BMWがボンドカーだった頃のアルピナモデルとは
かつてBMWには「Z8」というモデルがあった。このクルマは1990年代半ばに「Z07コンセプト」として開発がはじまり、1999年のフランクフルトモーターショーで発表されたのち、2000年に「Z8」としてデビューしている。映画『007/ワールド・イズ・ノット・イナフ』において、ボンドカーとして採用されたことでも有名だ。
生産が終了したのは2002年11月。搭載されていたエンジンはS62型5リッターV型8気筒。Sという記号がつくことからもわかるように、BMW M社が開発したものである。E39型「M5」に搭載されたエンジンと同型で、トランスミッションは6速マニュアルが組み合わされた。

●ATで操れるZ8とは
Z8の生産台数は5700台あまりといわれているが、その半数はアメリカに輸出されている。そのことからわかるのは、とくにアメリカにおいてZ8の人気が高かったということだ。アメリカでの新車販売価格は12万8000ドル。これは当時からすればかなりの高額である。ちなみに日本での新車販売価格は、約1600万円で、街で見かけることはまれだった。
そんなアメリカでの人気車であったZ8が販売終了となった2002年末、アルピナがZ8をベースとして開発をはじめたのが今回紹介するBMWアルピナ「ロードスターV8」である。
このアルピナ・ロードスターは、Z8と同じくV8エンジンを搭載しているが、実はZ8と同じものではない。そこに使われているのは、381psを発生する4.8リッターエンジンだ。
Z8に搭載されていたS62型が51.0kgm/3800rpmという最大トルクであったのに対して、アルピナが搭載したエンジンは53.0kgm/3800rpmと、トルク重視のものとなっている。
トランスミッションも、アルピナ・ロードスターV8はマニュアルではなく、パドルによる変速が可能な5速ATスイッチトロニックのみ。これはつまり、よりグランドツーリング的なキャラクターを強めたといっていい。主な市場となるアメリカでのニーズに応えた仕様だったのだろう。
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