VAGUE(ヴァーグ)

今シーズン流行の「オールシーズンタイヤ」はスタッドレスとどう違うのか比較した

スタッドレスタイヤとオールシーズンタイヤ、スノー/アイス路面で乗って比較した

 まずはスノー路面を走行。試走したときの気温はマイナス6.7度で天候は曇り。前日から降った雪のため、路面は圧雪の上に新雪が積もっている状態だ。

  • オールシーズンタイヤ「ブルーアース4S」の圧雪路走行シーン

 最初にスタッドレスタイヤであるアイスガード6を装着したプリウスで走行する。タイヤサイズは195/65R15 91Qとなる。

 当然ですが、雪道では何の苦労もなく止まり、そして曲がる。ESC(横滑り防止装置)をカットして走っても、横方向の滑りが穏やかでコントロール性も高く、安心してドライビングが可能だった。

 次に、オールシーズンタイヤのブルーアース4Sを装着したプリウスに乗り換える。タイヤサイズは195/65R15とアイスガード6と同じだが、91Hとロードインデックスと速度レンジが異なる。
 
 スノー路面では、スタッドレスタイヤと遜色のない走りを見せた。とくに横方向のグリップが高く、パイロンスラロームでのフィーリングも、ほとんどスタッドレスと変わらなかった。直進時でのブレーキングやゼロ発進時の前後方向のグリップは、若干スタッドレスのほうが上に感じられたが、それでもほぼ思いどおりに制動/駆動する。

 ただ、問題はここから。アイス路面に場所を移して走行したとき、オールシーズンタイヤの弱点が明らかになった。

 スタッドレスタイヤ装着車の場合、20km/hで進入し氷盤路面でブレーキを踏むと、ABSの作動とともにギュギュギュッと鳴きながら、だいたいブレーキを踏んでから8mくらいの距離で止まる。停止からの発進も、タイヤが滑りながらもグリップして加速した。

 オールシーズンタイヤは、ブレーキを踏んでもツーっと滑っていってしまう。ABSの介入も遅く、なかなか止まらなかった。同速度でアイス路面に進入しても、感覚的にはスタッドレスの倍以上の距離を滑っていく印象で、イメージした場所で止まらない「怖さ」も感じた。
 
 さらに停止からの発進も難しく、さらに加速してからハンドルを切っても、横方向には曲がっていかずにクルマはまっすぐに進んでいった。

  • スタッドレスタイヤ(上)とオールシーズンタイヤ(下)の比較。これほど制動距離に違いが出る

※ ※ ※

 このように、オールシーズンタイヤはけっして「1年中、どんな路面でも走れる『万能タイヤ』」ではなく、アイス路面では止まらないという大きな弱点を持っているのだ。

 北海道や東北、日本海側の、毎年必ず雪の降る地域に住んでいる人には、当然、冬季にスタッドレスタイヤの装着が必要になってくる。

 だからといって「オールシーズンタイヤは都会に住むユーザー向け」と断定するのもまた、違うから難しい。

 都心でも、一度雪が降ってしまうと、日の当たりにくい路地などでは1週間くらいアイスバーンになってしまう道もある。そういう道路の近く、とくに坂の多いところに住むドライバーには、オールシーズンタイヤをオススメすることはできない。

 ただし、オールシーズンタイヤには「1年中履き替えがいらない」という大きなメリットもある。とくにマンションに住む人にとっては、交換したタイヤを保管する場所がいらないということは魅力的だろう。春と秋の2回、履き替え時の手間やお金もかからない。

 現状、東京や大阪など大都市圏に住むドライバーで、冬もサマータイヤを履いたまま過ごしている人が多いことを考えれば、突然の雪に対応するオールシーズンタイヤを装着しておけばより安全、ということも言える。

 また降雪地域に住むドライバーでも、サマータイヤの代わりにオールシーズンタイヤを選択するという方法もある。そうすると、スタッドレスタイヤからサマータイヤに履き替えた直後に雪が降って困った、ということもなくなるのだ。

※ ※ ※

 注目が集まっているとはいえ、まだ一般的にはあまり知られていないオールシーズンタイヤ。ひとことでオールシーズンタイヤといっても、商品によってサマータイヤ寄りなのか雪道性能重視なのかがあるのもまた、難しいところだろう。

 たとえばミシュラン・クロスクライメートのキャッチコピーは「雪も走れる夏タイヤ。天候を問わない走り、買い替え時まで続く安心感」。ダンロップ・ウインターMAXXは「急な雪にも慌てない 長持ち夏タイヤ」と、サマータイヤとしての性能を全面にアピールしている。

 対してヨコハマ・ブルーアース4Sは「雪に強いオールシーズンタイヤ」、グッドイヤー・ベクターフォーシーズンズは「四季を通じて安定した走りを可能にする、オールシーズンタイヤ」となる。

※ ※ ※

 タイヤは、バランスの商品といえる。それぞれの商品に、それぞれ特徴がある。それはオールシーズンタイヤだけでなく、スタッドレスタイヤも、そしてサマータイヤも同様だ。

 決してカー用品店や自動車ディーラーだけにまかせるだけでなく、自分のカーライフをよく考え、メリット・デメリットを見極めた上で、タイヤを選びたいところだ。

Gallery 【画像】スタッドレスタイヤとはどう違う? オールシーズンタイヤの特徴をチェック!(39枚)
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