2年目の新生「ラリージャパン」はどうだった? ラリー認知は拡大? 勇姿見せた勝田貴元選手が振り返る
地元出身の勝田貴元選手がラリージャパンを振り返る
そんな勝田選手、ラリージャパンの1週間後に行なわれた入門用ラリーシリーズの「TGRラリーチャレンジ」でデモ走行を行なうために来場。
この合間にインタビューに応じてくれました。実はWRCジャパン直後に体調を崩し、大事を取って直後のインタビューは全てキャンセルされていたのです。
―― ラリージャパンを終え、現在の素直な感想を教えてください。
貴元:気持ち的には1週間経った今もずっと悔しい気持ちでモヤモヤしています。
いつもなら割とすぐに気持ちを切り替え、「次に!!」という感覚になれるのですが、今回に関しては……。自分が賭けていたものも大きく、とにかく優勝争いがしたかったです。
―― 昨年は3位だったので、当然その上を目指していたと思います。
貴元:今回は賭けていた所も大きかったですし、自分が優勝争いをすることで日本でのラリー文化の成熟やファンを増やすキッカケになってほしいと思っていたので、結果は欲しかったのは事実ですね。
―― 2日目のSS2でコントロールを失い、クラッシュした時の状況を教えてください。
貴元:11㎞地点の右コーナー手前のブレーキングでフルロックしてしまい真っすぐ突っ込んでしまいました。この時は自分でも一瞬何が起こったかわからず。
―― SS終了後のTVインタビューで「コーナーの情報が何もなかった。ノーチャンスだ」と語っていました。
貴元:ただ、後でオンボード映像を見て検証すると、その区間だけ舗装が異なり極端に水が浮いた状態でハイドロプレーニング現象を起こしていました。レッキの時とコンディションが全く違ったので、路面状況の判断ができなかったのが原因でした。
―― その後に走ったダニ・ソルド選手(ヒョンデ)とエイドリアン・フルモー選手(フォード)も同じ場所でクラッシュしています。
貴元:彼らは木をかすめて崖から落ちてしまいましたが、僕は運よく1本の木に当たってコース上に留まることができました。
―― その後、マシンを懸命に修復するシーンがWRCのライブ放送で流れました。用水路からペットボトルに水を汲んで、ラジエターに補給しているシーンです。
貴元:ラジエターは応急処置できましたが、足回りはターマック(舗装路)なのでスペアを持っておらず、真っすぐ走らないような状況でしたが、SS3は気を付けながらフィニッシュ。
SS4は運よくキャンセルになったのでタイム的には1分半から2分弱くらいのロスで済みました。リエゾン区間はEVモードを使いながら戻りました。
―― ここで、貴元選手は驚きの光景を見たと聞きましたが?
貴元:沿道に水の入った大きなタンクやボトルを持ったファンが、本当にびっくりするぐらい大勢いまして。
恐らくTV映像を見たと思いますが、僕に手振りながら「水あるよ!」と。規則で水を受け取ることはできませんが、その気持ちが嬉しかった。
最後まで走り切れたのは、日本のファンの熱さに後押しされたと思っています。感謝しかありませんね。
―― サービスパークに戻ると、メカニックは45分の限られた時間で見事に修理。SNSでも「新車に戻った」、「魔法かよ!」と沸いていました。
貴元:彼らには本当に感謝しかありません。自分の中では残念な気持ちもありましたが、ラリーはまだ終わっていないので、とにかく自分ができることを精一杯やろうと。
―― ラトバラ代表に聞くと「直前までタイムは良かったので、飛ばし過ぎ。10%力を抜けばいいタイムになるから落ち着いて」とアドバイスがあったと聞きました。
貴元:そのような走りを実践したら、タイムがポンポンと出ました。
もちろんプッシュはしていましたが、自分の中では「これ以上は無理」ではなく、コントロール下においてまだマージンが多少残るようなプッシュでした。クルマのフィーリングも良く、何とか5位まで追い上げることができました。
―― 当然、4位は狙っていましたよね?
貴元:何とか追いつきたいと思っていましたが、最終日はマシンのフィーリングが良くなくて、ペースを上げられない状況でタイムを上げられませんでした。
特にエナ・シティでは僕だけでなくトヨタのドライバーが同じようなコメントだったので、原因をシッカリと追究したいと思います。
―― ただ、日本のファンに貴元選手の「速さ」は見せられたと思います。
貴元:スピードという部分に関しては、来年に向けて非常にポジティブな面を見せられたと思っています。
もちろん、『もっとできたんじゃないか?』とか『違った展開にできたんじゃないか』といろいろ思う所もたくさんあります。
でも、次に向けて進まないといけません。今回のポジティブな所を来年のオープニングであるモンテカルロから、今回と同じようなスピードで走り始められるよう、集中してやっていこうと思っています。