なぜトヨタはWRCに挑み続ける? 世界の過酷な道を走り続け見える未来! 革新的な「クルマづくり」のやり方とは
ただのGRヤリスではない! WRCに参戦する「GR YARIS Rally1 HYBRID」とは
WRCはカテゴリーによって車両のレギュレーションが異なります。
そうしたなかで、2022年のFIA Rally1技術規則に準拠して新たに開発された最高峰ラリーカーが「GR YARIS Rally1 HYBRID」です。
GR YARIS Rally1 HYBRIDは、GRヤリスの市販モデルをベースに、ヤリスWRCによる3シーズンのWRC参戦経験を活かして開発されました。
このRally1は、2021年までトップカテゴリーを担ってきた「WRカー(ワールドラリーカー)」に代わる新規定車両となり、サスティナブルなモータースポーツを推進するための技術が多く採用されています。
とくにGR YARIS Rally1 HYBRIDは、トップカテゴリーのラリーカーとしてハイブリッドユニットが搭載されたモデルです。
パワートレインは、1.6リッター直噴ターボエンジンにハイブリッドシステム(3.9kw/hのバッテリーとモーター・ジェネレーター・ユニット)を組み合わせることで加速時には最大で100kw(約134馬力)のパワーと180Nmのトルクを発生させます。
これによりRally1は最高出力500馬力以上、最大トルク500Nm以上を発揮。さらにブレーキ時にはエネルギーを回生し、サービスパークなどではバッテリーを外部電源に接続して充電することも可能です。
また使用される燃料は、合成燃料とバイオ燃料を混合した100%持続可能な俗にいうカーボンニュートラル燃料となり、FIA世界選手権のモータースポーツで使用されるのは、Rally1が初めてです。
日本では前述のスーパー耐久にて2022年から「GR86」と「SUBARU BRZ」がカーボンニュートラル燃料を使用してST-Qクラスに新たな取り組みとして参戦しています。
さらに、トヨタのカーボンニュートラルへの取り組みは、「水素社会の実現」にも及びます。2021年からスーパー耐久にて、水素エンジンを搭載するカローラで参戦。水素を「つくる」「はこぶ」「つかう」というテーマでさまざまな企業や自治体と一体となって取り組んでいきたことで、エネルギーの選択肢の増加、水素運搬量の増加、エンジン性能や航続距離の向上、水素充填時間の短縮などさまざまな課題がモータースポーツを通じて革新的な進化を遂げているのです。
また、WRC第9戦「ベルギー」ではモリゾウ選手(豊田章男社長)自ら水素エンジンを搭載した試作車「GR Yaris H2」で試走を披露し、世界中に水素エンジンかつ内燃機関の未来を発信しました。
このようにトヨタがWRCに挑む理由には、さまざまな背景があるなかで「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」と「カーボンニュートラル社会の実証」という、クルマづくりにおいて革新的といえる取り組みが存在するのです。