オークションで1億円以上は必至! ポルシェ「904GTS」は実用性も兼ね備えた名車だった【THE CAR】

ポルシェの911ラインナップだけでなく、「718ケイマン/ボクスター」を筆頭に「マカン」や「カイエン」「パナメーラ」にも設定され、人気を博しているグレード「GTS」だが、その始祖となる「904GTS」は、いったいどのようなコンセプトで生まれたクルマなのだろうか。

オールマイティ、あるいは文武両道

 発売当初、「カレラGTS」というシンプルな名称とともにデビューした904は、ポルシェ首脳陣の見込みどおり、世界スポーツカー選手権GTカテゴリーで素晴らしい強さを見せる。

軽量であることと、空力特性を考慮して設計されたポルシェ・カレラGTS

 当時の2000cc以下クラスでライバルだった「アルファロメオ・ジュリアTZ」や「アバルト・シムカ2000GT」を圧倒するが、さらに驚くべきはル・マンなどのビッグレースにおいても、フェラーリ勢やシェルビー・コブラ・クーペに続く7位入賞を果たすとともに、当然のごとく2000ccクラスを制覇。

 そしてイタリア・シチリア島の「タルガ・フローリオ」では堂々総合優勝まで獲得するなど、排気量や所属カテゴリーさえも超越してしまう。

 つまり、904はGTカテゴリーのために開発された市販車ながら、1963年シーズンまで上位の「スポーツカーカテゴリー」で闘っていた「RS718」系8気筒シュポルト・スパイダー/クーペ後継モデルの役割まで、立派に果たしたことになるのだ。

 しかも、904が強さを示したのはサーキットレースのみならず、レーシングカー上がりのスーパースポーツには似つかわしくない、本格的なラリー競技でも実力を発揮した。

 なかでも伝説となっているのが、1965年のモンテカルロ・ラリーにおいて、ポルシェとオイゲン・ベーリンガー/ロルフ・ヴュッターリッヒ組に総合2位入賞をもたらしたことだろう。ちなみに前述したヒーターは、氷点下を大きく下回ることも多いラリーのスノーステージにおける厳寒対策としても、大いに役立ったといわれている。

 結局、904は1964から1965年の2シーズンにわたって大活躍することになり、当初の予定から20台増産された120台が製作された。そして1966年シーズンに向けて、新たに50台の生産でホモロゲートできるFIAグループ6カテゴリーに照準を当てた後継車「カレラ6」こと906が製作されることになる。

 ポルシェ906では、ミッドシップやFRP製ボディなどは904から踏襲されたが、新たにポルシェ技術陣のリーダーとなった、若き日のフェルディナント・ピエヒ博士の意向によって、再び鋼管スペースフレームに戻されることになった。

 エンジニアとして純粋主義的だったピエヒ博士は、904のオールマイティな一方、どっちつかずとも取れるキャラクターに懸念を示していたという。

 しかし、906以降に開発された本格的レーシングスポーツについても、904で実証された人間工学に基づいた設計は大いに反映され、その後のスポーツカー耐久レースにおける強さを決定的なものとしたのも事実である。モータースポーツ史に輝く傑作である904は、その点についても偉大な一台と言えるだろう。

カレラGTSには、量産の4気筒に加え、6気筒と8気筒を搭載したモデルも存在する

 快適性・実用性を重視しつつも、クラスの常識を超えた高性能をまとった904。現代ポルシェが「GTS」の名跡を復活させた要因には、904から構築された哲学がいまなお受け継がれていることの証でもある。

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●Porsche Carrera GTS
ポルシェ・カレラGTS
・生産年:1964年
・全長×全幅×全高:4090×1540×1065mm
・ホイールベース:2300mm
・エンジン:水平対向型4気筒DOHC
・総排気量:1966cc
・最高出力:180ps/7200rpm
・最大トルク:20.5kgm/5000rpm
・トランスミッション:5速MT

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