほぼ無くなっているため、スライド量のコントロールも僕レベルのドライビングスキルでも楽勝と、とにかく懐が深いのです。
ただ、個人的にはFRらしい派手なドリフトよりも、スライド量は少なめの「速いドリフト」が超絶に気持ちいいと感じました。
この深化したフットワークに、SPORTモードがとてもいい仕事をしていて、ノーマルのリニアな特性を損なわずに、より高応答、より高レスポンスな特性になっています。
体感的にはエンジンがシャキッと目覚めたかのようなピュアさと、過渡領域では2.4リッターエンジン(FA24型エンジン)がまるで2.6リッター級の“FA26型エンジン”になったかのような力強さを実感しました。
ただ、操作に対してとにかくダイレクトな特性なので、ラフな操作をするとクルマは間違いなくギクシャクします。だから、デフォルトではなく、モード切り替え式としたのは大正解。通常走行は間違いなくノーマルのほうが扱いやすいです。
逆を言えば、それくらいドライバーの細かいアクセル操作に忠実に反応するので、サーキットなどの非日常域でのコントロール幅は確実に増しています。
今回の走行では、ドライ路面でのスライド量のコントロールのしやすさ、ウエット路面ではグリップで走る時のコントロールに大変役立ちました。
ちなみにS耐のST-QクラスでBRZを走らせるTeam SDA Engineeringの総監督である本井雅人氏は、「実はSPORTモードは事前にS耐ST-4クラスに参戦するチーム(トヨタ GR86)に提供して評価もしていただいています。各ドライバーからは『このほうが乗りやすい』と高い評価を得ています」といいます。
つまり、すでに実戦でも“お墨付き”というわけです。
※ ※ ※
新型BRZの走りに関しては「ビックマイナーチェンジ」に恥じない伸び代と言っていいでしょう。
初代BRZがマイチェンでE型に進化した時は「走りが86に寄った!? 」と感じましたが、現行BRZのD型への進化は、「BRZの軸をブレさせることなく、走りの純度が引き上げられた」だけでなく、「ドライバー次第で二つの個性を備える」といった印象です。
そういう意味では、D型はスバルの「GT思想」とBRZの「FRスポーツらしさ」がバランス良く両立できていると思いました。まさに控えめだけど、大きく進化したというわけです。
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