新型「ゴースト」に「ブラック・バッジ」誕生! ダーク・サイドの頂点を極めるロールス・ロイスとは
内外装をどのようにしてブラック・バッジ化したのか
新型ゴーストは、発売から12か月間で世界中から3500台以上の受注を獲得し、ロールス・ロイス史上もっとも急速に売れたプロダクトのひとつになったという。
このクルマは、ミニマリズムと純粋さを徹底的に追求。ロールス・ロイスのデザイナーによって「ポスト・オピュレンス」と名付けられたこの美しさの追求は、リダクション(削減・縮小)とサブスタンス(実質)を特徴としている。そのために優れた素材を厳選して使用し、控えめながらも知性を感じさせるデザインとされた。
●ダーク・サイドに立つ破壊的な「ゴースト」
ところが新型ゴーストの「ポスト・オピュレンス」には賛同しつつも、ミニマリズムの一般論には飽き足らず、ゴーストというモデルの破壊的な側面を引き出そうとする購買層が明らかに存在することが判明。
そこで「ブラック・バッジ・ゴースト」はこのようなカスタマーの要望を反映し、ポスト・オピュレンスのダーク・サイドに立つ、極限状態のミニマリズムを表現するクルマとして誕生したとのことである。
エクステリアにおけるブラック・バッジ最大の特徴、「パンテオン」型ラジエーターグリルや「スピリット・オブ・エクスタシー」のダークティント仕上げ「ミラー・ブラック・クローム・フィニッシュ」は、もともとのクロームメッキ工程に特殊なクローム電解液を導入し、ステンレス・スチール製の下地に共析させてダーク仕上げとしている。表面の最終的な厚さは、髪の毛の100分の1に相当する1マイクロメートルに過ぎないという。
そしてこのダークなアピアランスの仕上げとして、足もとは「ビスポーク21インチ・コンポジット・ホイール・セット」によって引き締められる。
ブラック・バッジ・ゴースト専用のデザインが施されたホイールは、そのバレル部分に22層のカーボンファイバーを3方向に交差させて配置したものを使用。リムの外周で折り返すことによって、合計44層のカーボンファイバーとなって強度を高めている。
また3D鍛造アルミニウム製ハブは、航空宇宙産業で使用するグレードのチタン製ファスナーによってホイールリムに固定され、現代のロールス・ロイスではおなじみ「R-R」のモノグラムが常に直立するフローティング・ハブキャップを取り付けて完成される。
一方、インテリアでもブラック・バッジ化は余念がなく、カーボンファイバーとメタリックファイバーを使ったダイヤモンド・パターンの複雑かつ繊細な生地が、グッドウッドの職人たちの手によって生み出された。
インテリアを構成するパーツは、ベース部分に複数のウッド・レイヤーを圧着させ、ベース層の最上部にはブラックのボリバル・ベニアを使用。これは、そののちに加工されるテクニカルファイバー層のための暗色の基盤となる。
そして樹脂コーティングされたカーボンファイバーと、それとは対照的にメタル・コーティングされた糸をダイヤモンド・パターンで織り込んだ生地を、手作業で部品との位置を合わせて貼り付け、立体感を演出している。
さらに顧客のオーダーに応じて、セパレート型リアシートのテクニカルファイバー製「ウォーターフォール」部分には、一連のブラック・バッジのモチーフである数学記号「レムニスケート」があしらわれる。これは、かのマルコム・キャンベル卿が、かつてロールス・ロイス社製航空エンジンを搭載して水上速度記録を樹立したモーターボート「ブルーバードK3」に掲げられたシンボルとされている。
さらにグッドウッドのデザインチームは、インテリアの金属パーツの光度を落とすために「物理蒸着法(PVD)」を採用して暗色化を図ったほか、車載クロックも指針の先端および12時、3時、6時、9時のアワーマークだけを落ち着いたクローム仕上げとするなど、ブラック・バッジ・ゴーストの「ノワールな」雰囲気をさらに高めるために様々な方策を編み出しているとのことなのである。
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ロールス・ロイス社のプレスリリースのメインタイトルに「最高にピュアなブラック・バッジ」と記される「ブラック・バッジ・ゴースト」は、新型ゴーストの成功と野望をさらに推し進めるかたわらで、今後のブラック・バッジ・ファミリーのデザインにおける指標となることも間違いのないところ。
まずは日本に上陸して、その雄姿を目の当たりにする日が楽しみでならない。
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