「2か月で40キロ減量!?」トヨタの「凄いカローラ」がさらに進化！ どんなダイエットを行ったのか

液体水素カローラは何が進化したのか？

　2023年7月29日・30日に開催される「スーパー耐久レース第4戦オートポリス」にて、液体水素を燃料とした「#32 ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept」と、カーボンニュートラル燃料を燃料とした「#28 ORC ROOKIE GR86 CNF concept」が参戦します。
　
　液体水素カローラは、5月に開催された富士24時間レースぶりの参戦ですが、水素社会の実現に向けて、今回のレースではどのような改良があったのでしょうか

　世界で初めてレースを走った富士24時間レースから約2か月。今回のオートポリスで液体水素カローラは「液体水素ポンプの耐久性向上」と「40kgの軽量化を実現」という改良を行っています。

　液体水素ポンプの耐久性向上の部分では、富士24時間レースで課題となったポンプの耐久性が向上し、同条件下での耐久時間が30％延長しました。

　通常ポンプには、潤滑油を使用することでポンプの摩擦を減らすことで負担を軽減させたと言います。

　しかし液体水素ポンプの場合では、水素に潤滑油が混ざることから潤滑油を使用することができないとも。

　そこで今回のレースでは、ポンプギヤ駆動部の負荷を低減する緩衝構造を採用することで、ポンプの負荷を減らし、交換をすることなく完走を目指すとしています。

　40kgの軽量化を実現については、これまでのテストやレースで収集したデータを分析。

　安全バルブや配管など様々な液体水素システムの最適化を進めたことに加えて、燃料の圧力を最適化することでポンプの負荷を軽減し、ポンプ駆動モーターのバッテリーを軽くしています。

　これらにより液体水素カローラの車重は、富士24時間レース時の1950kgから1910kgとなり、40kgの軽量化を実現しました。

　また液体水素を供給する側では、移動式液体水素ステーションにおいて「給水素時間の向上」、「ジョイントとフレキシブルホースの軽量化」、「給水素オペレーションの自動化」とった改良を行っています。

　給水素時間の向上では、今回のレースからフジキンが開発した大流量対応充填側シャットバルブを装着しています。

　充填側シャットバルブは、液体水素タンクの充填口に設置されているバルブです。

　充填スピードを上げるために大流量化すると、バルブサイズが大きくなり密閉性の確保も難しくなるという課題があるなかで、これらの両立を実現。

　これにより給水素時間は、富士24時間と比べて1分40秒から約1分で行うことが可能となりました。

　ジョイントとフレキシブルホースの軽量化では、これまでホース等の重量が給水素を行う作業員の負担になるため、将来の市販化に向けた小型化・軽量化が課題です。

　今回、ジョイント接続部カバーの廃止や、水素に触れない部品を鉄からアルミに変更するなどの改良を実施。

　これにより、充填ジョイントを8.4kgから6.0kg、リターンジョイントを16.0kgから12.5kgに軽量化させました。

　さらにリターンジョイント側のフレキシブルホースも、細いホースに変更することで、作業者に掛かる負担を約4kgから約1kgに軽減させ給水素時の作業性を向上させています。

　給水素オペレーションの自動化では、これまで給水素における充填バルブの開閉や水素が満充填になった際に充填をストップするなどの作業を全て手動操作で行っていたと言います。

　今回、これらの作業を電子制御で自動化することに成功したことで、給水素オペレーションの自動化により、安定した時間で効率よく、ミスなく給水素が行えるようになります。

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　このような改良が行われている中で液体水素カローラの課題について、水素エンジンプロジェクトを統括する伊東直昭主査は次のように語っています。

「気体水素カローラの時よりも200kg重かったですが、徐々に細部の構造や素材を見直すことで軽くなってきました。

　その結果モリゾウ選手も良いタイムも出ており、軽量化の成果が出ていると思います。

　しかし、それでも市販化を目指している以上はさらなる軽量化や利便性の向上等を行っていかなければいけないと思います」