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世界に1台のフェラーリは「道ならぬ関係」の女性へのプレゼントだった! サウジ王子がミケロッティに作らせた跳ね馬とは

サウジアラビア王家に属するプリンスが特別注文した跳ね馬

 逝去から40年以上の時を経て、もはや我々の記憶から薄れつつあるのだが、ジョヴァンニ・ミケロッティといえば、20世紀後半の自動車デザイナーの中でもとくに傑出したデザイナーのひとり。彼の才能は、フェラーリについても大いに発揮されていた。

 自社「ストゥーディオ・ミケロッティ」名義で製作されたフェラーリは、1960年代後半から製作されたワンオフ車両など少数にとどまる。しかし、1950年代末にピニンファリーナがフェラーリのデザインワークをほぼ独占する以前に、「トゥーリング・スーペルレッジェーラ」と勢力を二分していた「ヴィニャーレ」社のデザイン業務は、アルフレッド・ヴィニャーレの盟友であるジョヴァンニ・ミケロッティが事実上すべて担当。またスイスのコーチビルダー「ギア・エイグル」製作のフェラーリたちの多くも、ミケロッティのデザインに基づいてボディが架装されていた。

シャープな形状とされたラジエーターグリル(C)2021 Courtesy of RM Auctions
シャープな形状とされたラジエーターグリル(C)2021 Courtesy of RM Auctions

●忘れ去られていたミケロッティが手がけた跳ね馬

 そして今回ご紹介する「メーラS」は、ミケロッティがデザインから製作まで手掛けた最後のフェラーリではあるものの、今やフェラーリのファンの中でも、よほどのクラシック通でもない限りこのワンオフ車両の存在は忘れ去られていた感がある。

 フェラーリ・メーラSは、1980年代初頭に中東サウジアラビアのロイヤルファミリーに属するある王子のオーダーにより、完全な一品製作で製作されたものである。

 ベース車両として選ばれたのは、この時代にもっともゴージャスなフェラーリとされていたV12フロントエンジンの2+2モデル「400i」。シャシナンバーを示すVINコードは「ZFFEB06B000041421」で、3速AT仕様だった。

 ベース車両の400iは、新車として完成した直後にマラネッロからトリノ近郊のストゥーディオ・ミケロッティ社へと移送され、到着早々に解体。当時のストゥーディオ・ミケロッティ社副社長にして、ジョヴァンニ・ミケロッティの没後デザインチームの指揮を執っていた内田盾男氏が、スタイリングからエンジニアリングに至るデザインワークを主導することになる。

 オーダーに際して、王子はすべてをミケロッティに任せるという、いかにも王族らしい鷹揚な態度を見せたそうだが、唯一こだわったのが「メーラ」という車名。それは王子が心より愛する女性の名前にちなんだものだったと伝えられている。

 オリジンである400iの面影は、ウェッジシェイプのプロポーションや低く構えたプロポーション、あるいは4灯リトラクタブル式ヘッドライトのおかげでかすかに認識されるが、そのほかについてはミケロッティ社の独創性が存分に生かされていた。

 400iよりもさらにウェッジシェイプが強められたプロポーション。シャープな形状とされたラジエーターグリルと、スリットを設けたチルト式のエンジンカウル。前後ともラップアラウンド形状とされたウインドウは、AピラーおよびBピラーをヒドゥン(隠した)スタイルとしたことから、太いセンターピラーに支持されたルーフが宙に浮いているかのような、独自のスタイリングを得ることになったのである。

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