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「カウンタック」が1億円!! オバフェンなしが高価な理由とは?

ロッド・スチュワートが最初に手にした「カウンタック」の価値は?

 今回のRMサザビーズ「PARIS」オークション全出品リストにおいて、ある意味「目玉商品」となったのは、1977年型のランボルギーニ・カウンタック「LP400 ペリスコピオ」である。今からちょうど半世紀前、1971年にショーデビューしたプロトティーポ「カウンタックLP500」を反映した、市販型カウンタックのファーストモデルである。

●1977 ランボルギーニ「カウンタックLP400ペリスコピオ」

  • スーパーカーカードなどでよく見かけた「全部上げ」状態の「カウンタックLP400」(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

 オーバーフェンダーやエアダムスカートなど一切持たない、シンプルかつスリークな美しさ。あるいは「ペリスコピオ(潜望鏡)」なる愛称の語源となった、ルーフ上に薄い後方確認用リアウインドウと、それを収めるためのくぼみを設けるなどの独特の魅力が、LP400こそ鬼才マルチェッロ・ガンディーニの溢れる才気をもっとも鮮烈に体現したカウンタックである、という評価をもたらしてきた。

 その評価ゆえに、18年間にわたって進化しつつ生産された歴代カウンタックのなかでも、LP400は現在のクラシックカー・マーケットにおいても別格ともういうべきプライスが設定されるのが常である。その上、このほどオークションに出品された1977年型ペリスコピオ、シャシNo.1120262には、さらに評価を高める素晴らしいヒストリーがある。

 右ハンドル仕様、ロッソ・コルサのボディにベージュのインテリア、そして「タバコ」ブラウンのカーペットで製作されたこの個体は、オーストラリアのランボルギーニ代理店「トニー・デ・フィーナ」社が輸入。その際に目をつけたのが、当時オーストラリア・ツアーの真っ最中だったポップス界の世界的スーパースター、わが国でも今なお熱烈なファンが多いロッド・スチュワートその人だったのだ。

 それ以前にも3台のミウラを所有した経歴を持つランボルギーニ愛好家だったロッドにとって、この個体は最初のカウンタックとなった。そして代表作ともいうべき名盤「スーパースターはブロンドがお好き(Blondes Have More Fun)」の録音に際して、シドニーのスタジオに2週間滞在した際にもこのLP400を傍らに置いていたことは、のちに上梓された彼の自伝でも明らかになっている。

 その後、LP400はロッドの家族が住む米ロサンゼルスに移され、「RIVA 1」として再登録。彼は、ランボルギーニ社がのちのカウンタックでおこなったアップデートを段階的に施した結果、カンパニョーロ「テレダイアル」ホイールに、ワイドフェンダーやリアウイングを取りつけた「LP400S」仕様に変身してゆく。さらにその後、彼はルーフをカットオフし、いわゆるタルガトップとした。この「オープンLP400S」姿もまた、当時の数多くのメディアに登場している。

 1987年、このLP400はロッドの所有のまま英国に送られ「RMK 651R」の新ナンバーで登録。2002年まで英国に留まり、その時点でエンジンをフルオーバーホールしながら、2人目のオーナーに譲渡される。

 このあとしばらく「#1120262」は表舞台から姿を消すが、いずれかの段階で左ハンドル仕様に改造されたのち、2010年のパリ「レトロモビル」に出品。有名な個体ゆえに、大きな反響を呼んだことは想像に難くない。

 そして現在のオーナーは、2013年にパリのディーラーを介して入手。当初は世界的に有名なレストア工房「カロッセリー・ルコック(Carrosserie Lecoq)」にて、ホイールのゴールド塗装やインテリア/ボディペイントのリフレッシュを施したが、のちに方針を転換。ステアリングのみは左ハンドルを維持するものの、この個体をオーストラリアに収められた時、つまりロッド・スチュワートが見初めた新車時のLP400スタイルに戻すことを決意したのだ。

 この回復作業には、ボディワークの「バッタリア・エ・ボロニェージ」、メカニズム系の「トップモーター」など最上級のランボルギーニ専門家たちが携わり、それぞれの名声に相応しい仕事がなされたようだ。

 現在の国際クラシックカー市場における、大人気車のカウンタック。なかでも生産台数も157台と希少なこともあって、歴代モデル中でもっとも歴史的評価の高いLP400であるばかりか、同時代のアイコンとなり得る「ロッド・スチュワートが四半世紀所有した愛車」という付加価値まで添えられたこの個体に、RMサザビーズ欧州本社は75万−90万ユーロというエスティメートを設定していた。

 そして2月13日におこなわれた競売では77万5625ユーロ、日本円に換算すればもう少しで1億円に届く、約9920万円で落札されることになった。しかし、ここ数年のペリスコピオのマーケット市況を思い出すと、さしたるヒストリーを持たない個体と変わらないレベルに留まった今回の落札価格は、相当にリーズナブルともいえるだろう。

 もちろん異論はあるだろうが、今回のバイヤーはとてもよい買い物をされたと思うのである。

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