トヨタ「GRMNヤリス」世界最速試乗! 限定500台の「身近なスーパーカー」はどのくらいスゴいのか
世界最速試乗!? GRMNヤリスはどれほどの「凄さ」を秘めているのか
そんなGRMNヤリス サーキットパッケージに、何と一足お先に「筑波サーキット2000」で乗ってきました。
恐らく第三者による試乗は世界初です。事前に広報担当から「レーシングギア、フル装備で持参ください」と連絡があり、つまり全開走行によるチェックというわけです。
筆者(山本シンヤ)はリアルなGRヤリスオーナーなので、進化を喜ぶ一方で、「別物だったらどうしよう?」といった複雑な心境で現場に向かいました。
いつもと同じように、試乗前にクルマの周りをチェックします。変更部位はそれほど多くないのですが、追加のエアロパーツと10mmのローダウン&タイヤサイズ変更により、より凛々しく、より大地を掴んでいる印象と共に、解る人には解る特別なオーラを感じます。
ドアを開けて運転席に座ります。レカロ製フルバケットシートはGRヤリスよりヒップポイントが約20mm低い設定になっています。
座った印象は、スポーツモデルにしては高めのGRヤリスよりも自然に感じました。アルカンターラ巻きのステアリング/シフトノブの触感の良さ、専用デザインのメーターによる特別感はGRヤリスオーナーとしては「流用したい」と思うくらいです。
与えられた試乗時間は20分、早速コースインです。実は「1周目は様子見かな!?」と思っていましたが、1コーナーから1ヘアピンまでのわずかな距離で「コイツは凄い」、「コイツは信頼できる」と直感、そこから先はほぼ全開走行となりました。
エンジンはトルクアップに加えて過給ラグも皆無で、アクセル操作により忠実になっています。
シフトはよりカチッとしたフィールと正確性が高められており、素早い操作でもミスシフトは皆無です。
実はシフトダウン時に回転を合わせる「iMT」の制御も変更されおり、全開走行時はむしろ積極的に活用したいと思うくらいお利口な制御になっています。
ギア比&ファイナル変更も効果的で、筑波は3-4速のみでOK(裏ストレートエンドでレブリミッターに少し当たる)。常にトルクバンドをキープしているので、どこからでもストレスなく踏んでいけます。
フットワークはどうでしょうか。ステア系はGRヤリスよりも操舵力が軽めの設定ですが、路面からの情報はより解りやすくなっています。この辺りは第3世代EPS制御が水平展開されているのでしょうか。
フットワークはGRヤリスに対して操作に対する正確性が増しています。例えるならば各パーツの精度が高まったかのような精緻さで、より対話がしやすいうえに、より細かなコントロールも可能となっています。
ピーキーさは皆無で、むしろGRヤリスよりも操作に対する反応は自然なため「ダイレクトなのに穏やか」という不思議な感覚です。
コーナーを曲がる一連の動作を見ていくと、ターインは四駆とは思えない回頭性の良さ、コーナリング中は対角ロールが抑えられ、まるで前後重量配分が変わったかのように4つのタイヤを上手に使って路面に吸い付いて曲がるような安定感。
そしてコーナー脱出時は四駆のトラクションをより実感できるなど、まるでトルクスプリット4WDのように前後駆動配分がアクティブに変化しているような、「四駆らしからぬ」と「四駆らしさ」が上手にバランスされた走りを実現しています。
その結果、どのコーナーも「曲がれるかも」ではなく、常に「曲がれる」と確信しながら走れました。
乗り心地に関してはサーキット路面だけの走行なので断定はできませんが、脳天を突き破るような硬さではなく、しなやかな硬さといった印象です。
縁石を跨いだ際にも跳ねるような感じはなく吸収性も高かったので、想像している以上に快適じゃないかなと予測しています。
FF横置きベースの4WDですが、ブレーキはフルブレーキング時に荷重が前に移動してもリア荷重が逃げにくく、RRのポルシェ「911」のように四輪で上手に制動している印象です。
この辺りはリアのスタビリティアップに合わせたブレーキバランスの最適化(リアをシッカリ効かせる)に加えて、リアウイング追加により空力操安も効いているはずです。制動力や耐フェード性などは機能的にはまったく問題ないと感じました。
ひとつ気になったのはペダルタッチで、ハンドリングで感じた印象と比べるとやや柔らかめ。
個人的にはペダル周りがもう少しカッチリとしたフィーリングのほうが全ての操作系のバランスは整うかなと思いました。
ちなみに筆者のベストタイムは1分4秒前半でしたが、もう少しコースに慣れ(実は1年半ぶりの走行)、クルマの特性をより理解できたら1分3秒代も夢物語ではないなと。恐らく、プロドライバーであれば、あと1秒近く短縮できると思います。