【すべてはここから始まった…】TOYOTA & SUBARUが「モータースポーツ」でカーボンニュートラル社会の実現に取り組む!
TOYOTAとSUBARUは、2021年11月に開催されたスーパー耐久シリーズ最終戦にて「2022年のS耐でカーボンニュートラル燃料の実証に走り出します」と宣言。果たして、2022年のスーパー耐久では何が起こるのでしょうか。
カーボンニュートラル社会を実現するために、モータースポーツで鍛えるTOYOTA/SUBARUの想いとは
2021年、スーパー耐久シリーズに参戦をおこなったTOYOTAの水素エンジンを搭載する「カローラ」。
自動車業界のカーボンニュートラル社会の実現に向け、「正解が分からないなか、より多くの選択肢をお客様に提供できる準備をする」と唱えるトヨタのマルチソリューション戦略のひとつですが、未知のエンジンを育てるために活用されたのが「モータースポーツ」でした。
水素エンジンは約半年で大きく進化しましたが、この挑戦は2022年も続きます。
同じく2021年、TOYOTAの「GR86」とSUBARUの「SUBARU BRZ」が登場しました。
この2台はTOYOTAとSUBARUの協業により生まれたモデルの2世代目ですが、「一緒にいいクルマをつくろう」という掛け声のなか、仲良く喧嘩をしながら開発が進められましたが、その流れはBEVのTOYOTA「bZ4X」とSUBARU「ソルテラ」の共同開発によってさらに前進したそうです。
そうしたなかで2022年には、2021年に起きたふたつの出来事がタッグを組みます。
TOYOTAとSUBARUはスーパー耐久の開発車両が参戦可能なST-Qクラスに、バイオマス由来の合成燃料を使用した車両を投入すると発表。
それに加えて、モータースポーツの場を活用してGR86/SUBARU BRZの次世代モデルの先行開発を公開しながらガチンコでおこなう……と発表しました。
これまで先行開発/新車開発は「マル秘」というのが定説でしたが、今回の発表はそれらを大きく覆す出来事になります。
両社のトップは今回の取り組みに関してこのように語っています。
「我々は合成燃料の知見や経験が不足しているので、そこは挑戦だと受け止めています。
『BEVの世界になると、SUBARUの水平対向はなくなる』という人もいますが、どう組み合わせて未来に向かうのか? そんな姿を見せたいです」
合成燃料とは水素と炭素を化学反応させて作る燃料です。
燃料なので燃やせばCO2を発生しますが、大気中のCO2から分離した炭素を使うことで、CO2の排出量を実質ゼロ(=カーボンニュートラル)とみなすことができます。
つまり、これまで100年以上に渡って進化を遂げてきた内燃機関も大幅なCO2削減が可能になります。
さらにいえば、すでに世の中を走るクルマにも活用できることも大きなメリットです。
とはいえ、TOYOTA/SUBARUどちらも経験の浅い部分であり、速く進めるには研究所ベースよりもモータースポーツを活用してしたほうがいい……という判断です。
この辺りについて、GRカンパニーの佐藤恒治プレジデントはこのように語っています。
「色々開発していますが、まだまだ技術が確立していません。
一口に合成燃料といってもバイオエタノールを中心にするものからバイオマス、炭化水素から生成まで多種多様です。
そのなかで我々が大事にしているのは、モータースポーツの環境で使いながらJIS規格にミートさせながら、一般車両にも使えるように技術を育てていくことです」
一方、TOYOTAから「一緒にやりませんか?」と提案を受けたSUBARUはどうでしょうか。
SUBARUの藤貫哲郎CTO(最高技術責任者)はこのように語っています。
「合成燃料は我々の経験の薄い所です。
速くやるには研究所ベースよりモータースポーツを使ってやるのが良いことはTOYOTAと同じです。
課題が解らないので、課題をつくり潰していくこと。その価値があるから参戦を決めました。
この先、GR86/SUBARU BRZを従来と同じように出せる時代ではなくなると思います。
では、どう残していくのか。
それを一緒にやって真剣に考える必要があります。競争すると技術は伸びますので」
これまでモータースポーツとエネルギー問題は背反する関係でした。
過去を振り返ると1970年代のオイルショックのときには自動車メーカーはモータースポーツから去っていきました。
今、自動車業界はカーボンニュートラルというエネルギー問題を抱えていますが、逆にその実現に向けて自動車メーカーがモータースポーツへと戻ってきています。
そう思うと、2022年のスーパー耐久はこれまでの常識を覆す『新時代への幕開け』といってもいいのかもしれません。