VAGUE(ヴァーグ)

 この手の大型高級サルーンに乗るといつもそうなのだが、走り出してしばらくはクルマとの一体感をなかなか得ることができず、クルマはクルマでバラバラに動いているような感じがする。けれども新型ゴーストではそう思う時間が短い。街中では少しゴツゴツとする場面もあるのだが、それが気になるだけであっという間に身体と馴染む。

 首都高速に入ることには、すっかり寛ぎ始めていた。トンネルを下る入り口を入って本線へ。いくつかの緩いカーブを抜けるうち、極上のステアリングフィールに改めて感銘する。「プラナー・サスペンション・システム」というまったく新しい考え方の足回りの成果で、なかでも前足の「アッパー・ウィッシュボーン・ダンパー」(ダンパーのためのダンパー)構造が効いているのだ。ステアリングを切っている最中のライドクォリティの高さはカリナンやファントムを上回る。

 東名高速に入った。距離を進むにつれて車体が小さくなっていくかのようだ。同時に乗り手との一体感も増していく。下半身の輪郭がぼやけてくる感覚もまた、よくできたブリティッシュリムジンの美点である。

 その上でゴーストとは意志の疎通が普通のクルマよりも上手くいく点が嬉しい。もはや大きさは感じないから、あとはドライバーの操作に対して車体がいかに自然な動きを見せるかに尽きるわけだが、そこが素晴らしい。ドライバーズカーとして今、ロールス・ロイスが世界最高であると筆者が断言する所以である。

 加速も進路変更も追い越しも、すべてが意のままでドライバーの望みどおり、両腕や右足の動きどおりにクルマが反応してくれる。エンジン音は遠く微かだが、存在の確かさを右足を通じて常に知ることができる。スーパーカーのようにも走れるし、新幹線のような空間移動を味わうことも可能だ。

●2021年ナンバー1乗用車に当確!?

  • シートやインテリアパネルなどは歴代ロールス・ロイスと同じく、すべて特注仕様にすることができる。4人の職人が協力し1枚のパネルを組み立てるという工程は、並外れた細部へのこだわりを感じさせる(C)橋本玲

 自ら積極的にドライブしても、運転支援に大方を任せていても、急いでも急がずとも、乗り手に疲労感というものがほとんどない。京都までの450kmをこれほどあっという間に感じさせたクルマは一年ぶり、そう「カリナン・ブラックバッジ」以来である。

 京都の街中でも、その扱いやすさは想像以上だった。確かに物理的な大きさは何をするにも気がかりだ。けれどもそれは狭い駐車場に停めなければならない時や、路地で対向車が戸惑っているような時のことで、動いている限りたいていは凌いでいける。いけると思わせるだけのドライバビリティがある。持て余すということがないのだ。

 ワインディングロードでもよくできたミッドサイズのスポーツサルーンのように振る舞った。それでいて、リアシートに座れば途端に眠気に誘われる。オーナードリブンカーではあるけれども、ショーファードリブンという伝統も決して忘れない。

 新型ゴーストは早くも今年ナンバー1の乗用車に決まりそうである。

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