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「ゼロスタイル」で名を馳せた木村信也氏がBMWを手がけた! 「Soulfuel R18」の独創スタイルに痺れる

「R18」が日本人スペシャリストの手によって「Soulfuel」シリーズに

 水平対向2気筒のエンジンを搭載したオートバイといえば、BMWを思い浮かべる人は多いだろう。創業直後といっていい1923年からつくり続けているこのエンジン形式は、いまやBMW Motorradのアイコンとなっている。

 そんな水平対向エンジンを搭載した最初のモデル「R32」の発売から90年となる2013年、BMWは「RnineT」という新作を発売した。ヘリテイジ/アーバン/レーサー/ピュア/スクランブラーという5つのタイプを持つこのオートバイは、伝統の水平対向エンジンをさまざまなシチュエーションで心ゆくまで楽しむためのもの。

 そしてそのイメージをより明らかなものとするため、BMWは世界的なカスタマイザーにコンプリートマシンの製作を依頼した。それが今回紹介する「Soulfuel」シリーズのはじまりである。

  • どこか有機的で生き物のように感じる木村氏の作品は、幼少期、ウルトラマンの怪獣や昆虫に熱中したことに影響があるのかもしれない

●ゼロエンジニアリングを設立した木村氏が手がける

 Soulfuelとは、直訳すれば「魂の燃料」ということになるが、ここでは「心を燃やす」という解釈をしたい。これまでさまざまなカスタマイズのマイスターが、おのおののコンセプトに基づいて、Soulfuelシリーズを製作してきた。そのマイスターの列に新たに加わったのが、木村信也氏である。

 木村氏は1992年、スバル車のカスタムパーツ開発でも知られる、株式会社プロト傘下となるカスタムバイクショップ『ゼロエンジニアリング』を設立。さまざまなモデルをつくり出し、日本はもとよりアメリカでも高い評価を受けた。

 後にプロトから独立してアメリカへと移住し、チャボエンジニアリングを設立。現在も旧車だけではなく、新型車をベースとした、オリジナルマシンをつくり続けている。

 そんな木村氏が手掛けた「The Wal」と名付けられたオートバイは、セミカウルを装備したものとなっている。ハンドルバーは幅を20センチほど短くし、15センチ下げることでライディングスタイルを引き締め、シートポジションを後方へと下げるためにタンクを延長。ボディカラーはブロンズ粉体塗装を施した上で、ハンマーで叩くことで質感を向上させている。

  • カリフォルニアでチャボエンジニアリングを設立し、唯一無二のカスタムバイクを製作し続ける木村信也氏

「ベースとなっているのは、私が手がけたなかでも最新・最高のエンジンを搭載した『R18』です。すべての始まりは、ドイツにあるBMW Motorrad R18の開発チームを訪れたことでした。2021年2月、カリフォルニアでスタンダードなR18を数百km走らせ、このバイクのキャラクターを知り、自分なりのR18の解釈ができたことから、カスタマイザーとしての活動のすべてを注ぎ込むことができました」と木村氏は語る。

「このR18は、すべて自分のためにつくったものです。伝説のボクサーエンジンを感じながら、長距離を走れるようにしたかったのですが、市販のR18に乗ってみて、フェアリングを付け、もう少し前を向いたデザインにしたほうが、自分の体格や乗り方に合うのではないかと思いました。

 フレーム、ホイール、タイヤはもちろん、サスペンションやブレーキなどは、変更する必要性を感じませんでした。ライディングポジションは、フットレストの位置を2インチほど後ろに下げ、足の位置をより柔軟にしました。同時に、ハンドルを下げ、シートも自分の好みに合わせて変更しています。シートクッションも私がデザインして、日本のBACKDROP Leathersで手づくりしています。BMW Motorradをはじめ、このプロジェクトをサポートしてくれたすべての人に感謝しています。私にとって、とても貴重でインパクトのある経験でした」

* * *

 R18をベースにオリジナリティあふれるマシンづくりをおこなったのは、ローランド・サンズ氏、ダーク・オーラーキング氏に続く3人目となる。BMW Motorradが選んだ世界的なカスタマイザーとして、その名に恥じない完成度の高さを見せるこのThe Walは、旧車だけではなく最新のマシンであっても個性的な楽しみかたができるという、好例といえるものだろう。

Gallery【画像】有機的なデザインが特徴の「The Wal」とは(20枚)

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