400馬力対決! ジャガー「Iペイス」は、ガソリンエンジンの「レンジローバー・スポーツ」に勝てるのか!?

現在、ジャガー・ランドローバーとしてともに歩んでいる英国の2大名門ブランドから、同価格帯で400馬力というSUVを1台ずつ選び、試乗することにした。ジャガーからはBEVの「IペイスHSE」、ランドローバーからは直列6気筒エンジンを搭載した「レンジローバー・スポーツ・オートバイオグラフィー・ダイナミック」を選出し、乗り比べてみることにした。

スポーツカー作りに長けたジャガーの電動SUV

 ジャガーとランドローバーは、紆余曲折を経て、現在ではジャガー・ランドローバーとして、ともに成長への道を歩むイギリスの名門ブランドである。

 正確にはランドローバーにはさらにラグジュアリーを追求したレンジローバーが、そしてジャガーとランドローバーのいずれにも、パフォーマンスにフォーカスしたスペシャル・ビークル・オペレーション(SVO)から生み出された高性能モデルまでもが用意されているから、そのモデルラインナップはエンジンや装備の違い、すなわちグレードを含めると、日本仕様でも実に膨大な数となる。

 今回は比較的価格が近いことと、400馬力であることに加え、ニューモデルとしての話題性にも富む2台のSUVをピックアップし、ジャガー流の、そしてランドローバー流の最新SUVの走りを楽しんでみた。

ジャガー「IペイスHSE」

 ジャガーが揃えるSUVラインナップは、「Eペイス」、「Fペイス」、「Iペイス」の3モデル。ジャガーもついにSUVの市場に参入するのかと思ったのは最近のことだろうと思っていたら、そのラインナップはいつのまにか完成されていたといった印象だ。

 試乗するのはもちろん話題のBEV(Battery Electric Vehicle)SUVの「Iペイス」だ。90kWhのリチウムイオンバッテリーをアンダーフロアに搭載し、最長で438kmを走行することが可能だ。

 これならばBEVを購入することを躊躇するもっとも大きな理由ともいえる充電スポットの問題を気にすることなく、長距離の旅行に出かけることも可能だろう。参考までにIペイスには「S」、「SE」、「HSE」の3タイプのグレードが設定されているが、その性能やサイズは全車ともに共通。今回試乗したのは、IペイスHSE(以下Iペイス)で、車両価格は1183万円ともっとも高額となる。

 日本では世界に先駆けてBEVが日本メーカーから発売されていただけに、それに対するネガティブな反応は大きくはないが、それでもやはり、航続距離と充電に必要な時間は、BEVを購入する時には第一の懸案事項となる。

 Iペイスの場合は、最長の航続距離は438km。充電は最大7kWの普通充電か、最大1000kWの急速充電の選択ができるが、実際には50kWのチャデモ(急速充電の規格)を使用することがもっとも現実的な選択となるだろう。チャデモからの急速充電ならば、計算上1時間の充電では270km分のチャージをおこなうことが可能になる。

 エンジンがなくなるというのは、ここまで自動車のデザインに自由度を生み出してしまうのか。Iペイスとのファーストコンタクトで感じた印象は、今回も変わらなかった。

 Iペイスのキャブフォワードなデザインは、SUVというよりはスタイリッシュな4ドアクーペのようにも見える。全長×全幅×全高は4695×1895×1565mmと、SUVとしては車高が低いという印象で、それが全体的な造形の美しさ、そして走りへの期待感を大きく高めてくれているのだ。

 この個性的なスタイルが、長く新鮮さを失わずにいることができるのか、あるいはこれから続々と誕生してくる新型SUVのなかで埋もれてしまうのか。特別に強い個性を持つ造形は、ここに大きな難しさがある。

 バッテリーをフロア下に搭載し、前後アクスルにエレクトリックモーターを搭載。トータルの最高出力&最大トルクは、400ps&696Nmを誇り、0−100km/h加速は4.8秒である。

 満載されたバッテリーのために車重が2230kgにまで増加していることを考えれば、これは相当に魅力的なデータだ。実際に何回か加速を繰り返しても、加速感はその数字に相応の感覚だった。

 さらに印象的だったのは、Iペイスのために専用設計されたアルミニウム製のアーキテクチャーの素晴らしさだ。そもそもバッテリーを保護するために強靭なフレームが必要という事情があったにせよ、その結果得られたボディ剛性や前後重量配分の完璧さは、さすがに長年スポーツカー作りを続けてきたジャガーならではのものだ。

 そのノウハウをランドローバーに与え、逆にオフロードのノウハウをランドローバーからジャガーへ与えるというシナジーは、はたしてこれからどのようなニューモデルを生み出してくれるのだろうか。

ドライバーの集中力を高めるために、インストルメントパネルは低めとし、ラインを最小限に抑えたソフトレザー仕様で仕上げられた

 BEVというだけで、未来的な感覚を期待してドライバーズシートに身を委ねてみたが、その期待は裏切られなかった。

 ダッシュボードには10インチと5インチのデュアルタッチスクリーン「タッチプロデュオ」が据えられている。メインのモニターにはドライブに必要なさまざまな情報が表示でき、充電残量やナビ、バッテリー走行中なのか、あるいは逆にエネルギー回生をおこなっているのか等々、その表示を見るだけでBEVの楽しさに浸ることもできる。

 ちなみにこのIペイスではブレーキの回生モードには「ハイ」と「ロー」があり、ローでは一般的なブレーキとほとんど変わらないフィーリングであった。ハイをチョイスすると減速Gはかなりの大きくなるため、最初は慣れが必要だが、そのうちこの回生ブレーキでバッテリーを充電しようなどと考えるようになってしまう。

 高速道路でもワインディングでも、Iペイスは常に優れた安定感を見せてくれるモデルだ。その理由は、バッテリーの搭載位置と最適な前後重量配分にあることは間違いない。

 アクセルペダルを踏み込めば、瞬時に最大トルクが出力されるエレクトリックモーターの特性もあり、ワインディングではかなりのハイペースで連続するコーナーをクリアしていくことができる。

 Iペイスは、SUVとしての実用性も十分に考えられている。ラゲッジルームは、リアに656リッター分、そしてフロントにも27リッター分が用意されており、フロアセンターやドアポケットにも小物を収納するスペースが設けられている。

 最新のBEVでありSUVでもあるIペイスで始める新しいライフスタイル。それはとても魅力的なものだ。

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