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「サーキットの狼」世代のヒーロー「ディノ」と「911カレラRS」を比べたら2000万円以上差が開いていました

『サーキットの狼』世代に刺さる「ディノ」と「911カレラRS」とは

 ロータス「ヨーロッパ」を駆る風吹裕矢の活躍や、ドライビングテクニック、そしてドライバーとしての成長を描いた、池沢さとし先生の漫画『サーキットの狼』。リアルタイムで読者だった筆者の、当時の捉えかたでいえば、街では見かけないかっこいいクルマの走っている姿を見ることができる、乗り物好きに刺さる漫画だった。掲載誌は少年ジャンプ。スーパーカーブームの火付け役になった作品としても知られている。

 そこに登場するクルマは、まさしくスーパーカーばかりだった。当時小学生だった筆者のまわりで人気があったのは、裕矢のライバルである早瀬左近のポルシェ「911カレラRS」や、沖田の「ディノ246GT」だった。

 もちろん、裕矢のロータス・ヨーロッパも人気はあったが、なにが原因だったのだろうか、話をしていてもカレラRSやディノのほうが盛り上がり、そのうちにランボルギーニ「カウンタック」やフェラーリ「512BB」といった、エキゾチックなクルマに興味が移っていったことを記憶している。

 とはいえ、それから40数年経ったいまでも、いわゆる73カレラや、246GTを見かけると、気分が高揚してしまう。幼いころの刷り込みは、人生の終盤を迎えても消えないのだなぁなどと、諸行無常を感じる今日この頃である。

 なぜいきなりこんな話をしたのかというと、つい先日、RMサザビーズオークションに73カレラとディノ246GTが出品されていたからだ。

  • 漫画『サーキットの狼』では、主人公の最大のライバルとなる早瀬佐近の愛車として登場(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●1973 ポルシェ「911カレラRS 2.7ツーリング」

「911カレラRS2.7ツーリング」は、1966年に登場した「911S」をベースに、レースにおける競争力を高めるためにつくられたもの。911Sを軽量化し、2.4リッターだったエンジンは2.7リッターに排気量を上げ、エクステリアも空力を意識しているのが特徴となっている。生産台数は1580台といわれていて、この個体はその中の1台だ。

 シャシナンバー「0983」というこの個体のヒストリーは、1973年4月1日に、ドイツ・シュツットガルトにあるディーラーに納車されたあと、1979年に日本に輸出され、2009年まで保管されていたことがわかっている。

 その後、ポルシェの権威であるマンフレッド・フライジンガー氏がこの個体を発見し、購入してドイツへと持ち帰っている。ドイツに到着した後、2010年から2011年にかけてフルレストアされ、ポルシェファクトリーの証明書を取得。新車時に搭載されていたエンジンも2015年にオークションで発見され、それを搭載した状態で2017年に現オーナーへと売却されている。

 装備はレザーレットとコーデュロイのスポーツシートや、運転席と助手席のヘッドレスト、フォグランプ、格納式のアンテナ、3点式シートベルトなど。この中には、新車当時オプションだったものも含まれている。

  • 漫画『サーキットの狼』では、警察官を辞めてレーサーになることを決意した沖田がステアリングを握り、公道グランプリに出場する(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●1971 フェラーリ「ディノ246 GT」

 一方ディノ246GTは、「206GT」の後継モデルとして開発されたものだ。206GTよりもホイールベースを延ばし、エンジンを2.4リッターとすることでパワーアップしたこのモデルは、1969年から1974年の間に、タルガトップの姉妹車、GTSと合わせて3700台強が生産されたといわれている。

 シャシナンバー「0220」というこの個体、ティーポ607Mシリーズは、246GTの3番目のモデルとして497台が生産された中の1台だ。1971年に製造され、イタリア・フィレンツェ近郊のディーラーに納車されたのち、1980年代にはアメリカに輸出されている。

 その後、スイスのコレクターが所有していた2012年に、10万スイスフラン(約1200万円)以上を掛けてフルレストアされている。その内容は、ボディの修復やリペイント、ダークレッドのパイピングを施したブラックレザーインテリア、ベアリング交換なども含む駆動系のリフレッシュ、タイヤとホイールの交換など。

 ボディとシャシ、エンジン、ギアボックスがオリジナルのものである、ということがはっきりしていることもあって、希少性はより高くなっている。

* * *

 そんな2台が、はたしていかほどで落札されたのか。

 まず911RSは、51万1250スイスフラン(約6135万円)がハンマープライスだった。

 そしてディノ246GTは、33万6875スイスフラン(約4040万円)で落札された。

 古き良きスポーツカーの市場流通価格が高騰しているいま、このハンマープライスは妥当なものといえるのかも知れない。

 スーパーカーブーム時代に少年だった人の中には、73カレラやディノを「大人になったら買うんだ」と思っていた人も多いだろう。しかし、大人になってもなかなかハードルが高くなってしまったという現実を、はっきり突きつけられてしまった今回のオークション結果であった。

Gallery【画像】スーパーカーブーム時代に誰もが憧れたクルマとは?(35枚)

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