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むしろお買い得ともいえる「DB6」は3600万円!

「THE ELKHART COLLECTION」に出品されたもう1台のクラシック・アストンは、長らくアストンマーティン最高傑作と目されてきたDB4-5-6三連作の最終型にあたる「DB6サルーン」である。

●1966 アストンマーティン「DB6」

  • 「カムテール」、この様式の開祖であるイタリア式にいえば「コーダ・トロンカ」が採用された「DB6」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 1965年10月にロンドン・モーターショーで発表されたDB6は、DB4およびDB5から、大規模なモディファイが施されたモデルである。

 流線型の「カウルドヘッドライト」を持つフロントノーズまでの形状は、ラジエーターグリル下にオイルクーラーが新設されたこと。あるいはバンパーが左右に分割されたことを除けば、ほとんどDB5と変わらないものだった一方で、スカットルとAピラーから後方はまるで別物のスタイリングになっていた。

 まずは、後席の居住性をアップさせることを主な目的として、ホイールベースをDB4/5時代の2490mmから95mm延長された2585mmにスケールアップ。

 またルーフからテールエンドにかけては、この時代における最新のエアロダイナミクス・テクノロジーが導入されたことも、大きなトピックといえるだろう。

 1963年のル・マン24時間レースに参戦した、DB4GTベースのエクスペリメンタルカー「DP214」および「DP215」でその効果が確認された「カムテール」、この様式の開祖であるイタリア式にいえば「コーダ・トロンカ」が採用される。

 また後席のヘッドルームを確保するために、ルーフ後方はDB4からDB5へと進化した際に比べても、さらなるかさ上げが図られていた。

 しかし、リアエンドをスパッと切り落としたカムテールに至るラインを、DB5以前よりもスムーズなものとしたこと、そしてDB5に比べてフロントウインドシールドがわずかながら寝かされたことも相まって、持ち前のスポーティなプロポーションが損なわれることはないと評されていた。

 加えて、インテリアもリニューアルされ、現在の「レカロ」の前身にあたるコーチビルダー兼シートメーカー「ロイター」社による、よりモダンな形状と構造のシートが採用されたのも、特筆すべきポイントといえよう。

 ちなみにボディワークは、DB4およびDB5のような伊トゥーリング社特許の「スーペルレッジェーラ」工法ではなく、こののちのDBSでも適用される通常のアルミボディ架装法に改められていた。

「THE ELKHART COLLECTION」出品に向けてRMサザビーズ社が設定した、25万ドルー30万ドルというかなり控えめなエスティメートは、負債回収を目的としたオークションであるゆえに、確実な落札が第一義とされていた。

 また、この控えめなエスティメートの理由は、この個体のコンディションがもう1台のDB5ほどに「ミント(Mint:新品同様)」ではないことも関係していたと思われるが、やはり現在のマーケットにおけるDB6の人気が、DB5に対して明らかに低いことが大きく影響していると見て間違いあるまい。

 それでも、実際の競売ではさすがにエスティメート上限を超える34万6000ドル、手数料込みで邦貨換算約3630万円にて落札されるに至ったのである。

 1990年代までは、DB5とDB6の価格差はあまり大きいものではなかったはず。ところが、今世紀、特に2010年代に入ってこの2台を取り巻くマーケット観は、大きく様変わりしてしまったかにみえる。

 それでも、グランドツアラーとしての完成度の高さや快適な乗り心地など、DB6ならではの魅力があるのも事実。DB5との間にこれだけの価格差があるならば、むしろお買い得にも感じられてしまうのである。

Gallery【画像】違いはどこ? ボンドカーの「DB5」とその後継「DB6」を見比べる(23枚)

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