究極のポルシェ「911」最新情報! 伝説の「959」は2億円を超えることができた?
959に払ったメンテ費用はどのくらい?
ポルシェ959は、スーパーカー的な豪華装備を満載した「コンフォート(Komfort)」仕様のほか、装備を簡略にすることで軽量化を図った「シュポルト(Sport)」仕様も少数(29台説が濃厚)が作られたとされるが、今回のRMサザビーズ「ARIZONA」オークションに出品されたのは前者のコンフォート仕様。フルレザートリムやエアコンディショナーなど、幅広いコックピットアメニティが備えられている。
●走行していないがメンテナンスはバッチリ
魅力的な「ガーズ・レッド(Guard’s Red)」にペイントされたこの959コンフォートは、運転席/助手席ともにシートヒーター付きの黒革スポーツシートを装備し、959では象徴的なグラデーション・グレーのトリムよりもスパルタンな印象が強い。
オークションの出品者は、近・現代ドイツの素晴らしい所蔵車両で知られる「テネンバウム・コレクション(The Tenenbaum Collection)」とのことながら、その初期のヒストリーは現時点では不明のまま。
しかし、エンジンは間違いなくマッチングナンバーで、熱心なアメリカの愛好家のコレクションに収まってきた10年間については、とても優れたケアを受けてきたとのことである。
2012年に現オーナーが入手したのちの贅沢なサービス履歴については、今回のオークション出品にあたって添付されるファイルにもすべて収められている。
たとえば購入直後には、フロリダ州オークランドパークの「プロトテック(Proto Tech Inc.)」にて、エンジンを降ろしたフルメンテナンスを実施。このときブレーキ、燃料システム、ディファレンシャル、ステアリングラックなど車両のあらゆる側面に対処し、合計7万7000ドル(約890万円・邦貨換算、以下同)以上の請求がおこなわれた。
プロトテック社でのサービスに続き、2013年以降はカリフォルニア州トーランスの「カラス・レンシュポルト(Callas Rennsport)」にサービスが委託されたのだが、こちらについてもすべての請求書が残されている。
2013年には、様々なサービスとクラッチ作業のために2万9000ドル(約330万円)。翌2014年にはエンジンマウントを新品に取り替えるとともに、クラッチアセンブリの交換で約1万1000ドル(約126万円)。2015年にはリアのショックシステムが組み立て直され、エンジンの主要なサービスも実行して合計3万ドル(約350万円)を超えたのち、2016年には2万4000ドル(約280万円)を超える追加作業もおこなわれている。
さらにオークション出品直前となる2021年12月には、ポルシェのスペシャリスト「カラス・レンシュポルト(Callas RenSport)」に委託して、2万600ドル(約240万円)以上に及ぶサービスを受けた。この時の作業では、959の技術的特徴である高度なアジャスタブル式サスペンションシステムが主な対象となっていた。
つまり、これらの請求額を合算したら約19万7000ドル(約2270万円)にも及ぶ。ところが、このように徹底したサービスを受けてきたにもかかわらず、カタログ作成時の走行距離は約8700マイル、約1万4000kmに過ぎない。
また、ツールキットやブックレットなどの付属品も完備しているなど、条件面ではかなり優れているかに思われる。
2012年からテネンバウム・コレクションに所蔵されているこの「959コンフォート」は、RMサザビーズ北米本社は、120万−150万ドル(約1億3800万−1億7300万円)のエスティメートを設定した。
●現在の959マーケットとして順当なハンマープライス
昨2021年秋、同じRMサザビーズ社がスイスのサン・モリッツで開催したオークションでは、今回と同じくコンフォート仕様の959が197万3750スイスフラン、当時の日本円に換算すれば約2億4410万円で落札された事例もあるが、これはカタール王室の特注で作られたその個体のヒストリーに基づく特別仕様であることが、価格上昇に大きく作用したと思われる。
一方、現在の国際マーケットを見回すと、おおむね1億2000万−1億8000万円くらいの売り物が多いことを思えば、今回のエスティメートはきわめて順当なものとも感じられるのだが、今回のオークションにおける市場の感触もおおむね同意だったようす。
最終的にはエスティメート上限を超える160万ドル、日本円に換算すれば約1億8400万円で落札されることになったのである。
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