ESPやESC、VDAにVSC…さまざまな呼び名がある「横滑り防止装置」の普及はシカのおかげ!?

いまでは日本でも装着が義務化されている横滑り防止装置。一般的にはESCやESPと呼ばれることが多いスタビリティコントロールシステムだが、初めて市販車に装着されたのは1995年。つまり登場からまだ25年しか経っていないという。その歴史を紐解いていこう。

ESPが標準採用されるきっかけとなった初代Aクラスの「エルクテスト」

 ESPが世界標準になるきっかけとなったのが、1997年10月にスウェーデンのモータージャーナリストがおこなった初代メルセデス・ベンツ「Aクラス」(W168型)の「ムーステスト」だろう。

初代メルセデス・ベンツ「Aクラス」(W168型)のエルクテスト

 日本ではエルクテストという名前でも知られるこのテストは、突然現れる障害物を回避する際のクルマの挙動を見るもので、「ムース」「エルク」とはヘラジカのこと。つまりシカが突然路上に飛び出してきた際、急ハンドルで緊急回避をする操作から、この名前がついている。

 このテストの際、コンパクトカーのAクラスがダイナミックドライブの限界を超えてしまい、突然の回避操作をしようとしたときに横転してしまった。

 この結果を受け、メルセデス・ベンツはAクラスの販売を急遽12週間ストップ、設計上の課題に真正面から取り組んだ。

 そしてサスペンションやタイヤサイズの見直しなどの改良とともに、ESPがAクラスの全グレードに標準された。その後Aクラスは、より過酷なテストにおいても競合他社よりもすぐれた性能を発揮、メルセデス初のFF乗用車は世界的な大ヒットモデルとなった。

 1999年にはメルセデス・ベンツ乗用車の全モデルにESPを標準装備。ESPを全モデルに標準装備したのはメルセデス・ベンツが世界で最初のブランドになった。

 その後の統計によると、重大な結果をもたらす交通事故に遭ったメルセデス・ベンツの乗用車数は42%以上減少したが、他ブランドのモデルは13%しか減少しなかった。この結果を見てESPの重要性を認識したメーカーが続々と現れ、2011年11月のEUでのESP義務化、そして日本を含めた世界的な義務化につながっていく。

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 メルセデス・ベンツのESPは、ABSやASR(アンチスリップコントロール)技術をベースに、操舵角センサー、横加速度センサー、ヨーレートセンサーなど広範なセンサー技術を採用している。

 ボッシュが製造するヨーレートセンサーは、ESPを支える重要なコンポーネントで、このセンサーは車両の横軸を中心とした回転運動(ヨー)を正確に検出。これらのデータに基づいて、システムは0.1秒以内に必要なブレーキ量を計算するという。

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