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トヨタが「MTより賢いAT」開発!? 「戦うAT」が凄すぎる! ドライバーファースト目指す「DAT」とは

山本シンヤ

いざ試乗! MTからATに! どんだけ楽になる?

 では、実際に乗ってどうだったのでしょうか。

 今回のコースは、緩やかなS字やタイトコーナー、パイロンスラロームなどが盛り込まれた低・中速がメインのレイアウトになります。

 まずは比較のために6速MTモデルでコースインします。

 滑りやすい路面でも安心して楽しく走れるパフォーマンスはこれまでの経験済みですが、タイムを出すようなコンペティションな走りとなると話は別です。

 低μ路ではクルマの挙動は舗装路よりも不安定のため、ステアリング、アクセル/ブレーキ、シフト、さらにはサイドブレーキなどの操作を、より連続的、より的確に判断しながらのドライビングが求められます。

 ただ、筆者のようなダート初心者は操作することだけで精いっぱいで、「上手に走らせられているか?」といわれると難しいのが実情です。

 とくにパイロンターンではシフトダウン→サイドブレーキに気を取られ、ステアリング操作が疎かになっていることが自分でもわかります。

 もちろん、何度かトライするとできますが、コツをつかむのに時間も掛かるし、タイヤを含めたクルマのコンディションも悪くなります。

「そこは腕でカバーしないと」といわれればその通りですが、技術でカバーすることができれば「もう少し上達も早まるのにな……」と思ったのも事実です。

 DATに乗り換えます。

 今回はDレンジのみでパドルやソフトレバーには一切触らずに走ります。

 発進は当然アクセルを踏むだけでOKですが、ターボの僅かな過給遅れによるモタツキをトルコンが上手にカバーしており、MTよりもスムーズに速度を乗せることが可能です。

 発進してすぐにロックアップ状態になっているようですが、アクセルコントロールをしたときの反応はもちろんダイレクト感もMTと一緒といってもいいレベルです。

 シフトスピードも「お前はDCTか?」というくらいの速さで3速までシフトアップ。

 コーナー進入でブレーキングをおこなうと、DATは自動でシフトダウン。

 これまでのATのダウンシフト制御の多くはドライバーの意思よりも遅い上に低い回転域でしか作動しないので使い物にならず、結果として手動でパドル操作をしていましたが、DATのそれは「MTだったらここで操作するよね」という絶妙なタイミングかつ高回転域で作動します。

 とくに2速→1速へのシフトダウンは駆動系の負荷も大きいためやりたがらないのですが、DATは積極的にシフトダウンします。

 さらに6速に対して8速になったことで各ギアの繋がりもよく(=クロスレシオ)、エンジンの美味しい領域を使いやすいという副次的効果もありました。

 パイロンターンではサイドブレーキをキッカケに進入、そこからアクセルでスライドコントロールをしながら曲がりますが、2速→1速への的確なシフトダウンはもちろん、コーナリング中は不用意なシフトアップはなく、レッドゾーンギリギリまで使えます。

 恐らく、アクセル、ブレーキ、ステアリング舵角、Gといった情報などから「スライドさせながら旋回状態」であることを判断しているそうです。

 ただ、完璧にできているかといわれるとそうではなく、何度か走らせるとシフトダウンをするとき、しないときがありました。

 恐らく、ドライバーのちょっとした操作の違いによる判断だと思いますが、「今、クルマはどのような状況なのか?」、「ドライバーがどのように走らせているのか?」をより正確に判断できるセンシングが必要だと感じました。

 さらにMTモデルよりも熱的に厳しいため冷却が効率的にできず(ダートはスライドしながらの走行が多いので冷えにくい)、走行途中でパワーダウン傾向やセーフモード作動なども見られました。

 この辺りは開発陣もよく認識しており、齋藤氏は「実は開発するうえで一番難しい所がここですが、『MTと同等の性能』というからには絶対にクリアしなければいけない項目だと認識しています」と教えてくれました。

 ちなみにパドル/シフトでマニュアル操作も可能ですが、現状ではDレンジのまま走ったほうが速いそうです。

 筆者も試してみましたが、パドルが小さいうえにステアリング一体型なので操作が難しいので、コンペティションには向いていないなと感じました。

【次ページ】MTからATになると…余裕が生まれ…よりドライバーファーストに!
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