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「3700万円は相場の約2倍」バブル時代のフェラーリ「テスタロッサ」が高額落札された理由とは

「テスタロッサ」としては破格のプライスだった理由は?

 1984年に発表されたフェラーリ「テスタロッサ」は、5リッターV型12気筒エンジンを搭載した、当時のフェラーリにおけるフラッグシップである。「赤いアタマ」という名のとおり、エンジンのカムカバーは赤に塗装されていて、日本仕様者は380ps、欧州仕様者では390psを発生。最高速度300km/hを実現できる、まさにスーパーカーだった。

イエローに塗り替えらえていたボディは、工場出荷時のシルバーに戻されている(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
イエローに塗り替えらえていたボディは、工場出荷時のシルバーに戻されている(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 発売当時の日本は、バブル景気のまっただ中。発売直後から中古車市場価格が跳ね上がり、一時は5000万円で取り引きされていたという話だが、当時の自分の生活からあまりにかけ離れていたために、本当にそんなプライスが付いていたのかどうかはわからない。ただ、当時そうした話を聞いたことがあるというのは事実だ。

 そんな高額なプライスで取引されていたにもかかわらず、バブル時代には六本木や赤坂で何度もテスタロッサは見かけていて、「世の中にお金持ちってのはいるもんだなぁ」と思っていたものだ。

●世界に6台のモノスペッキオ

 そんなテスタロッサには、希少なモデルが存在する。今回RMサザビーズオークションに出品されたこのテスタロッサがそうだ。1984年から1986年まで製造されたテスタロッサの初期型は、左ハンドルの運転席側ミラーが高い位置に装備されているのが特徴。これが中期型になると、Aピラーの付け根に取り付け位置が変更される。助手席側のミラーは、初期型も中期型も、Aピラーの付け根が取り付け位置となる。

 しかしこの個体のミラーは、運転席側のみで、助手席側ミラーは存在しない。これは「monospecchio」、イタリア語でシングルミラーというそのままのネーミングとなる特別仕様車で、製造されたのはわずか6台でしかない。そのうちの1台なのである。

 もともとのボディカラーは、写真のアルジェント、つまりシルバーである。ところが、この個体の以前のオーナーは、ジャッロ──つまり黄色にオールペンしていたそうだ。なにを考えてジャッロにしたのかは、いまとなっては不明だ。

 その後、アルジェントに戻されたこの個体は、センターロック式のマグネシウム製ホイールや、インテリアのロッソレザーは新車当時のままなので、現在はほぼオリジナルといっていい状態になっている。

 おもなサービス履歴で注目したいのは、2008年におこなったマラネロのサービス部門によるギアボックスのリビルトを含んだ重整備である。このときの請求額は1万7000ユーロ(邦貨換算約220万円)。さらに2016年には、8000ユーロ(邦貨換算約100万円)を掛けて整備をおこなうなど、定期的にメンテナンスを受けている。

 当然のことだが、フェラーリ・クラシケ認定も受けていて、エンジンやギアボックスなどのナンバーも新車当時と同じマッチングナンバーである。現在の走行距離は5万2526kmで、取り扱い説明書やツールキットなども付属している。

内装は、新車当時のままのオリジナルコンディションを保っている(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
内装は、新車当時のままのオリジナルコンディションを保っている(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 そんなモノスペッキオのテスタロッサ、エスティメートは11万−15万ユーロ(邦貨換算約1400−1900万円)であったが、実際のハンマープライスはエスティメートの最高額の約2倍近い28万6250ユーロ(約3700万円)だった。昨今のテスタロッサのオークションマーケットでの落札価格としては高額であるが、それはこの個体に関しては当然であるといえる。

 まず第1に、モノスペッキオ自体が市場に出ることはほとんどない。次に、フェラーリ・クラシケ認定車であること──つまりフェラーリがこの個体はオリジナルコンディションであると認めたものであるということ。そして、ボディカラーがテスタロッサにありがちなロッソではなく、アルジェントであるということ。

 おそらく落札したオーナーは、コレクションとして保管するのだろうが、たしかにその価値があると思わせるクルマだ。

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●The Guikas Collection — 1986 Ferrari Testarossa

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