VAGUE(ヴァーグ)

ドライバーズカーとしても最上級な「ゴースト」

 110年余に及ぶロールス・ロイス(R-R)の歴史のなかで、もっとも大きな成功を収めたモデルとして認知されている「ゴースト」は、2020年9月1日にオンラインでおこなわれたワールドプレミアにて、2代目へとフルモデルチェンジを果たしたことを世界にアピールした。

 それからわずか3か月後、日本国内でメディア向け試乗会が開催されることになり、筆者は長年にわたってR-Rを敬愛してきたファン代表の心持ちとともに、いち早くテストドライブの機会を得た。

●スタイリングに負けない、美しい立ち振る舞い

  • 世界でもっとも高級な自動車ブランドであるロールス・ロイスの新型車として開発され、先代以上に豪華な装備をふんだんに投入されたロールス・ロイス「ゴースト」

 あくまで筆者の私見ながら、同時代のBMW「7シリーズ」のプラットフォームやコンポーネンツを大幅に流用していた初代の段階から、ゴーストは「正真正銘のロールス・ロイス」を実現していたと断言したい。

 加えて、デビューから10年の時を経ているにもかかわらず、これまであまり言及される機会のなかったことなのだが、初代ゴーストはドライバーズサルーンとしても最上級の資質を備えていたと考えている。

 しかしその素晴らしい資質さえも、もはや過去のことといわねばなるまい。すべてが刷新された新型ゴーストでは、さらなる高みに到達しているのだ。

 2代目となったゴーストでは、現行(8代目)「ファントム」を皮切りにSUV「カリナン」にも採用されたR-R専用の軽合金製スペースフレーム「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」の採用を前提条件として開発。シャシ持ち前のポテンシャルを最大限に活用して、極めて贅沢なクルマ創りがおこなわれることになった。

 そしてもうひとつ特筆すべきは、現行ファントムで初採用された4輪操舵システムに加えて、R-Rのサルーン史上初となる4輪駆動システムの採用により、卓越したバランスと安定性を実現したと標榜していることである。

 ただ筆者には、この4WD化についていささかの危惧があった。従来のゴーストや、それをベースとした「レイス」と「ドーン」は、ともに素晴らしいステアリングフィールの持ち主である。

 操舵輪であるフロントアクスルに、トラクションが掛かること、あるいは、そのためのパーツがもたらすフリクションが生ずることにより、透明感のあるステアフィールに「濁り」が生じてしまうのが世の4WD車の常……、と筆者は認識していたのだ。

 ところが、ワインディングに新型ゴーストを進めてみたら、そんな筆者の浅薄な不安など一瞬にして吹き飛ばされることになった。先代と同様に、路面の状況を過不足なく、しかもクリアに感じさせるとともに、ドライバー側の入力も極めてナチュラルに前車軸に伝える。

 さらに、極めて自然に作用する4輪操舵システムも加わって、全長5.5m超/全幅2mの巨体がまるでふた回りも小さく感じられる、軽妙にして洒脱なハンドリングを披露する。

 ここで効力を発揮していると思われるのは、世界初と謳うサスペンションテクノロジー「Planar(プラナー)」シャシシステム。特にR-R技術陣が「ダンパーforダンパー」と呼んでいる世界初のアッパーウィッシュボーン用ダンパーユニットである。

 さらに「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」は前後重量配分50:50を実現するとともに、ドラスティックな低重心化も実現。ロールス・ロイスならではの「Magic Carpet Ride(魔法のじゅうたん)」と称される乗り心地と、プレステージサルーンの常識を超えるダイナミックなハンドリング性能の完全両立にも成功したということなのだろう。

 そんな新型ゴーストの進化のほどは、動力性能についても明快に感じ取ることができた。

 先代ゴーストでは6.6リッターだったV型12気筒ツインターボエンジンは、1959年以来、長らくロールス・ロイスの伝統だった排気量「6 3/4Litre」。つまり現行ファントムやカリナンと同じく、6.75リッターへと少しだけスケールアップ。571psの最高出力と850Nmの最大トルクを獲得したと標榜されている。

 GPSと連動してシフトタイミングを自動調節する「サテライト・エイディッド」8速ATとの組み合わせにより、最高速こそリミッターで250km/hに制限されるものの、0ー100km/h加速4.8秒と、こちらもスーパーカー級の高性能を発揮することになっている。

 とはいえ、このクルマに相応しい走り方をする限りは、あり余るパワーを実感する機会は少なかろう。アクセルを深めに踏み込んでみれば、スペックの数字に偽りがないことは一目瞭然ながら、トルクの立ち上がりが超絶技巧的にスムーズ。いかに蛮勇を奮おうとも、品の無い加速体制には持ち込めない。そして気づけば、驚くべきスピードに達している。

 かつて数多くの伝説を残した静粛性も相まって、パワフルながらもR-Rに相応しいシルキーな感触を示してくれる。

 この上質で凛としたタッチは、まさにグッドウッド製R-Rの真骨頂。ロングノーズとスモールキャビンを強調した美しいスタイルから受ける印象のとおり、パーソナルカーとしても至高の一台なのである。

Nextロールスが考える「贅沢のその先」とは?
Gallery【画像】至高の贅沢をまとったロールス・ロイス「ゴースト」のディテールチェック!(26枚)

page

RECOMMEND