上質な走りと空間を愉しめる「フォレスター STI Sport」

「森の人」を意味するSUBARU「フォレスター」は、SUBARU初のクロスオーバーSUVとして1997年に登場したミドルサイズSUVです。2023年現在の現行モデルは、2018年に登場した5代目になります。

「フォレスター STI Sport」はフォレスターの最上級グレードに位置する
他のグレードと「ひと味違う」を醸し出すSTIのエンブレム

 SUBARUのお家芸といえる低重心のボクサーエンジンと、熟成されたAWD技術を活かした、オン/オフロードを問わない走破性がフォレスターの美点で、中でも1.8リッターターボエンジンを積む「SPORT」グレードは、その名のとおりオンロード走行でのスポーティーな走りにフォーカスを当てたモデルです。

 そのSPORTグレードをベースに、SUBARUのモータースポーツ活動を支える「STI(スバル・テクニカ・インターナショナル)」が、培ってきた走りの技術を基に、日常のドライブ領域で「ドライバーとクルマの一体感」を目指し開発したモデルが、今回試乗する新グレード「STI Sport」になります。

 前後足まわりにSTIがチューニングした専用ダンパーを備えて走りの質感を高めるとともに、内外装にはSTI Sport専用の装備を施して上質さを追求したモデルです。

 フォレスターのラインアップにおいてプレミアムなグレードに位置づけられるこのSTI Sportは、輸入車ブランドの同クラスSUVにも引けを取らない存在感と質感を備えながら、それらよりも高いコストパフォーマンスを実現しています。

プロカメラマンに撮影を教わりながら長野までドライブへ

筆者:左(河西啓介)とフォトグラファーの小林岳夫さん:右

 今回、そのフォレスターSTI Sportの魅力を確かめるべく、東京都心から長野まで試乗する機会を得ました。

 筆者(河西啓介)も色々なクルマを試乗することがありますが、東京〜長野のようなロングドライブはあまり機会がないので非常に楽しみです。さらに、今回はクルマの撮影などでご一緒する機会の多いフォトグラファーの小林岳夫さんを誘って、長野周辺のビューポイントで撮影をしながら行くことにしました。

 実は前から、筆者(河西啓介)はプロカメラマンに「風景やクルマの上手な撮り方」を教わってみたいと思っていました。そこで「よい機会!」とばかりにお願いしてみたのです。

 平日の朝、都内の公園駐車場に集合し、出発しました。この冬は例年よりずいぶん気温が低く、この日もかなり寒い……。とはいえ空は雲ひとつない青空、絵に描いたような冬晴れ、絶好の撮影日和です。

 今回のドライブでは、小林さんにもフォレスターのハンドルを握ってもらい、その印象、感想を聞いてみたいと思っていました。ロケーション撮影の多い小林さんは、日ごろから相当な距離をクルマで移動していて、ある意味、“運転のプロ”なのです。きっと的確なインプレッションを教えてくれるに違いありません。

専用装備がふんだんに奢られた「フォレスター STI Sport」

STI Sport専用のエンブレムや艶黒のアクセントが与えられたエクステリア

 僕らが乗るフォレスターは、華やかさを感じさせるクリスタルホワイト・パールの車体です。STI Sport専用の艶黒塗装が施されたバンパー、サイドガーニッシュ、リヤスポイラーとのコントラストが精悍な印象を醸し出します。

 ドアを開くと、室内はブラックとボルドーのレザーで仕立てられたシックで上質な空間が広がっていました。素材にも手抜かりはなく、滑らかな触感のナッパレザーが使われています。

 STI Sport専用のマルチインフォメーションディスプレイ付メーターやインストゥルメントパネル周りは、欲しい情報が少ない目線移動で確認できるように配置され、艶っぽく光るブラック塗装のパーツがアクセントになって、合理的でありながら贅沢さを感じさせるデザインです。

  • ブラック×ボルドーのレザーシートが上質な雰囲気を醸し出す
  • リヤシートにもブラック×ボルドーのレザーシートが与えられている
  • リヤシートは6:4分割。ラゲッジからワンアクションで折り畳めるスイッチも装備される

