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昭和の男子が憧れた2座席レーシングカーに注目!! アバルトの本気レーシングカーが5000万円オーバーで落札

アバルトの歴史が認められた納得の落札価格とは?

 今回RMサザビーズ「PARIS」オークションに出品された、1969年のアバルト2000スポルト・ティーポSE 010シリーズ1は、ヒルクライム競技で活躍したヒストリーのある個体という。

2026年まで有効なFIAヒストリカルパスポートが備わっているので、格式あるヒストリックイベントにも参加可能だ(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
2026年まで有効なFIAヒストリカルパスポートが備わっているので、格式あるヒストリックイベントにも参加可能だ(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 ヒルクライムとは、その名のとおり封鎖した公道などの登坂ワインディングコースを駆け上がるモータースポーツ。美しい自然を舞台としたダイナミックなレースは、とくにヨーロッパ大陸では第二次大戦前からサーキットレースにも負けない人気を誇り、1960-70年代には国際自動車連盟(FIA)によるヨーロッパ選手権も開催されていた。

●ハンマープライスは5000万円オーバー!

 そしてこの2000スポルト、シャシナンバー「SE010-0018」のファーストオーナーとなったフランスのレーシングドライバー、アラン・フィンケルスタインが入手したのも、ヒルクライムのFIAヨーロッパ選手権およびフランス国内選手権にエントリーするためだったという。

 フィンケルスタインは、1969年シーズンと1970年シーズンの「シャンピオンヌ・ド・フランス・ド・ラ・モンターニュ(Championnat de France de la Montagne:フランス・ヒルクライム選手権)」に#0018とともに正式参戦。1969年シーズンの年間タイトル争いでは総合3位、翌70年シーズンは総合6位に食い込む健闘を見せた。

 ところが、この時期からシングルシーターのレースカーがヒルクライム選手権にも現れたことから、相対的に競争力を低下させたアバルト2000は第一線を退くことになる。

 そののちSE010-0018は、同じくヒルクライムドライバーのジャン=マリー・ポルジエが、1970年後半から1971年初頭にかけた時期に入手。1971年のフランス国内選手権に参戦し、1971年6月20日には「コース・ド・コート・ド・サント・アン(Course de Côte de Sainte Anne)」でクラス2位、総合14位を達成した。

 しかし1971年シーズンの閉幕後、ポルジエは有名なフランスのヒルクライムチャンピオン、ピエール・モーブランにSE010を売却。この時代に撮られたレース写真をみると「Maublanc Racing Service(モーブラン・レーシングサービス)」のレタリングが描き込まれたシリーズ2用のフロントカウルを装着したことがわかる。

 そして1976年5月8日には、ジャン・ロシェがモーブランからSE010-0018を譲り受けることになる。ロシェはその後40年以上にわたって所有する一方、定期的なサービスおよびメンテナンスを怠らなかったようだ。1986年には一定の修復を受けていることが写真に残されており、その後いくつかのモータースポーツイベントに参加したことも記録されている。

 そして2016年、ロシェの息子は、車両のオリジナリティを維持することを目的として、このヒルクライムのレジェンドにもとの雄姿を取り戻させる決心をした。

 ナンバー#0018が刻まれたシャシは取り外され、ドライブトレインとランニングギアはオーバーホールとリビルドを実施。また、輝きを失っていたボディはオリジナルと同じ塗料でリペイントがおこなわれ、車両に添付されるヒストリーファイルのドキュメントと写真で記録されているように、作業は2017年の夏に完了した。

 このフルレストアののち、#0018は2017年8月にスイスの「オロン・ヴィラール(Ollon-Villars)」ヒストリック・ヒルクライム、2018年にはフランス国内で「モンテ・デ・レーゲンデス・デュ・コル・ド・ラ・ファウシル(Montée des Légendes du Col de la Faucille)」にもエントリーされている。

* * *

 今回のオークション出品にあたり、1976年当時の販売証明書やFFSAテクニカルパスポート、2026年まで有効なFIAヒストリカルパスポート、雑誌記事のコピー、レース履歴チャート、およびレストア時の写真など膨大なドキュメントが車両とともに添付されていたことは、この個体の正統性を裏づける重要な要素となっていた。

 このアバルト2000スポルトSE010に、RMサザビーズ欧州本社が設定したエスティメートは35万~40万ユーロ(邦貨換算約4700万〜5380万円)。そして実際の競売では、エスティメート上限に限りなく近い39万8750ユーロ、日本円に換算すると約5370万円で落札となったのだ。

 近年のヨーロッパでは、イタリア・ボローニャ近郊で開催される「ヴェルナスカ・シルヴァーフラッグ」を筆頭に、クラシックカーが本気で峠に挑むヒルクライムイベントがとても盛んになっている。

 この日落札されたアバルトSE010も、これからどこかのイベントに出場して、ギャラリーの拍手喝さいを浴びることになるかもしれない。

Gallery 【画像】昭和の男子が憧れた2座席レーシングカー「アバルト2000スポルト」を見る(26枚)
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