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1戦毎に「進化」も…「油断」は禁物!? 真夏の九州でガチンコ勝負! GR86とSUBARU BRZの明暗はいかに

山本シンヤ

レースには魔物が住んでいる? 好調一転のトラブルとは

 決勝がおこなわれる日曜日。朝方は雨雲も覆われていましたが、徐々に雲は薄くなり、時折青空が見えるように。

 スターティンググリッドは第2グループのST-2クラス5台の後ろで、ORC ROOKIE GR86 CNF Concept、Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptと横並びです。

 スタート進行の合間にSUBARUのエンジニアはORC ROOKIE GR86 CNF Conceptに近づき、下回りを覗き込むなど隅々をチェックし始めました。

「普段、ここまで近づいて見る事できませんから」、「やっぱり、そうするよね」などと語っていると、藤原氏は「車両説明しましょうか?」と応戦。こんな関係性も「仲良く喧嘩している」証拠といえるでしょう。

 11時にフォーメンションラップが開始されスタート。

 スタートドライバーはORC ROOKIE GR86 CNF Conceptが鵜飼選手、Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptが山内選手です。

 不安定なコース状況ながらもスピンやコースアウトなどのアクシデントはなく進行。

 2台は序盤から接近戦バトルです。13周目にTeam SDA Engineering BRZ CNF ConceptがORC ROOKIE GR86 CNF Conceptを抜き順位が入れ替わりますが、同一周回かつ僅差でレースは進んでいきます。

 途中、タイヤが外れスロー走行するマシンの影響でFCY(フルコースイエロー)となりますが2周で解除。その後も2台は周回を進めます。

 僅差のときはピットストップも勝敗に影響しますが、最初に動いたのはORC ROOKIE GR86 CNF Conceptで、12時16分にピットインして鵜飼選手から蒲生選手にドライバーチェンジ。蒲生選手は2分6秒代で追い上げをおこないます。

 そんなORC ROOKIE GR86 CNF Conceptの動きにスバルは戦略を練ります。

 本井監督は「BRZは燃費がいいので、ピットストップのタイミングはフレキシブルに対応できる」と語っていましたが、それをフル活用。

 何とTeam SDA Engineering BRZ CNF Conceptがピットインしたのは、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptのピットインから45分後の13時。ここで山内選手から井口選手にドライバーチェンジします。

 このタイミングでORC ROOKIE GR86 CNF Conceptが先行しますが、13時43分、蒲生選手から豊田選手へのドライバーチェンジ時にトラブルが発生。

 マシンはガレージに運ばれ、原因はアッパーマウントのボルトの緩み、路面からの入力が大きいのことが原因だといいます。

 すぐに増し締めをおこなないピットアウトしたもののTeam SDA Engineering BRZ CNF Conceptとは2周差です。

 豊田選手は追い上げをおこないますが、14時12分に「パワーが出ない!!」と緊急ピットイン。

 エンジニア/メカニックは即座に故障診断を開始、チェックに時間が掛かるため豊田選手は一旦降車します。

 その間、豊田選手に話を聞くと「鈴鹿で起きた症状(燃料系トラブル)によく似ています」と話してくれました。

 14時30分、今度はBRZが緊急ピットイン。実は井口選手に交代後、「クラッチが切れない」というトラブルが起きていました。

 井口選手はクラッチを使わず回転を合わせてシフト操作をおこないながら走行していましたが、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptのトラブルを聞いてピットに入ったそうです。

 マシンはガレージに運ばれチェックをおこない、クラッチフルードのエア抜きを実施。このタイミングで井口選手から廣田光一選手にドライバーチェンジしてピットアウト。

 約4分30秒のロスとなりましたが、順位は変わらず。

 Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptがピットアウトしてから10分後、ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptはエンジンを再始動させて問題ないことを確認して再びコースイン。ここから約30分のロスを挽回……と思った矢先に先ほどの症状が再発。

 豊田選手はピットに戻れないと判断し、1コーナーのランオフエリアにクルマをストップ。チームはリタイアを選択しました。原因は燃料ポンプのヒューズ切れでした。

 その後、Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptは111周目に廣田選手から山内選手にドライバーを交代。終盤強い雨が降り始めたものの安定したタイムで走り続け、16時のチェッカーを受けました。

 序盤はガチンコでいい戦いをしていましたが、途中で運命が大きく分かれた2台。

 まずは最後まで走り切ったTeam SDA Engineering BRZ CNF Conceptの本井氏に感想を聞きました。

「途中までは非常に順調で、燃費戦略も当たりオーバーテイクもできましたが、想定外のトラブルが起きてしまいました。

 結果として勝つことができたものの、『これもレースだな……』というのが本音です。

 ただ、マシンもチームもいい方向に進んでおり、ドライバーからの要求レベルも上がってきています。

 次は完璧なレースができるように、もっといいクルマに仕上げてきます」

 続いて、初のリタイヤとなってしまったORC ROOKIE GR86 CNF Conceptの藤原氏です。

「クルマの進化は走りに表れていたと思いますが、まだまだ甘いな……と。

 アッパーマウントの緩みも燃料系も以前のレースで発生していたことですが、真因を追求することなくここまで来てしまいました。

 まだまだ土台固めがシッカリできていないことを改めて思い知らされました。

 次戦(もてぎ)まで少し時間があります。

『レースに出るクルマを作る』ということに対して、一度総ざらいして見直しをおこなって挑みたいと思っています」

 どちらも途中まではいい流れだったと思いますが、やはり一筋縄ではいかないのが、もっといいクルマづくりの面白い所であり難しいところです。

 今回の結果で、Team SDA Engineeringが3勝/ORC ROOKIE Racingが1勝です。

 スーパー耐久シリーズは全7戦なので、次戦(もてぎ)でORC ROOKIE Racingが勝たないとTeam SDA Engineeringの勝ち越しが決まります。

 そういう意味では、次戦もてぎは大事な1戦となりそうです。

【画像】シーズンも折り返し!? 「GR86」と「SUBARU BRZ」の戦い! オートポリスではどうだった?(29枚)
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