VAGUE(ヴァーグ)

3台まとめて15億円はリーズナブル!?

 一連のB.A.T.の大成功によって、カロッツェリア・ベルトーネはアルファ ロメオとの関係を盤石とし、そののち数多くの大ヒット作を世に送り出すことになる。そして、コンセプトカーとして本来の役割を終えたB.A.T.三兄弟は、この種のコンセプトカーでは往々にして見られる、解体・廃棄という悲しい運命にさらされることはなかった。

●かつては日本に生息していたことも……

  • のちのベルトーネ製アルファ ロメオ生産モデル「ジュリエッタ・スプリント・スペチアーレ(SS)」に受け継がれるデザイン要素が強く感じられる「B.A.T.9」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 しかしアルファ ロメオやベルトーネに戻されることもなく、1956年からアメリカの個人エンスージアストに順次譲渡。1950年代末まで、コンクール・デレガンスなどに出品されていたとのことである。

 その後、アメリカでそれぞれのオーナーのもとに託されていた三兄弟は、ある時期から再び揃えられ、1980年代以降はカリフォルニア州の某有名ミュージアムに所蔵されることになったようだ。

 実はバブル期真っ盛りの時期に、日本のさる大手商社が巨大規模のクラシックカー・オークションを東京で開催し、その目玉商品としてB.A.T.三連作は来日。その後も1990年代中盤までは関西地方の某スペシャルショップに所蔵され、当時の自動車専門誌にも時おり「P.O.R.(価格応談)」の広告が入れられていたことをご記憶の方も多いだろう。

 でも、日本で新しいオーナーを見つけることはかなわず、再びアメリカのミュージアムに戻り、今世紀を迎えたのちにはケーブルTVのヒストリー番組にて、日本国内でも紹介されたことがあった。

 この3台のB.A.T.は、3台まとめての「CONTEMPORARY ART EVENING AUCTIONオークション出品となり、推定落札価格は1400万ドルから2000万ドルというすさまじいプライスが提示されることになった。

 しかし、これだけの大物が、しかも3台一括となるとビッダー(入札者)にとってはなかなかハードルが高かったようで、競売は1325万ドルまで上昇したところで締め切りとなってしまい、エスティメートには一歩及ばず。

 それでも、オークショネア側に支払われる手数料を合わせれば1484万ドル。つまり、日本円に換算すれば約15億5000万円での落札となったのだ。

 この落札価格を高いと見るか、それとも安いと見るかについては意見が分かれるだろう。しかし、筆者としては歴史的な価値に加えて、ある種のアート作品としての価値も加味すれば、少なくとも「リーズナブル」という表現を用いることをお許しいただきたいと考えている。

 ところで話題はいささか脱線してしまうが、1990年代中盤に日本国内某所に3台まとめて生息していた時代、若いころの筆者が懇意にしていただいていた某世界的コレクター氏から、このB.A.T.三兄弟の売り込みを受けたという話を聞いたことがあった。

 もしその時にコレクター氏が入手していたら、筆者も目にすることのできるチャンスがあったのかもしれないが、曰く「3台一括で一億円っていうから、断っちゃったよ……」とのこと。

 あれから四半世紀を経て、B.A.T.三兄弟もずいぶん出世してしまったものだな……と、このオークションのリザルトを見ながら不思議な感慨を覚えてしまったのである。

Gallery【画像】まるで宇宙船のような「B.A.T.シリーズ」とは!(41枚)

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