存在感はヘビー級! V12搭載の4座クラシック・フェラーリってどうなの?
V型12気筒エンジンを搭載した4シーター・グラントゥリズモ(GT)の魅力は、昔から一部のエンスージアストにとっては格別のもの。イタリア的「ドルチェ・ヴィータ」を体現した華やかさと、スポーツカーに相応しい動力性能。そして長距離のドライブにも好適な、実用的な室内レイアウトを求める往年の富裕層にとって、フェラーリのフラッグシップたるべきモデルは常に2+2のV12グラントゥリズモだった。
そんな中でも今からちょうど半世紀前、1972年にデビューしたフェラーリ「365GT4 2+2」は、ファミリーユーズに供することもできる2+2フェラーリの代表格といえるだろう。
365GT4 2+2の話題に入る前に、まずはひと世代前の先達「365GTC/4」について説明しておきたい。

●実用的なリアコンパートメントを持った、初めてのフェラーリとは?
その雄大な体躯から「クイーン・メリー」の愛称が授けられた「365GT 2+2」の後継車として1971年に誕生した365GTC/4は、4座席フェラーリとしては初めてVバンク当たりDOHCのシリンダーヘッドが組み合わされたほか、ピニンファリーナによるスタイリングもウェッジシェイプ+ファストバックのスポーティなものとなる。
ところが、2500mmという2+2には短いホイールベースのせいか後席スペースは最小限。そのためかセールスは振るわず、わずか18か月・500台の生産に終わってしまった。
その反省を踏まえて、翌1972年のパリ・サロンにて本格的4シーターGTとして誕生したのが、365GT4 2+2だった。2700mmまで延長されたホイールベースを生かした上に、フォーマルなノッチバックスタイルとされ、類まれなエレガンツァと高い実用性を両立したモデルである。
そのかたわらV12エンジンは、365GTC/4譲りの4.4リッター・4カムシャフトで、最高出力は340psを発生。5速MTのみが組み合わされ、パフォーマンスでは365GTC/4から大きく後退することはなかった。
ボディデザインを指揮したのは、当時ピニンファリーナに所属していた名デザイナー、レオナルド・フィオラヴァンティとされる。そして、彼が今なお自身の傑作と称するピニンファリーナ製クーペボディは、同時期のピニンファリーナ作品であるフィアット「130クーペ」やロールス・ロイス「カマルグ」など、アルド・ブロヴァローネやパオロ・マルティンら、ピニンファリーナの名だたるスタイリストたちとともに構築したデザイン哲学を反映したものといえよう。
インテリアに目を移せば、ダッシュパネルやコンソールに「クイーン・メリー」こと365GT 2+2以来となるウッドキャッピングを施すなど、365GTC/4でいったんは放棄した、高級グラントゥリズモとしてのラグジュアリー性も獲得しようとしていたことがわかる。
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ところでこの時代のフェラーリでも、スポーティなベルリネッタモデルはモデナの「スカリエッティ」で架装されていたのだが、これらゴージャスなGTはデザインワークを担当したピニンファリーナが、自らコーチワークまでおこなうのがならわしだった。トリノ近郊に設けたワークショップにてインテリアも備えた車体を架装したのち、すべてがマラネッロのフェラーリ本社工場に送られ、機械部品の組み立てが完了することになっていたのだ。
1976年になると、365GT4 2+2はV12エンジンを4.8リッターに拡大した「400GT(5速MT)/400AT(3速AT)」に発展。1972年から1976年の間に製作された365GT4 2+2は525台だったといわれている。
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