トヨタとスバルが仲良く喧嘩!? 2代目「GR86/BRZ」はどう誕生? 協業強化の開発背景とは
トヨタとスバルの共同開発車となる「GR86」と「BRZ」の日本仕様が2021年4月5日に世界初公開されました。2012年に登場した初代からあらゆる要素を継承した2代目。開発に至る背景には、どのような秘話が隠されているのでしょうか。
トヨタ2代目「GR86」とスバル2代目「BRZ」 2台の「妥協しない」開発秘話とは
2021年4月5日、TOYOTA GAZOO Racingとスバルが共同でオンラインイベント「いっしょにいいクルマつくろう! トークセッション」をおこないました。
ここでお披露目されたのが、2代目となるトヨタ86改め「GR86」とスバル「BRZ」です。
トヨタとスバルの協業によって誕生した初代86/BRZ、そして2代目となったGR86とBRZの開発に至る背景とは、どのようなものだったのでしょうか。
この2台は、トヨタとスバルの関係から生まれたモデルです。実は2社の関係は2005年からスタート。
最初のコラボレーションはスバル米国工場(SIA)でのトヨタ「カムリ」の受託生産(2016年5月まで)でした。
その後、あまり知られていませんが、トヨタ「ラクティス」/スバル「トレジア」の開発でスバルのエンジニアがトヨタに出向し一緒にクルマづくりを実施。
そして、その流れは2012年に登場した86/BRZでより強固なものとなりました。
そんな2代目となった2台は初代と同じく「トヨタ×スバル」の共同開発で生まれたモデルですが、初代のときと変わった部分がいくつかあります。
ひとつは86の立ち位置です。2代目であると同時にGRブランドのスポーツカー第3弾モデルという位置づけです。
もうひとつは初代以上に一体感のあるワンチームで開発が進められたことでしょう。
初代はトヨタが企画・デザイン、スバルが開発・生産と役割分担されていました。
2代目も基本的には同じですが、その垣根を大きく超えるやり取りがあったそうです。
両ブランドの開発責任者は「仲良く喧嘩して進めました」と語っています
今回、多くの人が気になっているのは、2代目となったGR86とBRZの「走りのセットアップ」の違いの部分でしょう。
初代において、当初は1スペックで開発を進めるも、最後の最後に各々の思想に合わせたセットアップに変更されたことが話題となりました。
大きくいえば86は「FRらしさを重視」、BRZは「0:100のAWDをイメージした安定性」でした。
ただ、後期型(E型以降)では、86は「大人らしさ」、BRZは「じゃじゃ馬」がプラスされるなど、その差は少なくなっていったのも事実です。
実は2代目も当初はそのような考えで開発が進められ、変更部位は初代よりも少なかったと聞きます。
ただ、進化の過程でスバルの最新技術を盛り込んでいったため、「BRZらしさ」は出やすかったのに対して、「GR86らしさ」を出すのは難しかったようです。
そんな開発陣の悩みをモリゾウこと豊田章男社長はテストカーから感じ取り、ダメ出しをしたそうです。
これは推測ですが、「GRは“味”を大事にするブランド、その味の妥協はできない」という想いがあったのでしょう。
ここからGR86らしさを付加させるために、当初決めていた変更部位を超える変更(ざっくりというと、エンジン/シャシ/足回り/EPSなど)がおこなわれました。
これに関して、豊田社長はスバルの中村社長に直接連絡して「魂の会話」をおこなったそうです。
スバルの現場は「???」だったそうですが、事情もよく理解していたので協力を惜しまなかったそうです。
むしろ、スバル側から「●●を変えたほうがいいのでは?」といった提案もあったといいます。
この辺りからもより強固な1チームと垣根を大きく超えたやり取りが垣間見えると思います。
実はGR86がBRZよりも発表が遅れた理由がこれです。
筆者(山本シンヤ)は、冒頭の「いっしょにいいクルマつくろう! トークセッション」の参加に際してテストカーに試乗しました。
ただ、開発途中のモデルなので暫定部分もあるため多くは語れませんが、その辺りも少しだけ。
実際にGR86とBRZを乗り比べるとその差は一目瞭然。その印象は初代の初期モデルの差がより明確になったような印象です。
もう少しいうと、どちらも「安心」と「愉しさ」を持っていますが、その比率が異なります。例えるならばGR86は「ホット」、「野性味」、BRZは「クール」、「GT思想」な走りという印象でした。
そもそも、GR86/BRZの走りはどのように進化したのでしょうか。
2代目の開発テーマはズバリ「継承」です。これを筆者なりに要約すると、9年にわたる熟成で完成形となった初代のバランスの良さを一切崩さずに、2代目としての進化をプラスしたということです。
初代は絶対的な速さよりも愉しさを重要視したモデルでしたが、その流れは2代目も不変です。
その一方でユーザーの「もう少し●●だったら」という本音の部分はアップデートさせる必要がありました。
ただ、ネガつぶしはクルマのコンセプトを曖昧にする危険性もありますが、開発陣は初代の良さを継承しながら、2代目としての進化のために、“全方位”でのアップデートをおこなっています。