視界が広く掴みやすい車両感覚のおかげで運転ストレスを感じない

SUBARUならではの広い視界はフォレスター STI Sportでも実感できる
Aピラーの付け根部分の三角窓のおかげで、右左折時の死角が少なく安全なドライブが可能

「このクルマ、すごく視界が広いですね!」クルマに座ってすぐ、小林さんがそう言いました。

 確かにフォレスターは、高すぎず低すぎない、程よいアイポイントの高さに加え、Aピラーの付け根部分に大きな三角窓が設けられているため、運転席からの死角が少なくなっています。

 またスクエアなボディ形状なので、運転席からボンネットがしっかりと見えるので、それゆえドライバーが車両感覚を掴みやすいのです。

 ボディサイズは全長4640mm✕全幅1815mm✕全高1715mmで、街なかでの走行や駐車時でもストレスのない大きさです。

上質な乗り心地と走行性能を両立するSTI Sport専用のダンパー

高速道路の直進安定性の高さは、STI Sport専用ダンパーの効果が大きい
高い速度のレーンチェンジでもクルマが思い通りに動いてくれる

 30分ほど一般道路を走り、高速道路に上がって首都高4号線から中央道へ。平日の午前中、下り方面の高速は空いています。1.8リッター・ターボエンジンの豊かなトルクを味わいながら、渋滞のない快適なスピードで走り続けることができました。

 フォレスターSTI Sportの乗り心地のよさは、助手席に座る僕にもはっきり感じ取ることができます。首都高はその構造上、道路の継ぎ目が多く、それを越える度にゴトン、ゴトンという路面からの突き上げを感じるものです。

 僕は自動車ジャーナリストという仕事柄、それをクルマの乗り心地の良し悪しを図る材料にしているのですが、フォレスターSTI Sportは、路面から伝わってくる衝撃の“いなし方”がとても上手いと感じました。ふつうのクルマがゴトン、ゴトンだとすれば、こちらはタタンッ、タタンッという感じです。

 衝撃を柔軟に吸収しその収まりも早いのは、STI Sport専用ダンパーの恩恵でしょう。とくにフロント側のダンパーは、受ける衝撃の大きさや速度によって減衰力を変化させる可変タイプで、低速から高速、舗装路から荒れた道まで、さまざまなシチュエーションでしなやかな乗り味を提供してくれるのです。

 直進安定性も高く、まさにハンドルに手を添えているくらいの感覚でビシッと真っ直ぐ走ってくれます。

アイサイトツーリングアシストがあればロングドライブも快適にこなせる

アイサイトツーリングアシストは加減速も絶妙で、上手なドライバーが運転している感覚

 今日の目的地は、長野県にある「味噌川ダム」。なぜこの場所を選んだのかは後半のお楽しみですが、東京から味噌川ダムまでは、約260キロもの距離があります。

 片道のドライブとしてはなかなかの距離ですが、フォレスターに搭載された「アイサイトツーリングアシスト」があれば、長距離の移動でもかなり快適なドライブができるのです。

アイサイトツーリングアシスト作動中はセンターの上部ディスプレイにも作動状況が表示される

 フォレスターに搭載された、SUBARUが先鞭をつけた運転支援システム「アイサイト」には、自動車専用道路におけるアクセル、ブレーキ、ステアリングの操作をアシストし、安全な移動を支えてくれる「アイサイトツーリングアシスト」が備わっています。

「アイサイトツーリングアシスト」は、まさにこうしたシーンでドライバーの負荷を大幅に軽減してくれるので、ロングドライブでも快適なことを知っていたからです。

 前走車との距離を保ちつつ一定のスピードでクルージングし、カーブの多い中央高速でも常に車線の真ん中をキープしてくれます。とくにドライブでの帰り道など、疲れているときほどその恩恵が身に染みるというものです。

 SUBARU「フォレスターSTI Sport」の詳細はこちら! 

上手な風景撮影のコツは「欲張りすぎない」こと!?

最初のビュースポット「御射鹿池(みしゃかいけ)」に到着!

