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「ミラノデザインウィーク」に5日間通って感じた「デザインは生きる力だ!」【イタリア通信】

ミラノに「デザインウィーク」が戻ってきた!

Writer・Photographer:野口祐子(NOGUCHI Yuko)

 2021年9月4日から10日にかけ、ミラノ最大のイヴェントである「ミラノデザインウィーク」が開催された。

 ミラノデザインウィークは家具の国際見本市である「サローネ・デル・モービレ」(以下、ミラノサローネ)とミラノ市内の各地でおこなわれるデザインイヴェントの「フオーリサローネ」とのふたつで構成されている。

ミラノサローネ/スーパーサローネ (C)Diego Ravier
ミラノサローネ/スーパーサローネ (C)Diego Ravier

 この時期になると世界中から出展企業、クリエーター、学生、来場者などたくさんの人がデザインウイークを目ざしてやってくる。その間ミラノは「デザインの街」と化し、何か国もの言語が飛び交う国際都市になる。「ミラノデザインウィーク」はミラノが活性化し、大きなムーブメントが起きる重要なイヴェントだ。

 ちなみに、ミラノサローネはミラノ市中央から地下鉄で約30分のRHO(ロー)の見本市会場でおこなわれ、家具とインテリア関連の企業やデザイナーが作品を発表する場である。フオーリサローネはミラノ市内の各地でおこなわれるデザインを軸としたイヴェントであり、ここは企業、デザイナー、クリエイターの表現の場となっている。

ミラノサローネ/スーパーサローネのRHO(ロー)会場入り口風景 ミラノサローネ(C)Andrea Mariani
ミラノサローネ/スーパーサローネのRHO(ロー)会場入り口風景 ミラノサローネ(C)Andrea Mariani

●ミラノ・デザインウィーク

 今回私はミラノ市内でおこなわれているフオーリサローネを集中的に見て回った。展示場がひとつの会場に収まっているミラノサローネとは異なり、ミラノ市内全域がイヴェント会場となるフオーリサローネ。移動だけで時間が過ぎてしまう。

 フオーリサローネは1980年代に、クリエーターが表現の自由を求めてスタートした活動だ。フオーリとは「外」、「それ以外」という意味で、ミラノサローネの見本市会場のイヴェントの外(以外)でおこなわれるイヴェントなのでフオーリサローネと呼ばれ、場所選び(ショップ、ガレージ、施設、廃墟の建物、etc……)から始まるのでクリエーターの感性が十分に発揮できる大きなチャンスとなる。

 2021年は開催3か月前にミラノサローネの開催決行が発表され、それに伴いフオーリサローネも開催を決めたという。この短期間の準備での参加は誰にとっても並大抵の覚悟がないとできなかっただろう。そういうわけで見る側の私も、出展者をリスぺクトし覚悟を持ってフオーリサローネを歩き回った。

 フオーリサローネに関しては、範囲が広すぎ、個人で活動している人も多いので、実は全てを網羅し牽引している機関はあるようでない。トルトーナ、ブレラ、イーゾラ、ランブラーテ、etc……と各地区、通りごとに仲間を募り、地図を作ったり、旗を作ったりと独自の方法で宣伝・発表をおこなっている。街中の大きな施設は毎年ブランドが借り入れ、創造的なプロモーション活動を展開している。またイヴェント企画会社が独自で会場を見つけ、アーティストを集い開催するというケースも増えてきた。

 今年の特徴は、イヴェント会場がいつもの範囲よりも外に向かって広がっていること。今までは地区ごとに出展者が集まっていたが今年はロケーション選びの趣が異なり、他のイヴェント会場と遠く離れたところにポツンとある場所が目立った。

 代表的なところは、アート・デザインに特化したイヴェント企画会社ALCOVAの会場だ。ミラノの中央から地下鉄もしくはバスで現地まで行かなくてはならない、インガンニ地区の緑が生い茂る4000平米の敷地の旧軍病院をロケーションに選んだ。その敷地内に彼らが選抜した約50人のクリエーターが屋内外で作品発表。

 また、芸術家集団のASSAB Oneもミラノの中央から離れたチミアーノという地下鉄の駅付近にある彼らの活動の本拠地でイヴェントをおこなった。いずれも行くだけで時間が取られてしまう。

 その他、少し離れたところのイヴェント会場も増えてきたが、ALCOVAを筆頭に、宣伝活動よりも、良い企画、良いクリエーターを発掘することに重きを置き、「デザインの本来の在り方」を信じ、広告宣伝ばかりに頼らず、信念を持って内容重視の活動をし続けている傾向が感じられた。

 最近、バブル現象化してきたフオーリサローネ。デザインが持つ意味が見失われつつあったそんな時に彼らのように独自路線でイヴェントを展開していく姿勢は「今」まさに時代に求められているのかもしれない。

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