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来歴のたしかなメラクSSの評価はいかに?

 2020年10月末の「LONDON」オークションに出品されたマセラティ・メラクは、1976年から1983年ごろまでにわずか787台が生産された「SS」バージョンの1台とされる。

●1979 マセラティ「メラクSS」

  • 第一次スーパーカーブーム時代を盛り上げた、紛れもないスーパーカーの1台であったマセラティ「メラクSS」

 今回、RMサザビーズ社が用意したオフィシャルWEBカタログによると、もともとは対米輸出仕様として、1979年3月にエミリア・ロマーニャ州モデナのマセラティ本社工場からラインオフ。

 新車時のカラーコンビネーションは、オレンジがかった「ロッソ・フォーコ(Rosso Fuoco:炎のレッド)」に、対照的な黒レザーの組み合わせだったという。

 1990年代初頭、ドイツのさる著名なマセラティ・コレクションに加えられるために、ヨーロッパ大陸に帰還を果たす。そして1999年には、北米Cam-Am選手権の欧州版として誕生した「インターセリエ選手権」を闘っていたオーストリアのレーシングドライバー、ウォルター・ノヴォトニー氏に譲渡された。

 さらに2000年代を迎えたのちも、このメラクSSはノヴォトニー氏のもとにあり、FIA-GT選手権やル・マン24時間レースでも名を馳せたバイエルン州アンガーのレーシングチーム「RWSモータースポーツ」のルディ・ウォルチ氏によって、エンジンのフルオーバーホールを含む包括的なレストアが施されたとのこと。この時のコストは、エンジンにまつわる作業だけでも1万5000ユーロを超えたという。

 その後ノウォトニー氏は、このメラクSSをオーストリアの著名なスペシャリスト「ワーグナー・コレクション」に譲渡。2013年に今回のオークション出品者である現オーナーの手に引き渡された。

 そして、現オーナーのもとでも定期的にサービスを受けており、2018年にはマセラティ・ザルツブルクによる包括的なメンテナンスを実施。その費用は4293ユーロに達したとのことである。

 現在では、オリジナルのブラックレザー・インテリアに、スモーキークォーツ・メタリックのボディというシックなカラーコンビネーションで仕上げられたメラクSSは、カタログ曰く「今すぐ道路上でドライビングを楽しむ準備ができている」との由。

 カタログ写真で判定する限りにおいては、極めて良好なコンディションにあるとともに、ヒストリーも確かなマセラティ・メラクSSに対して、オンラインのバイヤーが最終的に下した落札価格は5万2800ポンド。現在の日本円に換算すれば約740万円となった。

 現役時代のライバルであるディーノ/フェラーリ308GT4はもちろん、ランボルギーニ・ウラッコの相場価格も「高止まり」してしまっている感の強い国際クラシックカー・マーケットにおける現況を見るにつけ、今回のメラクSSに下された評価はリーズナブルといえなくもないようだ。

 イタリアの名門の作、しかもミッドシップ車という「王道」的スーパースポーツながら、マセラティ・メラクとその係累は、かのスーパーカーブーム時代にはいささか地味なポジションに置かれていたといえるだろう。

 実際のところ、ディーノ/フェラーリ308GT4やランボルギーニ・ウラッコと乗り比べると、たしかにパフォーマンスやハンドリングともにマイルドで、スーパーカーに求められる「エッジィ」な魅力ではライバルには及ばないかもしれないが、快適なグラントゥリズモとしての個性は、ボーラとも共通する独特のものともいえる。

 1970年代の「第一次スーパーカーブーム時代」に輝いた1台を手に入れられるとすれば、決して悪くない投資ともいえるだろう。

Gallery【画像】エンスーなスーパーカー「メラクSS」のディテールとは(29枚)

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