 中央道を諏訪南インターで降り、目指したのは長野県茅野市にある「御射鹿池(みしゃかいけ)」です。標高1500mの山中にある、鏡のように滑らかな水面が四季折々の風景を映し出すという美しい池で、日本画の大家である東山魁夷の作品、「緑響く」のモチーフにもなったといいます。

景色は広い画角で撮ってしまいがちだが、綺麗な場所だけ切り取ってしまう方が良い場合が多いそう

 ここでは小林さんに、風景撮影のコツを教えてもらいました。しかも「スマートフォンを使って撮りたい」というリクエストも聞いていただいてしまいました。いつも持ち歩いているスマホで上手に写真が撮りたい……と思っていたからです。

 御射鹿池の周りには白い雪が残っていました。雪と静かな水面に映る風景とのコントラストが美しい。

 僕はその全体を撮りたくなりましたが、小林さんのアドバイスによれば、「風景を広く撮ろうとすると、余計なものまで写してしまうことがある。あえて画角を絞り込み、見えない部分を想像させるほうが印象的」とのこと。

 なるほど自分の撮った写真と小林さんの写真を比べてみると、画角を絞ったほうが絵は整い、あえて写していないその先の“奥ゆき”を感じることもできます。

  • スマホの広角レンズで撮影した御射鹿池の写真は、電線や美しくない部分も写っている
  • 見せたい部分だけを切り取った御射鹿池の写真は、さらに広がる美しい池を想像できる

STI Sport専用のダンパーでワインディング路を軽やかに駆ける

STI Sport専用ダンパー×BOXERエンジン×シンメトリカルAWDの組み合わせで走りが気持ち良い!

 御射鹿池での撮影を終えたあと、僕らはフォレスターSTI Sportで蓼科周辺のワインディングロードを走り、茅野市街へ。ふたたび中央高速に乗り次の目的地を目指します。

フォレスター STI Sportの専用ダンパーは“意のままに操る愉しさ”を味わえる!

 ワインディングロードでは、僕自身がハンドルを握りました。強く感じたのは、初代から連綿と続く、フォレスターの基本設計の秀逸さです。低重心のボクサーエンジンが生む走行安定性、パワートレーンが左右対称に配置される「シンメトリカルAWD」がもたらす4輪の確実な接地感などです。

 さらに、今回試乗しているSTI Sportは、専用にチューニングされた前後ダンパーが備わっています。一般道では乗り心地が良く、高速道路では抜群の安定感を実感させてくれる専用のダンパーですが、ワインディングロードではとくにその性能を体感することができます。

 ドライバーのステアリング操舵に対して車両の動きが遅れないため、まるで低重心のセダンのようにスポーティーなハンドリングが体感でき、右へ左へと目まぐるしく変わる道でも抜群の操縦安定性です。

 まさに意のままの走りを愉しんでいると、フォレスターがSUVであるという事を忘れてしまいそうになります。

  • 悪路や雪道での走行性能を高める「X-MODE」を標準搭載
  • 「X-MODE」作動中のマルチインフォメーションディスプレイ付きメーターの表示
  • 「X-MODE」作動中のセンター上部のディスプレイ表示

“いつもと違う目線”を意識してクルマをカッコよく撮る!

カッコいいクルマの撮り方を教わる筆者(河西啓介)。やってみると意外と難しい!?

 ワインディングロードを走っていると、道路の脇にちょっとした駐車場を見つけました。地方の峠道などにはよくある光景ですが、こんな場所に立ち寄るとついついやってしまうのが愛車の撮影です。そこで、小林さんに「カッコいいクルマの撮り方」を教えてもらうことにしました。

「クルマをカッコよく撮るためには、普段とは違う目線で撮影してみるのも良い方法です。普通の高さからクルマを撮るといつもと同じ見え方になってしまうので、例えば今回のフォレスターのように背が高いクルマの場合は、思い切ってアングルを下げてみましょう。

 スマホのレンズは限りなく地面に近くして、ローアングルを狙います。また、逆光を恐れる必要はありません。一眼レフで逆光下のクルマを撮ると真っ黒に潰れてしまいますが、最近のスマホは性能が良いので、逆光でも綺麗に撮れることが多いです。

