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BEVのバッテリーは「充電」ではなく「交換」!? 中国で広まりつつあるテスラも諦めたバッテリー交換事業とは

あのテスラでさえ失敗したEVの“バッテリー交換”

 アメリカ発のEVバッテリー交換事業「ベタープレイス」は一時期、相当な話題を集めた。これは、BEV所有者は車体を所有はするものの、バッテリーはベタープレイスのものを“共有”し、利用量に応じてバッテリー代を支払うというものだった。

 BEVが直面している最大の難関は充電時間の長さといえよう。もちろん、技術革新とともに充電時間の削減は進むと思われるが、当面の合理的な解決策としてバッテリーの「交換」が提唱された。日本でも2009年から実証実験を開始したが……、その後、ベタープレイスは2013年に法人の解散と清算を発表した。

 ネックだったのは、自動車メーカーにベタープレイス専用のバッテリーや取り付け部分の共通化を要請しなければならなかったことと、車種ごとに繊細なバッテリーセッティングを要することが破綻の一因として挙げられたようだ。

 そして現在、前代未聞の株価爆上げをしているテスラも一時期、バッテリー交換所の設置で盛り上がっていた。しかし、結局のところ2013年にアメリカで1か所設置しただけ。そこも1年足らずで閉鎖した。ユーザーからの需要がなかったというのが表向きの理由だったが、どうやら複数個のバッテリーを常時保管するコストが割に合わなかったようだ。

eバイクはふたつの筒型バッテリーを搭載。満充電時の走行可能距離は150kmほど。スペック上の最高時速は90km/hにおよび、回生ブレーキを備えている(C)GOGORO(YouTube)
eバイクはふたつの筒型バッテリーを搭載。満充電時の走行可能距離は150kmほど。スペック上の最高時速は90km/hにおよび、回生ブレーキを備えている(C)GOGORO(YouTube)

●バッテリー交換所は、中国で花開くか!?

 一方、中国ではベタープレイスと同じようなBEV向けのバッテリー交換所が本格化してきている。ただし、どんなBEVにも対応しているわけではなく、自社のBEVのバッテリー交換のみに対応しているようだ。

 ボルボやロータスなどを傘下に収める中国の吉利汽車は、2017年からバッテリー交換所の展開を発表。2020年9月からバッテリー交換所を順次、開設している。そして、2025年までに5000か所で展開する目標を掲げている。

 また、新興BEVメーカーである上海蔚来汽車有限公司(NIO)は、中国石油化工集団公司(シノペック)と共同で、すでに500か所のバッテリー交換所を展開しており、2025年までには4000か所で展開すると発表している。

 アメリカでは伸び悩んだバッテリー交換所だったが、中国ではアグレッシブなまでにバッテリー交換所の設置が進められようとしている。アメリカ勢の失敗から学びがあったのか、なかったのか、しばし要注目だ。

●電動バイクでは成功例もある

 ちなみに電気自動車ではないが、いわゆるeバイク(電動バイク)の世界ではバッテリー交換で成功を収めているケースがある。2015年から台湾でサービス提供を開始した、「Gogoroエネルギーネットワーク」だ。

 Gogoroは自社のeバイクを開発したことで、難なくバッテリーや取り付け部分の共通化を図った。現在では37万台のeバイクが台湾を走っており、2330か所にもおよぶバッテリー交換所で1日当たり30万個のバッテリー交換がおこなわれている。なお、Gogoroはドイツ・ベルリン、フランス・パリ、日本・石垣島でもサービスの展開をしている。その他にもつい最近、中国やインドネシアでの新たなサービス開始を発表した。

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 ところで「バッテリー交換所」という発想自体はずいぶん前から存在していたというから驚かされる。それこそ20世紀初頭、電気自動車が誕生した当初から、コンセプト自体は存在していたようだ。そして我が国、日本でも1982年に開催した東京モーターショーの紹介動画で、興味深いものが取り上げられていた。

 なんと京都市営バスにBEVが試験導入されていただけでなく、全自動のバッテリー交換所があったというではないか! バッテリー交換に要する時間はわずか80秒だった。さらに驚かされたのは、カーシェアリングの原型も存在していた、ということだ。

 約40年の月日を経て、いわゆる“コンセプト”がだんだんと具現化されていることは実に興味深い。

Gallery【画像】日本にもあったバッテリー交換所とは?(9枚)

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