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スバルが解説! 「カーボンニュートラル燃料」の取り組みはどうなってる? トヨタ・マツダと協調で何がわかった?

くるまのニュース編集部:金子高志

スバルがカーボンニュートラル燃料を解説

 スバルは2022年からスーパー耐久シリーズに「BRZ」をベースにしたレースマシンで参戦しています。
 
 その目的としては次期型モデルに繋げる開発ということに加えて「カーボンニュートラル燃料」を用いた実証実験としての意味合いもありますが、約1年半の現在ではどのような状況なのでしょうか。

 カーボンニュートラルとは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。

 そのカーボンニュートラルについて日本政府では、2020年10月に「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする(カーボンニュートラル)」を目指すことを宣言しました。

 一方で自動車業界でのカーボンニュートラルでは、開発・生産という部分でも様々な取り組みをしていますが、使用する燃料での取り組みも活発化しています。

 その代表格がスーパー耐久の場を活用してスバル・トヨタ・マツダの3社が取り組んでいる事例です。

 トヨタとスバルは、バイオマス由来の合成燃料(カーボンニュートラル燃料)を使用した「GR86」と「SUBARU BRZ」ベースのレースマシンを投入すると2021年11月に発表し、2022年シリーズから参戦しています。

 この取り組みについてスバルは「内燃機関活用の選択肢を広げる挑戦として、トヨタ・マツダと協調且つ競いながら仮説検証を行うことでカーボンニュートラル社会の実現を目指しています」と説明。

 3社が使うカーボンニュートラル燃料は、走行中に排出するCO2がゼロなのではありません。

 しかし燃料を作る際に大気中のCO2から分離した炭素を使うため、結果的に「CO2の排出量を実質ゼロ(=カーボンニュートラル)」になるというものです。

 カーボンニュートラル燃料にはいくつかの種類が存在します。

 ひとつは食料系などを元にする「第1世代バイオ燃料」、非食用の原料(セルロース系原料)を元にする「第2世代バイオ燃料」、様々な原料を元に酸素を含まない炭化水素系の「次世代バイオ燃料」と分かれてます。

 さらに合成燃料というCO2(二酸化炭素)とH2(水素)を合成して製造されるものがあり、これがカーボンニュートラル燃料と呼ばれます。

 ガソリンの主成分は炭素(C)と水素(H)の化合物である炭化水素(CH)の集合体となるため、化学的に作り出すという物になることから「人工的な原油」ともいわれています。

 最近では、「e-Fuel」と呼ばれるものも存在しますが、この「e」は「Electro」の頭文字となり、欧州や日本で定義が若干異なります。

 具体的には「再生可能エネルギー(再エネ)などでつくった電力エネルギーを使って作った水素」と「産業の排出源もしくは空気から直接回収された二酸化炭素」を原料として合成・製造した燃料です。

 では2022年、2023年とカーボンニュートラル燃料を使ってどのようなことがわかってきたのでしょうか。

 前出のスバルは次のように説明しています。

「2022年の初年度はエンジン燃焼について『出力性能はガソリン同等』、『排ガス、燃費性能はわずかにガソリンのレベルに至らず』ということ、信頼性では『エンジンオイルの燃料希釈 (ダイリューション) 増加』が見られました。

 具体的に燃焼室内に噴射した燃料の揮発が不十分なことで燃料が希釈してエンジン内部の部員が焼き付く恐れがあります。

 これに対してこれまでオイル動粘度を適正に保つ対策を行い課題を解決してきました。

 しかしこれらの対策はレースの限られた環境下で有効な対策となるため、既販エンジンでも使用出来るように燃料自体の適正化が必要という結論になりました」

 このようなカーボンニュートラル燃料を実践投入して判明した課題をトヨタとスバルで共有・検討し、燃料メーカーに改善点を伝えたことで、新たな仕様のカーボンニュートラル燃料が誕生しました。

 主無い課題として「エンジンオイルの希釈」「排出ガス規制成分の増加(炭化水素・粒子状物質)」があったことから、新燃料では次のように改善されたと言います。

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 1.蒸留性状の変更→揮発しやすくする

 2.重質アロマ分低減→規制成分増加の要因を低減する
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 こうした改善が加えられた新カーボンニュートラル燃料は、トヨタとスバルがスーパー耐久の第3戦菅生から投入。

 そして第4戦オートポリスからマツダも使うことで、3社で異なるパワートレイン・同じ新燃料という要素を活かして検証を加速しているようです。

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