「ミラノデザインウィーク」に5日間通って感じた「デザインは生きる力だ!」【イタリア通信】
実際に見て回ってベスト・インスタレーションをご紹介
それでは、今回のフオーリサローネで印象に残った会場、クリエーターを紹介したい。
●ALCOVA
先ずはALCOVA。会場の中でもっとも注目を浴びていたのは日本から参加していたデザインユニット「Spread」。緑が生い茂ったロケーションに彼らが色を添えた。コロナとの暮らしで疲れていた心に沢山の色のパワーが寄り添うように舞い、常に色が持つ力を追求しているSpreadの作品は世界中のメディアにフオーリサローネの顔として取り上げられていた。
ミラノの中心ブレラ地区では、エルメスとディオール、ブレラ植物園が素晴らしかった。
●ブレラ地区の2大ブランドのインスタレーション
エルメスは独自の世界観を展開。今年は人間のプリミティブな感覚を呼び起こしてくれた。驚き、興味、愛、美しさが揃った素晴らしい企画だった。
ディオールは会場のセレクションに注目。まずは地下の世界の17組のクリエーターによるメダリオンチェアの展示会場へ。幻想的な霧をイメージする空間で見え隠れするチェアが魅力的だった。そして外に出ると広大な庭。爽やかな秋空のもと、気分が晴れやかになった。
ブレラ植物園では植物園の中に登場する数字や文字が書いてある大小の透明のビニールの球に興味が湧いた。各植物がどのくらいの量の二酸化炭素を吸収するか球の大きさで表現。透明の大小の球が至るところにあるので大きなシャボン玉の世界の中を歩いている気分になった。環境問題を優しくデザインで表現。本来のデザインの役目をしっかり果たしていた。
そのほか、とくに気に入った展示を紹介しよう。
・ASSAB One
アーティスト集団のアトリエを解放。自由な雰囲気のなか、質の高い作品が並んでいた。定期的に表現活動をおこなっているという。彼らのようにブレない姿勢は重要だ。来年に期待。
・Universita’di Milanoミラノ大学
雑誌インテルニの30周年記念がミラノ大学で大々的におこなわれた。巨大な鳥のオブジェ、真っ白い動物群のオブジェ、巨大なソファ……など。ミラノの中央に広大な敷地を有するミラノ大学の校内でいくつもの作品が展示された。期間中、大学のキャンパスが楽しいテーマパークに変身。
・La Casa Fluida
パラッツォ・ボヴァーラで展開したLa Casa Fluida。エル・デコ・イタリアが企画した将来の理想的な家の姿。コロナを経験し、これからの家を11の部屋に分け表現。明るい色に囲まれた空間は楽しい気分になる。
・Lom
建築家集団のレンガ作りの静かな建物。自然の中に溶け込んでいる優しいロケーション。研究室もある環境の中での作業は豊かな感性を増し、次々と新しいアイデアが生まれるだろう。
・トリエンナーレ・デザイン美術館
デザインの王道の美術館。来年60周年になるミラノサローネ併催展を開催。イタリアのデザインの変遷がわかりやすく展示されていた。この中を歩いていると、イタリアのデザインの力の凄さが伝わってくる。さすがイタリア、やっぱりイタリア、素晴らしい!
同時に開催されていた巨匠エンツォ・マリの回顧展はクリエーターの方には必見。数多くの作品群を見て歩くうちに彼の偉大さが伝わってくる。
・Toiletpaper/Piscina Comunale Cozzi 市営のコッツィ・プール
今回初めてイヴェント会場として登場した1934年に完成した市営の公共のプール。まずはこのプールの大きさ、アールデコの時代がそのまま残っている内装に感動。巨大な壁一面にマウリッツィオ・カッテランとピエルルイジ・フェラーリのコンビの作品が描かれている。見応え満点。
このほか、Mohd、Palazzo Litta、palazzo Turati、Officina Milano、Super Studioなどなど、興味を惹くイベント満載だった。
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