 また、クルマの周りの景色や背景にも注意する必要があります。例えばクルマの屋根から電柱が生えていると、“ちょんまげ”のようで不恰好になるので気をつけてください。」と小林さんはアドバイスをしてくれました。

 なるほど、「普段の目線とは違うアングルで撮る」「逆光を恐れない」「背景のオブジェクトに気を付ける」この3つでドラマティックな写真が撮れるというわけですね! さっそく次から実践してみたいと思うテクニックです。

  • スマホを普通に構えて撮影した写真は、なんだかのっぺりした印象になってしまう。
  • ローアングル×逆光で撮ったスマホ写真は、迫力があってドラマチック。太陽もいいアクセントになっている

SUBARUのルーツである「昴の六連星」を撮る

SUBARUのエンブレムは「プレアデス星団」の和名である「すばる」にある、ひときわ輝く6つの星がモチーフになっている
今日の目的地である味噌川ダムは、周りに光源がないため満点の星空を見ることができる

 ワインディングロードを抜けて目指す目的地は、今日の撮影ドライブの“締め”として考えていた、星空の撮影です。

 実は、「SUBARU」という社名は、冬の空に輝く「プレアデス星団」の和名「すばる」にちなんでいて、その中でもひときわ輝く六連星(むつらぼし)がSUBARUエンブレムのモチーフになっています。

 星が美しく見えることで知られる場所、木曽の山中に行けば美しい「すばる」を見ることができる…。そう考えて走ってきたものの、果たしてここまでのドライブと撮影に時間を割きすぎたのか、目的地に着いたときにはすでにとっぷりと日が暮れていました…。

プレアデス星団、和名“すばる”の撮影に見事成功!

スマホでも星空は撮れるが、「すばる」を綺麗に撮るなら一眼レフカメラを使うのがおすすめ(撮影:小林岳夫)

 果たして僕らの考えは的中します。ダムの駐車場にフォレスターを停めた僕らの頭上には、息を呑むほどの鮮やかな満天の星空がありました。そしてスマホの星座アプリを頼りに空を見上げること30分、ついにひときわ輝く“すばる”の六連星を見つけます。

 小林さんによれば、スマホでも夜景モードなどを使い、三脚などで固定すれば星空撮影はできるとのこと。しかし残念ながら、六連星を鮮明にとらえるのはかなり難しい……。そこで最後はプロの機材と技術を駆使して、みごと六連星撮影を完遂してもらいました。

  • スマホで撮影した星空の写真。画面左側に有名なオリオン座がある。画面右端の赤丸の中が「すばる」
  • 6つの星がSUBARUエンブレムのモチーフ。「Alcyone」や「Maia」と聞いてピンと来る人もいるのでは!?

往復600キロのロングドライブで分かったことは…

STI Sportならではの質感の高さと上質な乗り心地は、同じ車格の欧州車にも決して引けを取らない仕上がりだ!

 フォレスターSTI Sportでロングドライブに出かけた僕たちが、その盛りだくさんのミッションを完了したときには、もうすっかり夜は更けていました。さあ、これから都心まで約250kmの帰路が待っています。

 普通であればさすがにうんざりしそうな状況ですが、前述した通りフォレスターには「アイサイトツーリングアシスト」が装備されているので、自動車専用道路を使った帰りのドライブであれば、道路の車線を認識して前走車を追従しながら、アクセル・ブレーキ・ステアリングの操作をクルマがサポートしてくれます。なので、僕は帰路のことをそれほど負担には感じていませんでした。

 長距離を移動しながら、ビューポイントでの撮影を楽しんだ1日で感じたことは、STI Sportならではの質感の高さと上質な乗り心地は、同じ車格の欧州車にも決して引けを取らないと言うこと。そのため、様々なクルマを乗り継いできた、目の肥えた大人のドライバーでも満足できる仕上がりです。

 今日の道のりのほとんどを運転してくれた小林さんも様々なクルマに乗ってきた人ですが、そんな小林さんも「自分の運転がワンランク上がったような気にさせるクルマ」だと所々で話してくれたのも印象的でした。

 ロングドライブの道程を愉しく、快適に過ごさせてくれたフォレスターSTI Sportのポテンシャルの高さに感心させられた、往復600kmのロングドライブでした。

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