VAGUE(ヴァーグ)

ジャガーのヘリテージからインスパイアされた

 2020年12月16日にジャガーは、PlayStation4用ソフトウェア「グランツーリスモSPORT」向けに開発した最新のフル電気自動車(EV)のバーチャル・レーシングカー「Vision Gran Turismo SV(以下ビジョンGT SV)」を発表した。

 このモデルは、実際にフルスケールでのデザインスタディを経てつくられたもので、最高速度255mph(約410km/h)を発揮し、完璧に磨き上げられたエアロダイナミック・デザインとレースで培ってきたパワートレイン・テクノロジーが組み込まれている。

  • ジャガーがPlayStation4用「グランツーリスモ」向けに開発した「Vision Gran Turismo SV」

 ジャガーが「グランツーリスモ」用のバーチャル・レーシングカーを開発したのは初めてではない。2019年10月に、初のフルEVスポーツカー「Vision Gran Turismo Coupé(以下ビジョンGTクーペ)」を開発、発表しており、ジャガーの伝統を受け継ぐ究極のデザイン、ドライバーを重視したインテリア、そして卓越した乗り心地とハンドリングでゲーム愛好家たちを魅了し、高い評価を得た経緯がある。

 しかし、ジャガーの開発・デザインチームにとっては、ビジョンGTクーペは、ビジョンGT SVの出発点でしかなかった。さらにパフォーマンスを向上させるためにすべてを見直し、耐久電動レーシングの可能性について再検証がなされたのだ。

 このプロセスの基盤となったのは、オンラインビデオやフォーラムで交わされるゲームプレイヤーからのフィードバックを詳細に分析することであった。また、「仮想世界テスト」と何時間にもおよぶ「実走テスト」を組み合わせることで、デザインおよび開発チームはビジョンGT SVを正確に適正化することが可能となり、完璧なゲーム用の電動耐久レーシングカーが完成したのである。

 最初にビジョンGT SVのボディワークを見てみよう。フェンダーの曲線は、ビジョンGTクーペと同じく「C-TYPE」や「D-TYPE」にインスパイアされたものであり、リアエンドのウイングは、「XJR-14」などジャガーのDNAを受け継ぐ耐久レーシングカーにインスピレーションを受けたデザインとなっている。ビジョンGT SVには、即座にジャガーと認識できるエッセンスが散りばめられているのである。

 またビジョンGT SVは、ビジョンGTクーペのエレガントなシルエットをそのまま受け継いでおり、ホイールベースは同じ2721mmのまま。ただし、全長は861mm長い5540mmに延長された。これはエアロダイナミクスを改善するためである。高速コーナリング、ロングストレートでの高速安定性を向上させるのに必要なダウンフォースを増やす目的で、新開発のフロントスプリッターとデプロアブル・リアウイングが装備されたために全長が伸びたのである。

 大型で効率的なスプリッターは、フロントアクスル上にダウンフォースを発生させ、さらにフロントバランスチャンネルの開口部が前輪の面全体に空気を送り、乱気流を減らしながら車両の後方に向かってスムーズに流れるように作用する。また、ホイールウェルを通過した空気もフェンダー内のエアアウトレットからリア方向へスムーズに流れるようになっている

 アンダーボディは完璧に密閉されており、フロントアクスルの後方に高速安定性を高めるためのキールエレメントがある。これが空気の流れを加速させて減圧し、車体の浮きを抑えながら大型のベンチュリを介して空気を排出するのである。

 ビジョンGT SVのために開発されたもっとも効率的なエアロパーツが、デプロイアブル・リアウイングだ。コンセプトから最終デザインまで、何度も試行錯誤を経て開発されたこのウイングは、メインの固定部分が車両後部を包み込み、リアハンチに溶け込むように融合しているのが特徴だ。

 このウイングは、ボディワークの不可欠な要素としてデザインされており、耐久レースに必要な空力性能も備えている。ふたつある可動式セクションは、必要に応じて速度が上がると自動的に上昇してダウンフォースを発生させ、空力抵抗を抑える状況下では規定の位置まで下降して、空力性能を最適化する働きがある。

 こうした結果、空気抵抗係数(Cd値)は0.398と、レーシングカーとしては圧倒的に低い数値を実現しながらも、483kg/200mph(約322km/h)のダウンフォースを発生させることに成功している。

Next最高出力1903馬力、最高速度410キロを実現するシステムとは
Gallery【画像】実車とCGのジャガー「ビジョンGT SV」を見比べる(27枚)

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