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米国で本気で開発中の「空飛ぶ円盤」とは? なぜ月面ではいまあるドローンを飛ばせないのか?

静電気を応用することで大気がなくても飛行可能!?

 アメリカは、「アルテミス計画」で2025年以降の有人月面着陸を目指している。日本は米国主導の同計画に参加し、月の周回軌道上に構築する有人宇宙ステーション「ゲートウェイ」に物資を運ぶ新型の無人補給船や、月面ローバーの開発などで協力することになっている。

 そんな政府の宇宙開発戦略を踏まえてか、トヨタや日産といった日本を代表する自動車メーカーがJAXA(宇宙航空研究開発機構)と月面ローバーの共同開発をしている、とチラホラ発表されている。

 一方、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の航空宇宙エンジニアは、月の自然電荷を利用して浮上するホバリング・ローバーの新コンセプトをテストしていると発表した。早い話、月面探査用ドローンを開発している、ということだが、そのイメージ図はまさに「空飛ぶ円盤」だ。アルテミス計画との関連性は不明だが、ワクワクしてくる話だ。

マサチューセッツ工科大学が開発を進めている「電荷を利用し飛行する円盤」(C)Massachusetts Institute of Technology
マサチューセッツ工科大学が開発を進めている「電荷を利用し飛行する円盤」(C)Massachusetts Institute of Technology

●月面では既存のドローンは飛ばせない理由とは

 既存のドローンを改良すれば月面でも飛ばせるのではないか、と思ってしまいがちだが、普通のドローンはローターで空気を下に押し、揚力を発生させることで機体を浮遊させている。つまり、空気が薄い場所では飛行できないのだ。

 月や小惑星のような天体は、大気がないため太陽や周囲のプラズマに直接さらされ、電場が形成される。そこに研究者たちは着目した。地球では静電気で髪の毛が逆立つが、月ではこの電荷が強く、ホコリを地面から1メートル以上も浮き上がらせることができるのだという。

 NASAをはじめとした技術者たちは、空気のない天体の表面と同じ電荷を持つ「マイラー」と呼ばれる素材を使い、翼を持つグライダーを浮揚させられないか、と提案したことがある。帯電した表面は互いに反発し合い、グライダーを地面から浮かす力を持つはずだと考えたのだ。

 しかし、このような設計は小さな小惑星に限られる。というのも大きな惑星であれば、表面電荷の反発を打ち消すような引力が働いてしまうからだ。だがMITが開発しているホバリング・ローバーは、この“制約”を回避できる可能性がある。

 MITのホバリング・ローバーは、電荷を帯びた物質を照射する「イオン・スラスター」を上方向にひとつ、下方向に4つ装着。イオン・スラスターが噴射するイオンビームを使ってローバーの機体に静電気を発生させるだけでなく、地表の自然電荷を増加させる。結果として、ホバリング・ローバーと地面の間に大きな反発力を発生させる、という設計だ。

 物凄く簡略化して記すなら“静電気の反発力を活用して空中浮揚する”というアイディアだ。

 実現可能性試験では掌サイズのホバリング・ローバーが用いられた。そして、月や太陽系誕生初期の原始惑星コアの名残であると考えられている小惑星「プシュケ」(2022年8月にNASAは探査機を打ち上げる予定)のような大きな小惑星上で、イオンビームの発射がホバリング・ローバーを1cm浮上させるのに、十分な出力であるという結果を得た。ただ、それ以上の高度で浮遊させるには、さらなる研究が必要であるという。

 いつしか「空飛ぶ円盤」というロマンが、「人間の手掛ける乗り物」になる時代がやってくるのかもしれない。

Gallery【画像】ドローンの世界を一変させるか? 開発中の空飛ぶ円盤とローバーたちを見る(4枚)

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