時の流れに屈することのない不朽のデザイン
ネオクラシックこと「ちょっと古いクルマ」の何が素晴らしいかといえば、「時の流れに屈することのない永遠の何か」が、そのなかに見つかることがある、ということ。
「時の流れに屈することのない何か」というのは、走行フィールであったりメカニズムであったりなわけだが、こと「デザイン」に話を絞るのであれば、初代アウディ「TT」こそが「永遠の価値を持つ普遍的名作」のひとつだといえるだろう。

初代アウディTTは、同時代のフォルクスワーゲン「ゴルフ」やアウディ「A3」などとプラットフォームを共有した2+2クーペ。市販バージョンが発売されたのは1998年だが、市販バージョンとほぼ変わらないデザインスタディが発表されたのは1995年のことだった。
後に「自動車デザインにおける金字塔のひとつ」といわれることにもなるオリジナルデザインを作り上げたのは、フォルクスワーゲン・アウディのデザイン部長だったジェイ・メイズと、その右腕だったフリーマン・トーマスのふたり。具体的な“線”を引いたのは、ドイツ系アメリカ人であるフリーマン・トーマスだ。
初代TTのフォルムは、「アウディの前身のひとつであるDKWのモンツァというスポーツカーがモチーフとなっている」と公式ではアナウンスしている。そして世間一般においては、「無駄な装飾を排してモダニズムを追求した、国立バウハウス大学校の影響が見て取れる」的なこともいわれている。
●エクステリアはポルシェ初のクルマをオマージュしたもの⁉
だが調べてみると、もちろんそのとおりなのだろうが、実は最古のポルシェである「ポルシェ タイプ64」の影響も強いようだ。
元ポルシェ社のデザイナーだったフリーマン・トーマスは、どうやら「フェルディナント・ポルシェ博士が作った“ポルシェの原型”を現代の世に蘇らせたい」という思いを持っていたようで、前述のDKW モンツァやバウハウスの影響を受けつつも、どこかポルシェ タイプ64に似た1/4サイズのクレイモデルを制作した。
そしてそれを、フォルクスワーゲン・アウディグループの総帥だったフェルディナント・ピエヒに提案したところ、ピエヒは「そのままの形で作れ」と即決したのだという。
フォルクスワーゲン・アウディのような巨大企業では、(当然ながら)通常はこういったことはなく、社内コンペを勝ち抜いたデザインだけが量産を許される。しかしポルシェ家の直系子孫であるピエヒは、フリーマン・トーマスが作った1/4クレイモデルのなかに“ポルシェ家の確かな血”を感じた……のかもしれない。
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